風吹ジュン:「綾瀬さんの芝居に助けられた」 八重の母・佐久役を語る

大河ドラマ「八重の桜」で山本佐久を演じる風吹ジュンさん=NHK提供
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大河ドラマ「八重の桜」で山本佐久を演じる風吹ジュンさん=NHK提供

 女優の風吹ジュンさんが、NHK大河ドラマ「八重の桜」で綾瀬はるかさん演じる山本八重の母・佐久役で出演している。八重や兄の覚馬らを育てた賢母として知られ、彼らとともに会津戦争の敗戦後も力強く生き抜いた女性を演じる風吹さんに、自身の佐久像や、娘役の綾瀬さんら共演者への思いを聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ◇佐久は「トンチのきいたお母さん」

 ドラマは、福島県出身で戊辰(ぼしん)戦争の落日、会津の鶴ケ城に500人の女たちと立てこもり、銃を持って戦ったことから“幕末のジャンヌ・ダルク”と呼ばれ、のちに同志社を創設した新島襄の妻となる八重(1845~1932)の生涯を描いた物語。風吹さんが演じる佐久は、先入観にとらわれず、いいと思ったものはなんでも実践するという進取の気性に富んだ女性で、エリート藩士である息子の覚馬も「自分は母の聡明さに及ばない」と語ったというエピソードが残っている。

 佐久について風吹さんは「夫を立てて家庭を守る」という武家の模範的な妻でありながら、「幕末の激動の時代、その流れについていかないと生き残れなかった時代だからこそ、柔軟性もあった女性だと思う」と分析。そのため子供たちへの接し方も「トンチのきいたお母さんというイメージなので、ダイレクトに気持ちを押しつけるのではなく、子供たち自身が考えられるよう全体的に受け止める気持ちで話しています」と語り、人柄としては「みんなが元気が出るように、明るく演じようと意識している」と明かす。

 また、役作りについては、八重を演じる綾瀬さんの存在が大きかったといい、「綾瀬さんの演技は勢いがあって、華があって、すごく八重の力を感じた。八重のような子供が育つには、『こうあらねばいけない』という当時の女性教育とは裏腹に、佐久は腹の底では八重にエールを送るような気持ちもあったと思うんですよね。父親の堅い部分をフォローして、子供たちをどこかで受け止めてきたんだろうなって。そうじゃないと八重のような子供は育たない。本当に綾瀬さん演じる八重の存在はありがたかったです」と改めて感謝している。

 ◇現場でも母の顔「みんないい子たち」

 やさしく子供たちを見守る佐久同様、風吹さんは、娘と息子を演じる共演者にも母のような温かいまなざしを送る。綾瀬さんの素顔を「可愛くって、あんなに無防備な女優さんはいないですよ。“天然”というふうにいわれていますが、とても気遣いがあって能天気なわけではない。ただ無防備なんです」といとおしそうに語り、覚馬を演じる西島秀俊さんに対しても「素直で、いやらしさがなくて子供みたいな人。向上心があって、俳優として『まだ戦わなければいけない』という気持ちが強いので、気を抜かないんですよね。だから、プライベートで彼を支えてくれる人が陰にいたらいいなと思うんですけど」と母の顔をのぞかせる。

 実際、現場でも風吹さんは、夫の権八役の松重豊さんとともに“山本家の親”としてのポジションを担っているといい、共演者たちをつなぐパイプ役も務める。「今、覚馬は家族と離れて京都で暮らしているので、西島さんとは同じ撮影シーンがないから、綾瀬さんやみんなが会いたくて。母親なら返事が来るだろうから、『そろそろメールを送ってみて』って」と請われることが多く、そのつど、西島さんの近況を松重さんと聞いては、山本家のキャストに伝えているという。

 また、キャストは全体的に仲がよく、「昨年は、共演シーンのない役者さんまで呼んで、食事会を開いて面白かったです」とたびたび会う機会を設けているといい、八重の最初の夫・川崎尚之助役の長谷川博己さんや後の夫・新島役のオダギリジョーさんらも含めて「みんないい子で優しくて、すぐになじんじゃうんです。どうやってキャスティングしたんだろうっていうくらい」とバツグンのチームワークを明かす。インタビュー当日も、「この後、山本家の女たちとスタッフの女性で“女子会”なんです!」と笑顔で、「今日は焼き肉。私が予約を取りました」とうれしそうに“まとめ役”を買って出ていた。

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