朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第119回 堀辰雄「風立ちぬ」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第119回は堀辰雄の「風立ちぬ」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 今年も衣替えの季節がやってきました。私の住む地域ではちょっと暑い日が続いていたので、6月からの登校は快適になりそう……と思っていたのですが、天気予報を見るとまさに梅雨の季節到来といった雰囲気で気温も下り坂。湿気で蒸しそうな、でも雨で体を冷やしてしまいそうな……何を着ていいのか悩ましいところです。

 さて、今回のお誕生日のご紹介です。

 まず5月26日は、ロバート・W・チェンバースさん(1865年生まれ・アメリカ)

 1895年に発表された短編集「黄衣の王」は、クトゥルフ神話の生みの親であるH.P.ラブクラフトさんに影響を与えました。

 翌5月27日は、ハーラン・エリスンさん(1934年生まれ・アメリカ)

 1968年発表の短編集「世界の中心で愛を叫んだけもの」は、その個性的な題名が「新世紀エヴァンゲリオン」の最終話や、片山恭一さんの恋愛小説に引用されて話題になりました。

 最後に5月28日は、イアン・フレミングさん(1908年生まれ・イギリス)

 英国の軍情報部「MI6」に所属していた経験を生かして執筆されたスパイ小説「007シリーズ」の生みの親として知られています。作中の主人公「ジェームズ・ボンド」さんには、「世界一有名なスパイ」という言葉がぴったりきますよね。

 ではここで朗読倶楽部のお話、今回は3度目の「朗読大会」出場の記録です。

 2度目の大会出場から間もない夏休みの終わり、早くも3度目の大会出場が迫っていました。しかも、今回のテーマは朗読ではなく、書評のうまさを競う「ビブリオバトル」の大会。全く新しいルールの上、前大会から間がないために準備期間もわずかという状況の中、先生のアドバイスを受けた私たちは、「それぞれの持ち味を生かす」方針で大会に臨みます。

 みかえさんと部長さんのプレゼンが好評をおさめるなか、いよいよ私の順番が迫ってきたその時、なんと私が発表する本と全く同じ本をプレゼンする人が現れました。しかもその人は前回の大会で面識があった小口のどかさんだったのです。

 彼女の発表はとても上手で、どう考えても私のプレゼンが見劣りするのが目に見えていましたが、「腹が据わる」と言うのでしょうか……舞台に上がる頃にはどうにでもなれという気持ちになり、かえって緊張がほぐれた状態でプレゼンすることができました。

 そして結果発表……私たち朗読倶楽部は、全員入賞の快挙を果たしたのです! 1等賞にあたる「チャンプ」にはなれなかったものの、「乙葉しおり」のプレゼンを小口さんに褒めてもらえたことは、私にとってなによりの収穫となりました……と、いうところで、今回はここまで。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 堀辰雄「風立ちぬ」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、堀辰雄さんの「風立ちぬ」です。

 1936年から1938年にかけて断続的に発表され、過去幾度か映像化されました。スタジオジブリによるアニメーション映画「風立ちぬ」ではモチーフのひとつとされており、再度脚光を浴びていますよね。「序曲」「春」「風立ちぬ」「冬」「死のかげの谷」の全5章からなるこのお話は、作者自身の体験が色濃く反映されており、当時の「私」を回想する私小説的な構成となっています。

 夏の終わり。自然に囲まれた避暑地で、熱心にキャンバスに向かって絵を描く女性。「私」は、そんな彼女……節子さんの姿を眺める毎日を過ごしていました。彼女とはこの夏に偶然出会っただけの関係でしたが、今や自分の仕事を投げ出してまで、彼女のそばにい続けるほどに思い焦がれていたのです。

 彼女が去った後もその思いは途絶えることなく募るばかり……。「私」は秋に移り変わった自然を前に、自分の進むべき道を見いだしたのでした。月日は流れ、あの夏から二度目の春がやってきたころ。「私」は、節子さんの婚約者となっていました。幸福な時間を過ごす2人。しかしその一方で、時の流れは容赦なく2人の病をむしばんでいくのでした……。

 このお話を象徴する一節として作中にも幾度となく登場する「風立ちぬ、いざ生きめやも」は、フランスの詩人、ポール・バレリーさんが1922年に発表した詩「海辺の墓地」からの引用で、堀辰雄さん独自の翻訳となっています。

 あまり聞きなれない語尾の「めやも」という表現は、言葉そのままにとらえると「さあ生きようか、いや生きられまい」といった意味になり、作品内容を暗示しているかのようにも受け取れますが、同時に本来の訳に近い「生きねばならない」という意味も含まれており、死の影に葛藤する心を描きだしていると言われています。

 人々は限られた時間の中で、どれだけお互いを幸福にさせることができるのでしょうか? 「風立ちぬ」は、その問いに対するひとつの答えなのかもしれません。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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