京本政樹:時代劇愛を語る 9年ぶりの大河にこだわりの“作り込み”で熱演

大河ドラマ「平清盛」で藤原秀衡を演じている京本政樹さん=NHK提供
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大河ドラマ「平清盛」で藤原秀衡を演じている京本政樹さん=NHK提供

 俳優の京本政樹さんが、NHK大河ドラマ「平清盛」で奥州藤原氏の当主・藤原秀衡役を演じている。京本さんにとって大河ドラマへの出演は、03年の「武蔵 MUSASHI」以来9年ぶり5作目。「僕はデビューした年に大河に出ました。どちらかというと“里帰り”ですね」と語る京本さんに、撮影や役柄の秀衡について、また時代劇への思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 今回の大河ドラマ出演について、京本さんは08年の「ちりとてちん」などでもタッグを組んだ脚本の藤本有紀さんらのオファーを受け、「大河の名に傷が付かぬように体当たりしたい」と出演を決めたという。しかし、秀衡役は意外だったようで「以前までは(79年の)『草燃える』での駒若丸みたいに、方向性として線が細いというか、そういう自分の系譜に入っている役が多かったんですが、秀衡はそこから完璧にずれているというか……」と苦笑いを浮かべ、「過去に演じられた高橋英樹さん(05年『義経』)、渡瀬恒彦さん(93~94年『炎立つ』)のように、(秀衡は)どちらかというと包容力がある父的な存在だと思うんです。だから、最初に秀衡といわれたときに、あまりピンとこなくて(笑い)。初めてに近いんじゃないかな、父的な存在の役というのは」と依頼された当時を振り返った。

 京本さんが演じる秀衡は、平泉を中心に東北地方一帯に勢力を張った奥州藤原氏の当主で、馬と金という豊富な財力によって、都にもその威勢を誇り、清盛(松山ケンイチさん)が秀衡の金を宋への輸出品として重用するなど、平家とは交易でのよきパートナーになる。その一方で、巨大化する平家の力を警戒、源氏の嫡流である源義経(神木隆之介さん)が平泉に立ち寄ると歓迎し、その才能を見抜くと対平家への大きな力となることを期待するという役どころ。

 秀衡の人物像について、京本さんは「頭のいいのし上がり方をして天下取りを目指した清盛を“動”的な人物だとすれば、秀衡は“静”。富を持った中で、自分が動くというよりも、見込んでいる義経に思いを託した人物」と分析。終盤の要となる役どころに「出番の多い少ないではなく、心に残る人物を演じなければいけない。自分が演じることによって新しい秀衡像が作れれば」と意気込みを語った。

 京本さんは劇中、目張りを入れたり、濃い目のドーランを塗るなど、作り込んだメークで登場する。「『平清盛』の演出はあまり作りすぎない“リアル”な表現を追求していて、僕はそれも一つの方法としてありだなと思うんですが、(時代劇特有の)所作とか、目張りやメークをすることなど、僕にとって当たり前のことだったものを捨てろといわれると、僕がデビュー以来、諸先輩方から教わってきたものがなくなってしまうのではと思い、結果として折衷案をとって、作り込みをしたんです。(メークで)りりしくしないと、僕の顔では秀衡にならないので」と時代劇への強いこだわりを明かした。

 さらに、「僕は時代劇も現代劇もバラエティーも音楽も全部やっている人間ですけど、一番好きなのは時代劇」と愛情をのぞかせ、「今は(テレビの)時代劇が“全滅”しちゃって(笑い)、大河ぐらいしか残っていない。僕が経験してきた、刀でばっさばっさと切って、さやに収めるみたいな時代劇の様式は使うところがなくなってしまったので、僕が元気なうちに早く再現してくれないと、誰にも教えることなく終わってしまうかもしれない。時代劇を愛し歩んできた人間にとっては、こういうさびしい状況の中で、今回大河の話を持ってきてくれたので、自分の気持ちを半分入れてみました」と熱い思いを語った。

 大河ドラマ「平清盛」は、武士が貴族たちから差別されていた時代、武士の新興勢力・平氏の元で育てられた少年が、瀬戸内海の海賊を束ねて武士の頂点に立ち、貿易こそがこの国が豊かになる道だと人々に説く……という物語。平清盛(松山さん)は白河法皇(伊東四朗さん)の“落胤(らくいん)”で、忠盛(中井貴一さん)が養子にしたという設定で描かれている。総合テレビで毎週日曜午後8時に放送中。

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