フランケンウィニー:製作のアリソン・アバッテさんに聞く 白黒は「深い味わいの情感を与える」

白黒の劇場版アニメ「フランケンウィニー」を製作したアリソン・アバッテさん
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白黒の劇場版アニメ「フランケンウィニー」を製作したアリソン・アバッテさん

 「アリス・イン・ワンダーランド」(10年)や「ダーク・シャドウ」(11年)など、おどろおどろしい中にもチャーミングな世界観をつむぎ出すティム・バートン監督の最新作「フランケンウィニー」が15日から全国で公開された。少年ヴィクターが、死んでしまった愛犬スパーキーを“禁断の実験”によって生き返らせたことから巻き起こる騒動を、人形を24回動かすことで1秒間の映像を生み出すストップモーションアニメで表現したファンタジー。劇場版アニメ「アイアン・ジャイアント」(99年)や「ファンタスティックMr.FOX」(09年)などでプロデューサーを務め、バートン監督とは「ティム・バートンのコープス・ブライド」(05年)で組んでいるプロデューサーのアリソン・アバッテさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 −−最初にこの企画を聞いたときはどう思いましたか。

 この作品は、ティム(バートン監督)が84年に製作した実写短編映画がもとになっています。私はその映画の大ファンでした。それを、今回全く違う形でリメークするなんて、なんてすてきなアイデアなんだろうとワクワクしました。オリジナルも素晴らしい作品ですが、さらに素晴らしい映画になると確信しました。

 −−オリジナルの「フランケンウィニー」同様、今回もモノクロで仕上げました。

 モノクロにしたのは、まず、以前からティム自身が言っていることですが、モノクロの映像自体に深みがあり、物語が醸し出す情感に、より深い味わいを与える効果があるからです。トーンが一定なので、ムードにも統一感が出せます。それから、ティムが大好きな30~40年代のホラー映画へのオマージュを込めました。

 −−ヴィクター少年のクラスメートとして、トシアキという少年が出てきます。彼は、競争意識がとんでもなく強く、ヴィクターを打ち負かすことに大きな喜びを感じています。彼を日本人にした理由は?

 トシアキは、もちろんティムが考えついたキャラクターですが、終盤、彼が自分のペットだった生き物を掘り起こし禁断の実験をすると、“あるもの”(注:ネタバレになるため詳細は伏せます)に変態します。そこから、このキャラクターは絶対に日本人じゃないとダメだとティムはこだわっていました。トシアキで、もう一つ印象深かったのが声優選び。英語はもとより、日本語をしゃべれる人が必要ということで、老若男女、それはもう、あらゆる人をオーディションしました。

 −−ちなみにアバッテさんは、トシアキが変態させた、そのペットが登場する日本映画をご存じですか?

 ティムは怪獣映画好きで知られているので、当然それからヒントを得ていると思います。私はというと、怪獣映画には造詣が深くないので、今回、この映画を作りながらいろいろ見せられて知りました。

 −−ヴィクター少年はじめ、犬のスパーキーなど、“キモカワイイ”キャラクターが続々登場しますが、アバッテさんの一番のお気に入りはどれでしょう。

 エドガー(写真でポスターの右上にしがみついている少年)ね。なぜかというと、ティムが描いたオリジナルの絵に最も忠実に再現された人形だから。声も含めて、一番生き生きとスクリーンによみがえっていると思うわ。素晴らしい完成度よ。ただ、エルザ(同、アバッテさんが右手に抱いている女の子)は、自分に似ているところがあるから共感できるし、スパーキーももちろん大好きよ。実は最近、新しい犬を飼い始めたところなの。パグとビーグル犬を組み合わせたパグルという種類で、とってもキュート。だから、「犬」と聞いただけで胸がキュンとなってしまうの(笑い)。

 −−アバッテさんは初来日だそうですね。

 時間が許す限り、いろんなところを探索したいわ。一番行きたいのは京都。今回はちょっと時間が取れそうなので、日帰りで行って来ようと思っています。あと、天気がよければ富士山をどこかのポイントから見たいというのと、築地の魚河岸に行って、新鮮なおすしを食べたいです。

 −−今回の滞在でご自身の作品のインスピレーションはわきそうですか?

 異質な文化というだけでも刺激的なのに、昨日もお店をのぞいていて、そこに並ぶ細かいグッズに、日本独特のものを感じました。それだけでインスピレーションがわいてきます。

 −−最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。

 これは、映画「フランケンシュタイン」(31年)に着想を得ていますが、「フランケンシュタイン」では、主人公は、自分が作り出したにもかかわらず、モンスター化した人造人間を拒絶します。そこに愛情は存在しません。でも、この「フランケンウィニー」のヴィクターが、死んだスパーキーを禁断の実験でよみがえらせるのは、そこに深い愛情があったからです。その“ひねり”がこの作品の面白さの一つ。それから、両親にとってみればわが子、子供になら友だちや飼っているペット、それらを大切にすることで、相手からも愛情が返ってくるというとてもシンプルなメッセージも込められています。そのあたりもしっかり受け止めてほしいですね。

 <プロフィル>

 ニューヨーク出身。89年にハリウッドに移り、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(93年)のアーティスティック・コーディネーターをへて、「ティム・バートンのコープスブライド」(05年)、「ファンタスティックMr.FOX」(09年)などのストップモーションアニメでプロデューサーを務める。そのほかのプロデュース作品に、アニメ「アイアン・ジャイアント」(99年)、「ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション」(03年)など。

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