ラノベ質問状:「マグダラで眠れ」 やっぱり獣耳が好き! 錬金術の描写も魅力

支倉凍砂さん作、鍋島テツヒロさんイラストの「マグダラで眠れ」(電撃文庫)2巻のカバー
1 / 1
支倉凍砂さん作、鍋島テツヒロさんイラストの「マグダラで眠れ」(電撃文庫)2巻のカバー

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「マグダラで眠れ」(支倉凍砂著、鍋島テツヒロ画)です。アスキー・メディアワークス電撃文庫編集部の荒木人美さんに作品の魅力を聞きました。

あなたにオススメ

 −−この作品の魅力は?

 まずは作品の世界観だと思います。激動の時代、新たなる技術を求め、異教徒の住む地を目指す人々。そして、時代の先駆者でありながら人々から忌み嫌われる異端の存在である錬金術師の青年。彼に寄り添う白い修道女……。ファンタジー好きの人はもちろん、そうでない人も心躍るに違いないキーワードがたくさん出てきます。

 そして、もちろん外せないのが主人公・クースラとヒロイン・フェネシスの魅力です。昼も夜も研究を続けるところから「眠らない錬金術師」と呼ばれるクースラは、ちょっと皮肉屋ですが「姫を守りたい」という夢を持ったロマンチストでもあります。そして、そんなクースラに「守るべき存在」として白羽の矢を立てられたのが、ヒロインのフェネシス。1巻のネタばれになってしまいますが、支倉さんの作品に欠かせない“獣耳”を持った修道女の少女です。彼女はそれが原因で迫害を受けてきたため、仲間を大事にしたいという優しさと、けなげさを持ち合わせた女の子。クースラならずとも守ってあげたくなる存在です。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 支倉さんからは「『マグダラで眠れ』というタイトルの響きが好きで、そこから物語を考えついた」と聞いています。プロット中に「眠らない錬金術師」という主人公のキャッチフレーズが出てきて「それがとても格好いいですね」という話になり、プロットを進めていただきました。タイトルにもなっている「マグダラ」は、物語の中では、錬金術師たちが探し求める「夢の世界」を意味します。

 −−支倉さんの前作「狼と香辛料」との最大の違いは?

 前作「狼と香辛料」では、主人公・ロレンスはもっぱらヒロイン・ホロにいろいろなことを教えられる立場だったのですが、「マグダラで眠れ」では、クースラがフェネシスに錬金術のことを教えてあげます。そこが大きな違いかもしれません。でも、よくよく読むと、クースラは「人として大切なこと」をフェネシスから教えられているので、2人の関係は対等なものだと思います。

 もう一つ大きく違うのは、前作では二人きりの旅だったのに対して、今作には仲間がいます。クースラの昔なじみの錬金術師で、女の子にやたらともてるウェランド。そして、うら若き乙女の身で鍛冶屋組合の組合長を務める少女・イリーネです。4人の仲間たちの小気味よい会話の応酬も作品の見どころです。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか。

 支倉さんは、とにかく博識で勉強熱心な方です。今回も錬金術を描くにあたり、資料をたくさん読まれていると思います。そして、やっぱり獣耳好きです(笑い)。「新作にも、もちろん獣耳の女の子が出てきます」と当初からおっしゃられていて、原稿をいただいた際に「こうきたか!」とうならされました。

 鍋島さんは、物腰が柔らかで、イラストの案をいろいろとご提案くださるので、いつもとても助かっています。また、フェネシスをめでてくださっていて、原稿を読んだ後に「こんなところが可愛かった」と感想をくださいます。男性キャラも女性キャラも魅力的に描かれる方ですので、ぜひ男女問わずいろんな方に作品に触れていただきたいなあと思っています。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 やはり一番に作品を読めることですね。支倉さんは、キャラクター同士の関係性をとても丁寧に描かれるので、巻が進むごとにクースラとフェネシスの関係がだんだんと近づいていく様子が、読んでいてドキドキします。クースラとウェランドの男同士の友情や、フェネシスとイリーネの女の子たちの友情もとても気持ちがよく、編集者という立場にもかかわらず、一読者としても彼らの行く末がどうなるのだろうと、原稿をいただくたびにワクワクできる点がとても幸せなことだと思います。

 また、錬金術についての詳しい描写もあり、読んでいてとにかく勉強になる作品です。逆に錬金術の方法が合っているかが分からない点が、大変なことでしょうか。鍋島さんにイラストにおこしていただく際にも、資料があまりないので、大変なこともあります。

 −−今後の展開は?

 第4巻では、クースラたちはいよいよ新天地であるカザンの町に向かいます。しかし、そこはすでに「異教徒の町」ではなくなっており、新たな問題が勃発(ぼっぱつ)することになります。発売時期は未定ですが、秋ごろを目指して執筆していただいています。

 コミカライズも進行中で、「ヤングエース」(角川書店)で、今春からスタート予定です。マンガを担当してくださるのは、繊細な作画が人気の有坂あこさんです。すでに、キャラクターデザインをいただいているのですが、有坂さんの描かれるフェネシスも表情豊かでとても可愛らしいので、ぜひご期待いただければと思っています。連載開始時期は、4月10日発売の「マグダラで眠れ」4巻のオビをご確認ください!

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 物語のテーマとなっている「マグダラ」は、誰しもが心に持っている「理想」のようなもの。クースラとフェネシスたちも、移り変わる激動の時代の中で、必死に自分たちの夢を追い求めます。ぜひクースラたちと一緒にファンタジー世界を旅して、そして「その先の世界」に足を踏み入れてみてください。

 アスキー・メディアワークス 電撃文庫編集部 荒木人美

ブック 最新記事