朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第103回 宮沢賢治「雪渡り」

「雪渡り(日本の童話名作選)」著・宮沢賢治(偕成社)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「雪渡り(日本の童話名作選)」著・宮沢賢治(偕成社)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第103回は宮沢賢治「雪渡り」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 私の住む町では、寒波の影響からとりわけ寒い日が続いているんですけど、こんなときには鍋物が恋しくなりますよね。

 実は先日朗読倶楽部でも「鍋パーティー」を開いたんですけど、最後の先生の言葉「我々もこの鍋のように、一つ一つの個性が溶け合って、温かくも大きな力を発揮できるようにありたいね」という言葉がとっても印象的でした。

 ただし、「いいこと言ったつもりでも余分に肉を食べたことはごまかせないよ」と部長さんから突っ込まれるオマケつきでしたが……。

 それでは恒例のお誕生日コーナーから、今回は4人の作家さんをご紹介させていただきます。

 最初は、田山花袋(たやま・かたい)さん(1872年1月22日生まれ)。作者自身の経験をもとに執筆した「私小説」の原点と言われ、同時にその経験を美化することなく描き出す「自然主義文学」を日本で本格的に広めた作品「蒲団」は、当コーナーでもご紹介させていただきました。

 続いて、椋鳩十(むく・はとじゅう)さん(1905年1月22日生まれ)。狩人の大造さんと雁(がん)のヌシ的存在「残雪」との駆け引きを描いた「大造じいさんとガン」は、小学校時代、国語の教科書で読んだという方も多いのではないでしょうか?

 3人目は、北原白秋さん(1885年1月25日生まれ)。詩人、歌人、作詞家として、全国に及ぶ学校校歌の作詞、児童文芸誌「赤い鳥」への参加など、精力的に作品を発表されました。2007年に発表された「日本の歌百選」の中には北原白秋さん作詞の作品「あめふり」「この道」「からたちの花」「ゆりかごのうた」と、実に4曲が選ばれています。

 最後に4人目は、池波正太郎さん(1923年1月25日生まれ)。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」「真田太平記」など、テレビドラマにもなった時代小説の名作を多数発表しました。自作品のスケッチを行うなど絵にも精通し、多くの自筆絵画を残されているんですよ。

 では続いて、朗読倶楽部のお話……今回からは、私たち朗読倶楽部の顧問・癸生川新先生のお話をしていきたいと思います。

 朗読倶楽部が結成されたときは、学校図書館の司書をされていた先生。現在は司書だけでなく、朗読倶楽部顧問のほか、私とみかえさんのクラスの副担任であり、臨時教諭として現代国語も担当されています。

 いつも不機嫌そうな表情と男性的な言葉遣いから、初対面の人は大抵「怖い人」という印象を持ってしまうんですけど、全然そんなことはないんですよ。

 ただ、部長さんが先生のことを「枯れている」と指摘しているのを聞いてから気付いたのですが、ふと先生の横顔を見たときに、沈んだような、あるいは疲れたような……そんな表情をしているように感じられることがありました。

 でも、私が「お疲れですか?」と聞いても、先生の答えは決まって「特に疲れてはいない」でした。

 別に何かを我慢されているとか、隠されているとかいった様子もなく、しばらく間を置いては思い出したように同じやり取りを繰り返していたのですが……ある時、その理由が明らかになるきっかけとなる出来事があったのです。

 ……と、いうところで、次回からはそのエピソードを少しずつお話ししていきたいと思いますので、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 宮沢賢治「雪渡り」

 こんにちは、今回ご紹介するお話はこの時期にぴったりのお話、宮沢賢治さんの「雪渡り」です。

 1921年に婦人誌で発表されたこのお話は宮沢賢治さんのデビュー作であり、存命中に唯一、最初にして最後の「原稿料」を手にした作品だと言われているんですよ。

 常に推敲(すいこう)を続ける宮沢賢治さんにとってこのお話も例外ではなく、雑誌掲載後にも推敲が行われ、現在このお話が収録されている本の多くは推敲後の形になっています。

 降り積もった雪が夜の間に凝り固まってしまった、ある晴れた日のこと。大喜びで外を歩き回っていた四郎さんとかん子さんの兄妹は、森のすぐそばで子ギツネの紺三郎さんに出会いました。

 お近づきのしるしにとキビ団子を勧める紺三郎さんですが、キツネといえば人をだます生き物で、団子と偽ってウサギのふんを食べさせる……そんなふうに教えられてきた2人は身構えてしまいます。

 紺三郎さんは、キツネは人をだますようなことはしない、そんなウソをつくのは、お酒に酔って自分で勝手にふんを食べてしまったような大人たちで、このキビ団子はちゃんと自分で作ったものだと熱心に訴えるのですが、そもそもおもちを食べたばかりでおなかがすいていなかった2人は、次の機会があったらと遠慮するのでした。

 すると紺三郎さんは、月夜の晩に行われる幻燈会(げんとうかい・スライド映写機を使った上映会のこと)に、2人を招待したいといいます。

 12歳以上の参加はお断り、子供たちによる、子供たちのための幻燈会、その演目とは……?

 ずるい人同士がだまし合うさまを例えて、「キツネとタヌキの化かし合い」というくらい、キツネ=ずる賢い動物のイメージがあります。でも、実際にキツネがいたずらをするさまを見たことがある人は、どれほどいるのでしょうか?

 このお話に登場する紺三郎さんは果たしてどうなのか、全編を通して歌われる「かたゆきかんこ」のわらべ歌を口ずさみながら、確かめてみませんか……?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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