ジョン・カーター:スタントン監督に聞く 初の実写作品「思い描いた通りの場面が撮れた」

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 ウォルト・ディズニー生誕110周年を記念して作られたスペクタクルアドベンチャー「ジョン・カーター」が全国で公開中だ。原作は「アバター」や「スター・ウォーズ」に多大な影響を与えたとされる、エドガー・ライス・バローズ(1875~1950年)のSF小説「火星のプリンセス」。メガホンをとったのは、ピクサー/ディズニーによるアニメーション「ファインディング・ニモ」(03年)や「ウォーリー」(08年)を大ヒットさせたアンドリュー・スタントン監督だ。これまでアニメーションの世界で活躍してきたスタントン監督にとって今作は初の実写作品となる。「原作の大ファンだった」という監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 スタントン監督が小説「火星のプリンセス」に出合ったのは10歳のとき。それ以来、「いつか映画で、それも実写で見られること」を夢見ていた。だが、1860年代、南北戦争で軍人として戦った主人公ジョン・カーターが、突然、未知の惑星バルスームに飛ばされ、全宇宙の支配を企む魔の手から惑星を救う役目を担わされるといった壮大な冒険物語は、そう簡単に実写化できるはずがなかった。事実、「2000年代半ばに3人の監督が実写化を計画したが、いずれも頓挫した。このまま誰も作らなければ一生見られない」……。それを危惧したスタントン監督は「僕も一応、影響力のある立場になったので、ディズニーで作らせてもらえないかと話をし、実現にこぎつけたのです」と製作までの道のりを語った。

 監督にとって初めての実写作品。アニメーションとの違いは「体力勝負のところ」だったという。「100日間の撮影期間中、朝から晩までほとんど立ちっぱなし。しかも、計画的に作られるアニメーションと異なり、実写は常にさまざまなことに関わり、何かが起きると即座に判断を下さなければならない」と振り返る。技術面においても、テイラー・キッチュさん演じるカーターが、初めてバルスームに降り立ったとき、重力の違いから大きくジャンプするシーンを例にとって「アニメーションなら5~10分で作れるのに、実写だと俳優を動かし、カメラを動かし、クレーンやワイヤを移動させたりで3~4時間かかる。そんなときはフラストレーションがたまったよ」と苦笑交じりに明かす。

 半面、実写ならではの「ハッピー・アクシデント」もあった。それは、カーターが地球上でネーティブアメリカンと対面するシーン。「馬が怖がって逃げてしまったんだ。そのときはNGにしたけど、あとで映像を見たらテイラーの表情が完璧だった。本編ではそれを使ったよ」と教えてくれた。

 スタントン監督は脚本作りにも参加した。原作では、「完全無欠のヒーロー」として描かれているカーターだったが、観客の共感を得るためには「複雑さ」が必要だった。そこで、「人間らしさを加えるために、世の中に対する信頼や希望、正義感を失い、生きがいも失った傷ついた人物にした。その彼が、(バルスームで)新しい目的を見つけ、自らを奮起させていく。その伏線として南北戦争の過去を詳細に付け加えていったんだ」。これが今作が単なるファンタジーアドベンチャーにとどまらないゆえんだった。

 思い入れがあるシーンに、カーターが緑色の異星人タルス・タルカスに出会うシーンを挙げる。演じるのはウィレム・デフォーさん。竹馬のようなものに乗ってタルカス役をこなした。モーションキャプチャーによって取り込まれたデフォーさんの姿は、監督いわく「優秀なアニメーターたち」によって、身長約3メートルの、4本腕のキャラクターに仕立て上げられた。とはいえ、「テイラー(・キッチュさん)相手にほほ笑んだり、目を動かしたり、手を動かすのは、すべてデフォーの判断。僕のプランじゃない。つまり、俳優が勘で演じている。だからこそ、信じられるシーンになっている」と胸を張る。実はこれは監督が原作を読んだときから見たいと思っていた場面だった。完成作を見て、「思い描いていた通りだよ。でもそれは、俳優たちの解釈によって生まれたもの。そこが実写の素晴らしいところなんだ」と、自身の功績はそっちのけで俳優とスタッフをたたえた。映画は全国で公開中(3Dも同時公開)。

 <プロフィル>

 1965年米マサチューセッツ州出身。カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)で学び、90年、ピクサー・アニメーション・スタジオに参加。以来、ピクサーの主力メンバーの一翼を担う。「トイ・ストーリー」(95年)を皮切りに、「バグズ・ライフ」(98年/共同監督)、「トイ・ストーリー2」(99年)、「モンスターズ・インク」(01年)で脚本を担当。03年の監督デビュー作「ファインディング・ニモ」が米アカデミー賞長編アニメーション賞に輝く。08年の監督作「ウォーリー」でも同賞受賞。ほかに、製作総指揮として「レミーのおいしいレストラン」(07年)、「カールじいさんの空飛ぶ家」(09年)、共同脚本作に「トイ・ストーリー3」(10年)がある。

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