マンガ質問状:「ジャポニカの歩き方」 ラオスでの体験が元に ドラマ化オファー受け付け中

西山優里子さんのマンガ「ジャポニカの歩き方」(講談社)4巻の表紙
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西山優里子さんのマンガ「ジャポニカの歩き方」(講談社)4巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、海外嫌いの主人公が日本大使館の派遣員になって奮闘する姿を描いた西山優里子さんのマンガ「ジャポニカの歩き方」です。「イブニング」(講談社)編集部の杉田光啓さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 「ジャポニカの歩き方」は世界中の大使館など在外公館で働く「派遣員」(要は大使館の使いッパシリ)を主人公にした、海外勤務ストーリーです。地元の練馬で就職もできずもんもんとしていた主人公が、ひょんなことからいきなり海外で就職してしまい、言葉や文化の壁にぶつかりながらも、異文化コミュニケーションの面白さや、外国にいるからこそ分かる日本の良さに目覚めていきます。

 “超内向き”だった主人公が半ばムリヤリ海外に放り出されてしまうことで大きく成長していくストーリーが最大の魅力ですが、主人公が赴任するラオ王国(モデルはラオス)の景色や食べ物などの臨場感、大使館という誰もが知ってるけれども実際に何をやってるのかはあまり知られていない組織でのお仕事、一クセも二クセもある大使館を取り巻く面々のキャラクター、そして現地でのちょっと切ない恋などなど、海外に興味がある人もない人もぜひ楽しんでいただきたいですね。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 西山さんはこれまで週刊少年マガジンで活躍されていて、初めて青年誌でのお仕事をお願いしたのですが、最初は別の企画を検討していたんです。でもそれがちょっとうまくいかなくて、僕としてはどうしても西山さんに描いてもらいたくて提案したのが「大使館もの」でした。実は西山さんのお父さんは元外交官で大使にまでなられた方で、西山さんご本人も一緒にラオスやフランスなど海外を転々とされてたんですね。大使館の内側がどんなものなのかを肌で感じたことのあるマンガ家さんって西山さんしかいないんじゃないかと思って提案しました。最初、西山さんも迷われたようですが、打ち合わせしていく中で快諾していただいて今に至っています。

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 連載が始まる前にラオスに取材に行ったときの話です。第1巻のプロローグとして「ラオスのゆりこちゃん」という、今から37年前の西山さんの体験をベースにしたお話が載っていて、ベトナム戦争の足音が迫る中で西山さんはじめ子供たちがプールで遊んでいるシーンがあるのです。

 それでラオス取材のときに、ぜひそのプールのあった場所や当時の西山さんが住んでいた家を見ておきたいということになったのですが、今となっては住所も記録も何も残っていない。それで半分あきらめかけていたところ、西山さんが大使館の方に当時の写真を見せると「あっ、これ官舎のプールですよ!」。現地に行ってみるともう官舎は使われてなくて、プールも埋められて草がぼうぼうで……。でも西山さんが本当に懐かしそうに、うれしそうにされているのを見て僕もしみじみと良かったなと思いました。きっとあの時の思いが今でも力になっているような気がします。

 あと、これも「ラオスのゆりこちゃん」に出てくるのですが、西山さんは子供のころからラオスの揚げ春巻きがお好きで、本場ラオスで買った揚げ春巻きを日本に持ち帰ろうとされたのにはびっくりしました(笑い)。しかも、ちょうど日本に台風が直撃した影響でハノイの空港で一晩足止めを食ってしまい、帰国が1日遅れたんですが、それでも持ち帰られてましたね。西山さんの揚げ春巻き愛は本物です。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 「絶対日本から出たくない!」と言っていた主人公が、「もっとラオにいたい!」と言えるぐらいに成長できる日がくるのか?

 これからまだまだ仕事に恋に波瀾(はらん)万丈の派遣員ライフが続きますので、どうか応援よろしくお願いします。

 また、ファンの方や取材先の方からよく「これはドラマになってもすごく面白そうですね」と言っていただくのですが、今のところまだ空いておりますので(笑い)、関係者の方は、どうかご検討よろしくお願いいたします。

 イブニング編集部 杉田光啓

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