ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題の小説の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、東京六大学野球をテーマにした早見和真さんの「6 −シックス−」です。毎日新聞社出版局図書編集部の長岡平助さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
表紙だけを見ると「ああ、ただの野球小説ね」と思いがちですが、とんでもない! 本作は、確かに六大学野球を主題にした物語ですが、一般的な野球小説にありがちなエースの成長モノではなく、補欠や就活生、お母さんなどその周囲の人々を各章の主人公に据えた物語です。自然、試合はほとんど描かれず、むしろ恋愛や友情、嫉妬(しっと)など主人公たちの抱える感情が、みずみずしく描かれています。「野球小説」としてはもちろん「青春群像小説」としても楽しめます。
−−作品が生まれたきっかけは?
野球強豪校の補欠たちの葛藤(かっとう)を描いたベストセラー「ひゃくはち」の著者でもある早見さんには、当初から「試合を描かずに野球を書けるか」という強い思いがあったようです。そこにたまたま、体育の成績が「1」で「スポーツなんかこの世から消えろ」と思っている私が「何か書きませんか」と相談に参ったところ「(そんな私でも楽しめる)野球小説を書こう」という話になりました。ご自身も野球少年だった早見さんと運動音痴の私。奇跡のコラボレーションです(笑い)。
−−作家さんはどんな方でしょうか。
野球を愛する素敵な好青年です。野球の「や」の字も知らない私にも懇切丁寧にルールからご説明いただけます。一度、東京六大学野球の取材で神宮球場にご一緒したのですが、バッターとピッチャーの間の距離や、打ったらどちらに走るのかなど、しっかり教えていただきました……。今となっては忘れてしまいましたが(笑い)。率直に言えば、“非リア充”な私のような人間にも優しくしてくださる、“リア充”のかがみという感じです。
−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。
私自身、六大学の一つを卒業した者ですので、特に母校の章には思い入れがあります。早見さんには、そんな私の思い入れを優に超える素敵な物語を描いていただきました。詳しくは3週「もう俺、前へ!」をご一読ください。たいへんなことは……、体育「1」らしく、例えば左利きの投手のフォームの描写など、そんなものの確認に手間取りました。まあ、そんな私が「素敵」と認める物語ですので、野球を知らない方でも、むしろそんな方こそ、楽しめる小説だと思います。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
まずは「野球小説」という先入観を持たずに、お手に取っていただければと思います。また毎日新聞社から刊行されるから……というわけでもないのですが、本書の仕掛けの一つに「新聞」があります。各章に掲載された新聞記事が、物語にぴりりとひと味、変化球を加えています。こちらにも、ご注目ください。「そういうことだったのか!?」と意外なカタルシスを味わえること間違いなしです。とにもかくにも、ぜひ、ご一読ください。
毎日新聞社 出版局 図書編集部 長岡平助
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