福田沙紀:「改めて故郷を大切にしている自分に気づいた」 映画「津軽百年食堂」に出演

「模索する時間があるから前に進める」と力強く語った福田沙紀さん
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「模索する時間があるから前に進める」と力強く語った福田沙紀さん

 映画、ドラマ、舞台で主演を務め、女優としての地位を確立する一方で、歌手として音楽活動もするなど幅広く活躍する福田沙紀さん。2日に公開されたお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の初主演映画「津軽百年食堂」(大森一樹監督)では、藤森慎吾さんが演じる津軽(青森県弘前市)の食堂の息子、陽一と東京で出会い、ルームシェアをするカメラマンの卵の女性、七海を演じた。出演者の顔合わせのときに大森監督から「(いまどきの若い子だから)そんなに故郷って大事じゃないでしょ」と言われ、「悔しくって大泣きしました」という福田さん。「改めて自分は故郷(熊本県)を大切にしているんだなと気づいて、(故郷や親子のきずなを描いた)この作品に出る意味があるなと思った」と語る。福田さんに撮影の様子や仕事に対する姿勢などについて聞いた。(細田尚子/毎日新聞デジタル)

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 福田さんは大森監督に「故郷に錦を飾りたいなんて思ったことないでしょ」とも言われ、「いや、思いましたから(笑い)。そんな考えの若い子ばかりじゃないっていう。そのときに自分はこの役に出合うべくして出合って、表現しなきゃいけないなと思いましたね」と作品に向かう気持ちを新たにした。「故郷に対する思いが自分の中からふわっと出てきて、改めてああ自分は故郷を大切にしているんだなというのに気づき、この作品で芝居をする意味があるなと感じました」と振り返る。

 この映画は人気お笑いコンビの「オリエンタルラジオ」が初主演。陽一の先祖で明治時代末期にやっとの思いで津軽そばの店を開いた賢治役を中田敦彦さんが演じ、藤森さんふんする陽一は、その食堂の4代目という設定だ。2人は東京や名古屋での仕事から青森に毎回駆けつける形で撮影に参加した。「藤森さんたちは多忙で大変な中、青森弁のせりふを(頭の中に)入れてきていて、撮影ではほとんどNGがなかったんです。現場の雰囲気も和やかにしてくれたり、初めてとは思えないほどすごく起用にこなされてました」と福田さんも感心する。

 「カメラマンの卵」という役作りは、「自分が普段被写体になっているので、いつも見ている(カメラマンの姿を)そのまんまやった感じですね。ちょっと(七海の)鈍くささをプラスした感じ(笑い)」と経験を生かした。七海役については「ナチュラルな芝居を心がけ、一つ一つの呼吸から気を使いました。監督はいつも現場でニコニコしていて、とくに要求とかもなかったので、一度段取りをやってみてお芝居をしていくという感じでした。難しいところはなかったし、楽しくやりました」と自然体で臨んだ。藤森さんとのアドリブシーンは「途中まで台本があってせりふが決まっていて、監督が『じゃ、(あとは)アドリブで』という感じだったので、後半がアドリブです。藤森さんは『どうしよう、どうしよう、何言おう』とすごく緊張してましたよ。でも2人ですごく自然にできました」と俳優の先輩としてリードして演じることができた。

 映画の舞台で、ロケ地にもなった青森は「今回初めて行きました。青森といえばリンゴのイメージだったんですけど、山がドーンとそびえ立っていて、あんなに桜がきれいだと思っていなかったので、びっくりしましたね」とイメージが変わり、「ロケ中はお昼にさくらまつりに実際に行って撮影をしたんですけど、プライベートで夜桜を見に行きました。やっぱり、またお昼と違ってすごくきれいで、不思議なパワーがあふれる感じがしました。ライトアップされていると、暗闇に浮かんでいる桜がロマンチックで、きれいでした」とうっとりとした目で語った。七海は津軽出身という役柄だが、「ほとんど青森弁のせりふはなく、二言あるかないかだったし、それに監督が七海は標準語でいいっていわれたので、私は(ほとんど)標準語で、逆に青森弁をしゃべりたかったくらいでした」と残念がる。

 福田さんは映画に込められたメッセージについて、「一生懸命に生きていく中で、模索する時間って誰にでもあると思うんです。この映画では陽一や七海が生きていく中で模索している瞬間が描かれていて、こういうときってあるよねって誰もが共感できて、そしてそういう模索する時間があるからこそ、前に進んでいけるんだなっていうのを見た人に後押しできる映画だと思います。そんなふうに若い人たちの背中を押していけたらなというのと、百年続く伝統の食堂だったり、人の心が受け継いでいかれるところが描かれていて、ああ日本人でよかったなと思える映画です。きれいな景色の映像もあるので、そこも楽しんで見ていただけたらなと思います」とメッセージを送った。

 仕事については、「どういう女優になりたいかとか全然決めてなくって、毎回毎回出合った作品でその現場のスタッフさんたちといいものを作り上げていくという、シンプルだけど、それが自分の仕事だと思っています。ハードルを人から渡されて、それをどんどん自分で上げていってということの繰り返しですので、いろんなことをやって、人としても役者としてもアーティストとしても成長していけたらなと思います」と前向きに語った。

 次回は、旅行好きの福田さんにオフの過ごし方や生き方などについて聞く。

 <プロフィル>

 1990年9月19日生まれ、熊本県出身。O型。04年8月に開催された「全日本国民的美少女コンテスト」で演技部門賞を受賞し、デビューのきっかけをつかむ。04年10月~05年3月に放送した「3年B組金八先生」(TBS系)にレギュラー出演。06年3月3日放送のスペシャルドラマ「生きててもいい…?~ひまわりの咲く家~」(フジテレビ系)に主演した。07年に出演した連続ドラマ「ライフ」(フジテレビ系)で同級生をいじめる女子高生役を熱演し、注目を集める。08年に初舞台「フラガール」を経験、同年には「櫻の園」で映画初出演で主演を務める。09年には「ゴーズトフレンズ」(NHK)と「メイド刑事」(テレビ朝日系)で2クール連続でドラマ主演を果たす。07年に歌手デビューし、09年にレコード会社を移籍して歌手活動を再開した。10年には明治座で初座長公演「つばき、時跳び」で主演。今年は1月期のドラマ「カルテット」(MBS・TBS系)に主演したほか、4月スタートの城田優さんが主演するドラマ「失恋保険~告らせ屋」への出演も決まっている。映画は2日公開の「津軽百年食堂」のヒロイン役を演じたほか、今年公開予定の「ピース」綾部祐二さんが出演した映画「TSY」にも出演している。

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