ROLLY:「これが王道のポップス!」 ももクロに楽曲提供で“モノノフ”にもアピール

「僕等のセンチュリー」などについて語るROLLYさん
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「僕等のセンチュリー」などについて語るROLLYさん

 結成30周年ツアーを行っているロックバンド「すかんち」のボーカル、ギターを務めるROLLYさんが、5人組アイドルグループ「ももいろクローバーZ」(ももクロ)の限定シングル「僕等のセンチュリー」を手がけた。同曲は12年12月に発売され、今月23日から、レコチョクなどの音楽ダウンロードサイトで配信される予定だ。同曲とすかんちの楽曲を「王道のポップス!」と語るROLLYさんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ◇ももクロ人気で初の1位 「それでもうれしい」

 「僕等のセンチュリー」は、ROLLYさんと作・編曲家の長谷川智樹さんが連名で作詞・作曲したクリスマスソング。12年12月24、25日に開催されたももクロのライブ「ももいろクリスマス2012~さいたまスーパーアリーナ大会~」の会場で2日間、限定発売されたほか、インターネットショップでも期間限定で発売され、オリコンのデイリーチャートで初登場1位(12年12月24日付)、週間ランキングで初登場5位(13年1月7日付)を記録した。

 90年のデビュー以来、自らが手がけた曲が、同チャートで1位になるのは初めてで「自分で歌った曲ではないし、(売り上げの)99%がももクロの人気。それでもとにかくうれしいね」と喜んでいる。

 今のJ−POPシーンで、奇抜な衣装でアクロバティックなダンスや激しいパフォーマンスを繰り出すももクロが活躍していることを「快挙」と語り、「(自分は)激烈ロックバカ一代!を貫いてきた。僕がやってきたことと、ももクロのやろうとしていることは非常にうまく一致している。(ももクロの)ファンも、一風変わったものを求めている」と、シンパシーを感じている。

 ◇「僕等のセンチュリー」は王道のポップス!

 ももクロに提供した「僕等のセンチュリー」と、自身のバンド「すかんち」の楽曲の共通点を「王道のポップス! 伴奏なしでも歌えるシンプルな曲。それでいてアレンジがちょっと変わっていて、変な世界観を持っている。それは長年、僕がやってきたことの一つ」と説明する。どちらも楽曲のルーツは、60年代に米国で一世を風靡(ふうび)したプロデューサー、フィル・スペクターさんが作り上げた音楽「スペクターサウンド」だという。「ザ・ロネッツとか、60年代のポップス。ロイ・ウッド&ウィザードからもすごく影響を受けている」と明かした。

 また「カボチャの馬車」「硝子(ガラス)の靴」「草木もスリープ丑三つ(うしみつ)トリップ」などの言葉が並ぶ詞は、「歯の浮いたようないい話(の歌詞)はイヤ。ちょっとコミックソングに聴こえるぐらいのものがいい」という前々からの信念で作られた。

 これまでも歌手の高橋瞳さんやKimeruさんらさまざまなアーティストに楽曲を提供、プロデュースしてきたが、常に「(自分の)はんこを押すように、曲や、詞の世界観、ありとあらゆるところに(自分のテイストを)ちりばめている。(一度聴いて)僕のギタープレーだと分かるものが出てくるようにしている」といい、「僕等のセンチュリー」でも冒頭からその音色をさく裂させている。

 ◇ロックに希望を見いだせなかったことも

 「僕等のセンチュリー」の1位獲得を自分のことのように喜ぶ理由の一つは、自分の音楽が「(世間に)まったく理解されない時期が続いていた」と感じているからだ。

 ROLLYさんは、96年のすかんち解散後、同年に発売したソロデビューアルバムがヒットせず、レコード会社をクビになった。「自分のギタースタイルとか、やっているバンドが時代とすごくずれているんじゃないかと感じていた。ロックに希望を見いだせなかったこともあった」という。また独特のキャラクターでバラエティー番組などに出演し、注目されたことから「ギターを持ってるけれど、ほとんど弾けない人だと思われていた」と当時を振り返る。

 そんなころから、ロックと並行して、シャンソン歌手の故・石井好子さんから勧められたシャンソンにチャレンジ。演劇にも挑戦し、ジャズやクラシックを題材にしたライブを行うなど活動の幅を広げたことで、徐々に道が開けていく。12年は「勉強して蓄積された“マグマ(エネルギー)”が今にも吹き出しそうな予感」がしていたという。

 ソロデビュー後、11年までに発売したアルバムは数枚だったが、12年は、ももクロへの楽曲提供以外に、ソロ、すかんち、シンガー・ソングライターの谷山浩子さんとのコラボレーションアルバムなど、計5枚のアルバムを手がけ、女性2人組ユニット「PUFFY(パフィー)」のトリビュートアルバムなどにも参加。さらに三つの舞台に出演し、そのうちの一つでは音楽監督を務めるなど、活動は”破竹の勢い”だった。

 「音楽への情熱は、一度も薄れたことはない。自分の信念を変えるつもりは0.1%もなかったね」といい、長年の音楽活動が結実しつつあると感じていた12年の末にやってきた吉報だったからこそ、「満を持して」と喜びもひとしおだった。

 ◇好きになってくれたら「ルーツも聴いて」

 さらに、すかんちでデビューしたころから「僕の音楽を聴いて好きになってくれた人は僕のルーツも聴いてほしい」と考えている。フィル・スペクターさんの楽曲やザ・ビーチ・ボーイズ、ロイ・ウッド&ウィザードらの名を挙げ、「音楽は数珠のようにつながっている。単発で終わってしまうのではなくて、(聴くことで)その音楽の“遺伝子”が広がっていく」と期待しているからだ。

 そして「我々(すかんち)はおっさんだから……。ちょっと難しいかも」と苦笑いしながら、「ももクロのファンには洋楽ファンが多い。ももクロファンもすかんちのライブに来てほしいね」と、「モノノフ」と呼ばれるファンたちに呼びかけている。

 ももクロのシングル「僕等のセンチュリー」は、表題曲のほか元「チャットモンチー」のドラマー、高橋久美子さんが作詞した「空のカーテン」などを収録。1月23日から「僕等のセンチュリー」と「空のカーテン」の配信がスタートする予定。

 ◇プロフィル

 ろーりー。9月6日生まれ(生年非公表)。大阪府高槻市出身。90年に「すかんち」でデビューし、同バンドは96年に解散したが、06年に再結成した。現在は、ソロやすかんちなどでの音楽活動をはじめ、舞台、映画、ドラマなどにも出演している。09年にはNHK連続テレビ小説「つばさ」にレギュラー出演。29日に、ギターアクションなどステージパフォーマンスをレクチャーする教則DVD「ROLLY式ギターライブパフォーマンス!~観客を魅了できるギタリストの作り方~」(2980円)を発売する。すかんちの結成30周年ツアーは、27日に「umeda AKASO」(大阪市北区)、2月9日に「渋谷公会堂」(東京都渋谷区)で開催される。

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