井上荒野さんの短編小説「帰れない猫」が原作の韓国映画「愛してる、愛してない」が16日、公開された。ヒョンビンさんとイム・スジョンさんの主演で、男女の心のすれ違いを映し出している。イ・ユンギ監督はこれまで日本の小説を原作にした映画を2本撮っており、わずか2、3時間のやりとりをリアルタイムで刻むという実験的な手法で、静かにラブストーリーをつづっていく。
ウナギノボリ
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建築家の夫(ヒョンビンさん)と編集者の妻(イムさん)は結婚5年目の夫婦。仕事で空港に向かう妻を夫が送り届ける車中で突然、妻が家を出ていくと告げる。ほかに好きな人ができたというのだ。夫は妻の話を戸惑いながらも受け入れる。いよいよ妻が出ていく日。夫は妻の荷造りを手伝い、思い出のレストランに予約を入れたり、コーヒーを入れてあげたりしている。2人の暮らしに思いをはせているとき、雨にぬれた子猫が迷い込んでくる。さらに子猫の飼い主の夫婦がやって来て……という展開。
ほぼワンシチュエーションの中で、夫婦の関係と心の変化が濃い密度で描かれている。別れを前にまだ迷っている男女のかすかな気持ちの揺れが繊細に伝わってくる。緊張と不安の中にいる2人。夫婦の関係は会話で察することができるが、それに加えてヒョンビンさんとイムさんが微妙な表情で夫婦のこれまでの関係性を見せてくれる。家という狭い空間の中だけで、2人のこれまでのドラマを想像させるのだ。「大丈夫」と口ぐせのようにいう夫。受け身な夫にいら立つ妻。2人にまだ愛が残っていることが見えてくる。なのに、若い2人はそれを知ろうとしていないで、歯がゆさが漂う。雨の音が効果的に使われ、常に見る者の心をざわつかせる映画だ。16日から新宿武蔵野館ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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