石井ふく子:自作で初めて涙 「金子みすゞ物語」完成試写会

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 女優の上戸彩さんが童謡詩人・金子みすゞ役で主演するTBSドラマ特別企画「金子みすゞ物語−みんなちがって、みんないい−」の完成試写会が25日、同局で行われた。石井ふく子プロデューサーは「自分の作った作品で泣いたことはないんですけれど、今日はなんだか、いろんなことを思い出して、泣いてしまいました」と明かし、「作品に出会えたということがすごくうれしい。思えばずっと家族のドラマを作ってきた。家族が生きるということ、家族への優しさ、そういうものを皆さんに感じていただけたらなと思います」と力を込めた。

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 金子みすゞは、大正末期から昭和初期にかけて活躍し、26歳で亡くなるまでに、512編もの詩を発表。1980年代に再評価が行われ、小学校の教科書にも掲載されている。東日本大震災後には、みすゞの作品「こだまでしょうか」が朗読されたACジャパンのCMが多く放送されて注目を集めた。ドラマは、昭和初期に26歳の短い人生を閉じた童謡詩人・金子みすゞと、実の弟ながらそうとは知らず姉を愛してしまう上山正祐の純愛を軸に、みすゞの詩を散りばめながら波瀾万丈な生涯を描く。01年8月にみすゞの生涯を題材に松たか子さんが主演を務めたドラマ「明るいほうへ明るいほうへ」を手がけた脚本家・清水曙美さんの遺作となった。

 完成試写会には、石井プロデューサーのほか、みすゞの実の娘の上村ふさえさん、金子みすゞ記念館館長でドラマの監修を務めた矢崎節夫さん、演出の清弘誠さんが出席した。「明るいほうへ~」でも演出を手がけた清弘さんは「前回を見直すことなく、初心に返って一からやってみようと思った。石井さんの元でやり終えた。いい仕事ができたと思っています」と振り返った。ドラマの仕上がりについて、矢崎さんは「1人(の人物を取り上げた)のドラマを見ると、反対側の人はつらい立場になることが多いと思うんですが、本当に大事に作ってくださった。初めてと言っていいくらい、安心して見られた」と絶賛した。

 ドラマ内にも登場している上村さんは「私の母が命をかけて私を残してくれたっていうことは知らずに、50年、60年も私は母に置いて行かれたと思いこんでいました」と明かし、「石井ふく子先生が思いを込めてドラマを作ってくださった。(矢崎さんに)調べていただいて、いろんなことが分かって、こんなふうにドラマで見ますと、胸がいっぱいでうまく言えないんです」と涙ぐんで感謝した。ドラマを見た感想を聞かれると、「今は母の愛情が分かって、生きててよかった。もっと泣くと思っていたんだけれど、知っている人が出てますので、泣くよりも先にいろんなことを思い出しちゃってね。祖母は私が女学校を出るまで、こんなに大変だったことを私にひとことも言わずに育ててくれた。ありがたい祖母です」と思いにふけった。

 石井プロデューサーは、再びみすゞの生涯を描くドラマを作ったきっかけを聞かれると「今の時代、心がだんだん貧しくなっていると感じる。家族で言葉がほとんどこだましていないですよね。このドラマで心を豊かにしてほしい」と語った。上戸さんをキャスティングしたことについては「彼女がこれだというものを、心の財産を作りたいと思った。1年前に何も言わずに(上戸さんに)詩集を読ませて、1年後にあなたがこれをやるのよ、と言った」と話し、清弘さんも「上戸さんの代表作といえる渾身の演技だったと思いますので、ぜひ見ていただきたい」とうなずいていた。ドラマは7月9日午後9時~11時19分放送。(毎日新聞デジタル)

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