注目映画紹介:「ラビット・ホール」 ニコール・キッドマンが企画と主演を手がけた悲劇の人間ドラマ

「ラビット・ホール」の一場面 (C)2010 OP EVE 2,LLC.All rights reserved.
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「ラビット・ホール」の一場面 (C)2010 OP EVE 2,LLC.All rights reserved.

 ニコール・キッドマンさんが原案の戯曲に感銘を受け映画化を企画した映画「ラビット・ホール」(ジョン・キャメロン・ミッチェル監督)が5日、公開される。キッドマンさんが自らプロデューサーを務めて主演し、今年の米アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされた作品だ。

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 ニューヨーク郊外の瀟洒(しょうしゃ)な家で暮らすハウイー(アーロン・エッカートさん)とベッカ(キッドマンさん)のコーベット夫妻。2人は一見すると幸せそうだが、実は8カ月前に悲劇に遭遇し、その苦しみから抜け出せずにいた。ある日ベッカは、自分たちから大切なものを奪った張本人(マイルズ・テラーさん)を見つける……。あがきながらも、それぞれが失ったものへの悲しみと折り合いをつけ、再出発を図ろうとする夫婦の姿を描く。

 この作品は多くを語らない。ハウイーとベッカは、仲のよい夫婦だが問題を抱えている。ベッカとその家族の間に不穏な空気が流れているのはなぜか、ハウイーはどんな仕事をし、ベッカは専業主婦になる前は何をしていたのか……。それらのことが、時間をかみしめるようにゆっくりと、観客の前に提示されていく。それはまるでコーベット夫妻の悲しみが癒やされるのにひどく時間がかかることを暗示しているかのようだ。

 「ラビット・ホール」というタイトルは、童話「不思議の国のアリス」に由来する。白ウサギを追いかけ不思議の国に落ちたアリス。今作でキッドマンさんが演じるベッカは、まぎれもなくアリスだ。悲しみの穴に落ちてしまい、そこからはい上がろうとする彼女を通して、喪失からの再生を粛々(しゅくしゅく)と描いていく。

 キッドマンさんが悲しみにくれる母親を、夫役のエッカートさんも、自分の悲しみを消化するのに精いっぱいで、妻を愛しながらその悲しみに寄り添えない夫を好演。原案となった戯曲はトニー賞やピューリッツァー賞に輝くデビッド・リンゼイ=アベアーさんによるもので、映画化にあたってアベアーさんが脚色し、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」などのミッチェル監督が映像化した。5日からTOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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