薬屋のひとりごと
第35話 狩り
3月21日(金)放送分
「けいおん!」や「魔法少女まどか☆マギカ」など次々にヒット作を生み出している深夜アニメ。ゴールデンからアニメ番組が姿を消す中で、存在感が際立っているが、その歴史はいつから始まったのか。テレビ東京で10年以上にわたり「銀魂」など多くのアニメを手掛けてきた“名物プロデューサー”東不可止(あずま・ふかし)さんに深夜アニメのこれまでと課題について聞いた。(毎日新聞デジタル)
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東さんは99年から、「NARUTO−ナルト−疾風伝」「毎日かあさん」など70作以上のアニメを手掛けており、6月にアニメ制作部のプロデューサーから、経営企画部に異動となり、ネット上でも話題になったほどの名物プロデューサーだ。
東さんは、劇場版公開(97年)前に「新世紀エヴァンゲリオン」が深夜帯で再放送されたことが、深夜アニメが本格化するきっかけになったという。当時営業としてかかわった東さんは「通常は2%が合格点とされる視聴率が、エヴァは5~6%あり、『深夜が行ける!』と思うようになった」と振り返る。テレ東の午後6時のアニメ枠では、エヴァのようなテーマが難解なアニメは、テレビ局の“命”ともいうべき視聴率で苦戦する傾向があり、深夜の開拓はテレビ局にも「渡りに船」だった。
同局では、「ポケットモンスター」や「遊戯王」などのヒット作を生んできた。子供のファンを獲得して、おもちゃやゲーム、キャラクターグッズを販売するのがビジネスモデルだったが、エヴァ以降はDVDやCDなどの映像、音楽商品の販売も伸びたという。
こうした変化について、東さんは「80年代から青年マンガ誌が創刊され、大人が電車でマンガを読める環境になり、アニメを卒業する年も伸びた。作り手もそれに合わせて大人向けのアニメを作ったら、そこに新市場があった」と話す。特に79年、「機動戦士ガンダム」が放送され、視聴率自体はそれほど高くはなかったが、その作品性の高さでブームとなり、アニメが子供だけのものではなくなるきっかけとなったという。
日本動画協会によると、テレビアニメのタイトル数は、90~97年は70~90で延び悩んでいたが、98年に100の大台を突破。テレ東の深夜アニメの成功を見て、他局でもアニメが増え、06年にはピークの279まで増えた。
だが10年になると、アニメのタイトル数は4年連続減の195まで落ち込み、ゴールデンタイムのアニメもほとんどなくなってしまった。東さんは「深夜アニメだと、一般層へ広がりづらく、エヴァのような本当の意味で社会現象になりえない」と心配する。さらに視聴者の傾向も気になる。インターネットの普及で情報が増えてより多くの作品を知る機会が増えたのに、ファンの好きな作品が一極集中になっているという。
またアニメ作品も、完成度は過去に比べて高まっているが、バランスの取れた「幕の内弁当」のような作品が目に付くという。1クール(3カ月、10~13話)の短期アニメが増えていることについても「(原作のない)オリジナルは短いと一本調子になりやすい。エヴァは2クールだったので、それが1クールだったら……と想像してください。物語の深みがなくなりますよね」と語る。
課題は山積だが光明もあるという。東さんは「アニメの作り手は、(『魔法少女リリカルなのは』の)新房昭之さんや(『コードギアス 反逆のルルーシュ』の)谷口悟朗さんら40~50代が活躍していることが多いんです。その下の世代はテレビゲームに流れているのですが、今はさらにもう一つ下の世代から、(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の)長井龍雪さんや『銀魂』の藤田陽一さんら優秀な人たちが出てきました」と評価する。東さんは「テレビ局の役目は、アニメ制作の環境を整え、作り手のモチベーションを上げ、彼らがきちんと食べていけるようにすることです」と語る。
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