ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
テレビアニメ「TARI TARI」や劇場アニメ「レイトン教授と永遠の歌姫」などで知られる橋本昌和監督が手掛けた劇場版アニメ「映画クレヨンしんちゃん バカうまっ! B級グルメサバイバル!!」が20日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほかで公開中だ。今作で劇場版シリーズ初監督を務めた橋本監督に、劇場版でのこだわりや見どころなどについて聞いた。(遠藤政樹/毎日新聞デジタル)
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−−シリーズを通して初めて監督としてオファーを受けたときの気持ちはいかがでしたか?
素直にうれしかったです。ずっと好きな作品だったので。それにもともとコメディーが好きなので。「トムとジェリー」やチャプリンの作品などが好きで、業界に入ったというのもあります。だから、これはいいな、やりたいなと思いました。
−−これまでは絵コンテの担当として参加されていましたが、今回監督として臨むにあたって、心境の変化などはありましたか。
いつも(仕事には)全力投球なので、それほど変わりはありません。ただ、やっぱり監督と絵コンテではコントロールできる範囲が違う。絵コンテは監督の意向に沿った中での全力投球ですけど、監督としてはもっと広い範囲で映画をコントロールしなければならないので、当然かかる時間も作業的に必要なことも全然違います。責任感という意味では、より大きくなりますね。
−−今回の劇場版ではシリーズで初めて「食」を扱っていますが、意識したことなどはありますか?
特に食べ物だからというわけでもないのですが、食はすべての人に共通のテーマじゃないですか。そういう意味ではすごく普遍的なものとして扱いやすいというか。何がおいしいかを論じる映画ではないので(笑い)。食というものを題材として別の何かを描く、という意味ではすごく普遍的なものなので、いろいろなものを描ける可能性がある題材として考えるととても面白い題材だと思います。
−−今作の中で中心的な存在のB級グルメは「やきそば」でしたが、何か意図はあるのでしょうか。
深い意味はありませんが、みんなが知っていてなじみ深いものということです。最初はもっといろいろ出ていたのですが分散させても仕方ないので、最終的にやきそばに集約されました。「食」というテーマにも通じますが、誰でも知っていて食べたことがあるものでないといけないと思ったので。個人的にはお好み焼き押しですね(笑い)。
−−劇場版とテレビアニメでは、作る上で意識が違いますか?
あまりにも違ってはいけないので、原作を1巻から読み直しました。普段放送されているアニメも押さえておくべき部分を中心に改めて見ました。テレビアニメを見ている人が違う作品だと感じたら困りますし、全くいつも通りだとテレビアニメになってしまう。映画らしい部分はそこをスタートラインとしてふくらませていくという作り方をしています。
−−演出する上でこだわったことなどはありますか。
原作の雰囲気を大事にしたかったので、「笑い」をとにかくしっかり入れていこうと考えていました。
−−上映中にかなり笑いが起こっていました。
本当に笑ってもらえるとうれしいなという作品です。プラスして大人が笑うだけではなく最後にジーンとくるところもあります。ただし、あくまで笑いがあり、そこから派生したジーンというのがいいと思っていました。感動させるために積み重ねるよりは、笑いの結果、ちょっとジーンとくるという部分にたどり着く、そういった感じになればいいですね。
−−今のお話を聞くと、しんのすけやひろしのせりふには、よく聞くと少し考えさせられるものが多かったような印象があります。
そうですね。パッと聞くとギャグに聞こえるのですが、積み重ねて最終的にそれがもう一度出てきたときにジーンとくるといいなと思います。笑いの積み重ねが感動につながるように意識しました。
−−登場キャラの中で「ソースの健」はかなりダンディーなキャラになっていますが。
ダンディーですね。シナリオではもう少し軽めだったのですが、だいぶダンディーにしました(笑い)。A級はグルメッポーイ以外にも存在感のあるキャラがいますが、B級の中では健さんが群を抜いて存在感があります。それにしんのすけたちとメインにからむB級が健さんなので、印象が薄いとB級自体が薄くなってしまうので、口数などは減らしてダンディーな感じにしました。
−−たしかにせりふはそれほど多くはなかった印象ですね。
B級を一人で背負って立っているように、健さんが印象に残るといいなと思っていました。ほかのB級のキャラはゆるキャラ的なものが多く、逆に健さんが一番B級っぽくないかもしれません。
−−ところで監督はご自分のB級な一面はありますでしょうか。あれば教えてください。
ほぼB級です(笑い)。A級な一面を聞かれるほうが答えられるかもしれないですね。わりとA級のような感じで仕事をしているわけではなくて、泥くさいB級なほうが大きいです。もちろん監督して作品に取り組む姿勢はA級です(笑い)。
−−世代を問わない作品ではありますが、観客の中心は子供たちですよね。そのあたりは製作する上で何か意識されましたか。
子ども向けだからこうしようといったことは、あまり考えていません。子どもが見て楽しくないものは大人も楽しくないし、大人が楽しければ子どもも……という部分があるので、まず自分が見て楽しく、人に薦められないとダメです。相手が大人でも子どもでも薦めたいという、自分の中の基準を超えるように作っています。
−−今回ゲスト声優として出演なさっている方々の印象を教えてください。
業界の中で何年もやってきている方々なので、作品に対して真摯(しんし)に取り組んでくれているなという印象です。仕事に対する姿勢はA級ですね。
−−劇中で流れる「やきそばの歌」が気になったのですが……。
僕が作詞しました。もともとシナリオに仮の詩が入っていたのですが、最後で歌わせるには少し短かったので、丸ごと書き直しました。クライマックスで歌うことを考え、本編の流れなどを意識して作りました。
−−最後に今作の見どころをお願いします。
最初から最後まで退屈しない映画になるといいなと思ったので、理屈っぽい感じではなく、直感で子どもも大人も笑って見てもらえたらいいですね。笑って見ているのが続いているうちに最後はジーンとする、といった感じになればと思っています。ご飯を食べたらおいしいし楽しいといったような、考えるよりは感じてもらえる映画になればと考えて作っているので、ぜひ楽しんでもらえたらうれしいです。
<プロフィル>
1975年生まれ、広島県出身。東映アニメーション研究所卒業後、プロダクションI.G.、ビィートレインを経て、2002年フリーの演出家となる。これまで手がけた主な作品は、演出としてテレビアニメ「あたしンち」「鋼の錬金術師」「REIDEEN」、監督・シリーズ構成としてテレビアニメ「TARI TARI」など。また劇場アニメ監督作としては「レイトン教授と永遠の歌姫」(09年)がある。
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