こぴはん:ネット配信のアニメ実は“外伝” 制作プロデューサーが秘話語る

アニメ「こぴはん」のイラスト(C)2011 百天神社振興会/こぴはん製作委員会
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アニメ「こぴはん」のイラスト(C)2011 百天神社振興会/こぴはん製作委員会

 インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の特設ページ(http://ch.nicovideo.jp/channel/copihan)で配信した1話約6分のショートアニメ「こぴはん」(全7話)が、第1話だけで累計12万回も再生されるなど、話題になっている。2034年の近未来を舞台に、8人7組の高校生らの日常を描いており、意味深長な内容に視聴者は想像をめぐらしてさまざまなコメントを寄せている。同作を手がけた映像配信会社「デイライト」のプロデューサー、大貫一雄さんは「今回配信した『こぴはん』は、外伝やスピンオフのようなもの。まだまだ展開を考えています」と話し、今後の展開に意欲を見せた。(毎日新聞デジタル)

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 「こぴはん」は、「初音ミク」のキャラクターをデザインしたKEIさんがキャラクター原案を担当し、「アフロサムライ」などのGONZO(ゴンゾ)がアニメーションを制作した。舞台は、西暦2034年の「東京箱柳市」で、現金ではなく電子マネーが利用されている近未来。高校生で巫女(みこ)の栂山あさぎ、右手にパペットを持つ無口な金髪の少女・瓜野比呂美ら8人のキャラクターが各話ごとに主人公として登場して独立したストーリーが展開される。配信第1弾はあさぎの妹でスポーツ万能のゆずきが野球の試合の助っ人として活躍し、第2弾は放送部に所属する美柱姉妹が昼休みにトーク番組を繰り広げる……という具合だ。各話のアニメの長さは約6分で、オープニングとエンディング曲を除けば本編は、約4分半。タイトルも話数ではなく「2034年5月21日午前9時14分」と日付になっている不思議な作品に仕上がっている。

 ニコニコ動画には、動画に視聴者がコメントを書き込めることもあり、アニメには賛否両論が寄せられているが、大貫さんは「企画段階から『わけが分からない作品』と言わせたかった。反響は予想通りです」としてやったりの様子。実はネットで配信した全7話のアニメは、全コンテンツの外郭部にすぎず、本編部分があるという。大貫さんは「(全コンテンツの)一番薄い部分や、各キャラクターの最も偏ってとんがった部分を先に見せました。だから短い話で、オチがなかったり、よく分からない感じになっています。そうすることで、見た人が『すっきりしないアニメだね』と引っかかるようにしたんです」と話す。

 また、タイトルを「時間」にしたのも、今後重要な意味を持つという。プロジェクトの原形は、2年ほど前に大貫さんの元に持ち込まれたテレビゲームの企画で、KEIさんのキャラクターとシナリオがセットになっていた。大貫さんは「ただ、当時は知名度のないゲームは店頭の棚にすら置いてもらえず、売れなかった時期で、ゲームを発売する前に(コンテンツの)知名度を高めるためにアニメをやりましょうと提案したんです」と明かした。

 テレビではなく、ネットの配信を選んだのは、作品はもちろんメディアの特性を考えてのことだ。「テレビは、時間の制限があるため、『(本編アニメを)あと3秒足したら、面白くなる』という場合でも足せないんです。その点ネットは、放送日の数時間前のギリギリまで作業や編成ができるんです。視聴者の生の意見も届くまでのスピードも速い」と話す。さらに、配信の際に注意したことを「30分のテレビアニメでオチのない話や、意図を分かりづらくすると、視聴者の特性上続きを見なくなるんです。その点、ニコ動は無料で見たいときにいつでも見られるし、繰り返し見るのも簡単。放送時間も短いので最後まで見てもらえる」と明かす。1話を6分にしたのは、マンガを1話読むスピードに合わせたからだという。

 8月から配信がスタートして多くの意見やコメントが寄せられたが、大貫さんは、視聴者がアニメを非常に丁寧に見ていることに感心したという。例えば、配信第2弾では、画面は動かすが、キャラクター自体を動かさない「背景アニメ」を配信したところ、視聴者から「動かない」という意見が寄せられた。それを受けて第6弾では逆にモブ(端役のキャラクター)がめまぐるしく動き、キャラクターがしゃべらない内容にしたところ、視聴者から「動いた。でも話が動かないね」というコメントが集まった。大貫さんは「視聴者は本当によく見てくれている。見た人が作品についてツイートしたりすることで広がり、コミュニケーションが生まれている」とファンの反応を喜んでいる。

 今後は、配信した全7話に特典映像を付けたブルーレイディスク、もしくはDVDを発売。また、アニメ以外にも電子書籍「月刊コミック ラッシュ」(JIVE)で、KEIさんのマンガ「こぴはん−沙弥と沙遊の大作戦−」が連載中で、7日には第1巻が発売される。ほかにも、2作品のマンガが展開される予定で、大貫さんは「『こぴはん』は(展開に)3年かかるといっていますが、今回はその1年目になります。これからはどこまで広げていくか。それこそ(舞台と同じ)2034年まで長く愛してもらいたいですね」と自信を見せた。

 大貫さんが気にしているのは、近年のアニメ作品が1クール(3カ月)で終わり、視聴者の興味がすぐに次の作品に移るなど“消費”されていることだ。「音楽では『同じ歌手を10年応援している』というファンがいますが、そういう人がいなくなってきたのはさびしいですね」と振り返る。「こぴはん」を長く愛される作品にするため、さらなる展開を練っており、今後も目が離せそうにない。

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