水沢エレナ:命がテーマの映画出演に「一言一言に神経を使った」 モデルと女優業への思いも語る

出演した映画「スイッチを押すとき」への思いを語る水沢エレナさん
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出演した映画「スイッチを押すとき」への思いを語る水沢エレナさん

 モデルで女優の水沢エレナさん(19)が、17日に公開された映画「スイッチを押すとき」(中島良監督)で小出恵介(27)さんと主演した。水沢さんは、国家による「自殺実験」の被験者にされ、極限状態に置かれた17歳の少女・高宮真沙美役に挑戦。「テーマが命という簡単に扱える内容ではないので、真沙美が発する一言一言に対して神経を使いました」と振り返る水沢さんに、同作にかける思いやモデルと女優業の自身の中での違いについて聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 映画は、「リアル鬼ごっこ」などで知られる山田悠介さんの同名小説が原作。10代の自殺が激増し、国家は青少年自殺抑制プロジェクトを発足させた。自殺に至る心理を解明するため、全国から10歳の子どもたちを選出し青少年自殺抑制プロジェクト・センター(YSC)に監禁。心臓に起爆装置を埋め込められ、自殺装置のスイッチを持たされた子どもたち……。耐えきれず多くの子どもがスイッチを押していく中、7年間もの間生き続けた6人がいた……というストーリー。水沢さんと小出さんをはじめ、佐野和真さん、7人組ダンス・ボーカルグループ「AAA」の真司郎さん、坂本奨悟さん、太賀さん、菅野莉央さんらが出演し、主題歌を「NICO Touches the Walls」が担当する。

 水沢さんは生存する被験者の1人である真沙美役に抜てきされるも、作品のテーマの重さに「自分にちゃんと演じられるか不安がありました」と振り返る。真沙美役については、「みんなの中でもちょっと浮いた女の子。過酷な状況においてもすごい明るくて強い」と分析しており、「自分はそこまで明るくもないし精神力もまだまだだと思うので、(真沙美と)似てるところはなかった」と話し、監督と相談しながら真沙美像を作り上げたことを明かした。

 水沢さんは、これまでBS−i(現BS−TBS)のテレビドラマ「東京少女 水沢エレナ」やテレビドラマ「恋空」で主人公・田原美嘉役を演じるなど、「普通の女の子の役をいただくことが多かった」そうだが、今回は「すごく芯が強くて精神力が強い。今まで以上に強かったと思う」と話す。「すごく悩みながらやったので楽しむことはできなかった」という背景には、これまでと異なる役柄を演じることに加え、YSCの施設のロケセットとして使用した鎌倉の某廃墟での撮影も大きかったという。

 寒さが厳しい10年1月、廃墟には暖房はなく、電気もつかず、水も出ないという状況で撮影に臨んだ。「ストーリーとしてはその設定が合っていたので、そういう意味ではよかったと思う」と話しながらも、「そういう環境はなかなか経験することができないので、ロケをして都内に戻ってきたときに、安心感や便利さを感じた」という。

 テーマの重さに加えて、環境面での過酷さもあることから、「現場の雰囲気が暗いので、暗くなりそうに、(暗さに)引きずりこまれそうになるんですけど、彼女(真沙美)はそうであってはいけないのでそこは大変だったし、気を遣いました」と苦労を話す。そういった状況で、テレビドラマ「JIN−仁」などで共演した同じ事務所の小出恵介さんの存在は大きかったのではないかと聞くと、意外にも「今までと全然違う作品だったし、小出さんとガッツリお仕事したことはなかったので安心感というより緊張感がありました」と笑う。「でも、こういう不安定な現場で、今までお会いしたことがある方がいるというのは安心感がありました」と笑顔を見せた。

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 今後挑戦したい分野は、「昔から好きだったアクションとかラブコメディーとか明るいものに参加できたら」と目を輝かせる水沢さん。女優業のほかに、ファッション誌「non-no」(集英社)の専属モデルも務めているが、「私自身を使って表現することには(モデルも女優も)変わりはないと思う」と話す。「モデルは水沢エレナがいて、そこに服やメークがあって表現する。女優は他の人の人生を演じることになるので、似ているようで全然違う」とそれぞれの思いを語る。

 それぞれの現場から学ぶことも異なるようで、「モデルは突発的な動きが多くて、でも女優だとゆったりした動きを求められることが多い。視線の位置を自分はこのへんに向けた方がいいんじゃないかなとか考えるようになったので、そういうのは両方に通じて影響があるかもしれないです」と話す。「学んだことを生かせるときと生かせないときがある。難しいと思うけど、意識は芽生えました」と努力は惜しまない。

 モデル業、女優業などの切り替えは「うまくできている」という水沢さんのブログには、夏野菜のうどんやカレーなど水沢さんの手料理の写真が多数掲載されている。「小さいころから料理が身近にあった。だから義務的に食事をするために作るというより、趣味の一つという感じで、やりたいときにやっています」とうまく気分転換をしているようだ。また、読書も趣味のようで、幅広くいろいろなジャンルの本を読む。「東野圭吾さんにハマってました。サスペンスも好きなので、いつか東野さんの(映像化)作品にも挑戦してみたいですね」と前向きだ。

 完成した映画を見て自身も涙したといい、「一見重そうな作品ではあるんですけど、見ていただくとすごくポジティブな考えができる作品だと思う。どんどんいろんなことに挑戦したり、興味を持ったりするきっかけになったらいいなと思うので、幅広い世代の方に見ていただきたいと思います」とアピールした。映画は17日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開。

 <プロフィル>

 みずさわ・えれな 1992年生まれ、愛知県出身。ファッション誌「セブンティーン」(集英社)のモデルを経て、「東京少女 水沢エレナ」(BS−i)で連続ドラマ初主演。「恋空」(TBS系)のヒロイン・田原美嘉役に抜てきされ、地上波ドラマでも初主演を果たす。「ザ・クイズショウ」(日本テレビ系)、「JIN−仁」(TBS系)、「美丘(みおか)~君がいた日々~」(日本テレビ系)などでも主要な役柄を演じ印象を残した。映画は、小出恵介さんと共演した「風が強く吹いている」(09年)などがある。現在はファッション誌「non-no」(集英社)の専属モデルとして活躍中。

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