米国の独立記念日の翌日、「鉄壁の要塞」とうたわれるホワイトハウスが、アジア人テロリストに占拠され、大統領が人質にとられた! この前代未聞の危機的状況に、一人の男が立ち上がった……。その男の決死の救出劇を描いた「エンド・オブ・ホワイトハウス」(アントワン・フークア監督)が全国で公開中だ。作品のPRのためこのほど来日した主演のジェラルド・バトラーさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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「最後のテロリストたちとのバトルシーンは、(自身の役名の)バニング自身、満身創痍(そうい)。演じる僕もテークのたびに走ったり、口にパンチを受けたりとボロボロだったよ。実際、そのシーンの2日間の撮影では、爪をはがしたし、前腕部を腫らしたし、首の小さな骨も2本折った。入れ込み過ぎているから自分で調整できないんだ。それに、撮影はルイジアナだった。湿度80%ぐらいの中、汗でぐっしょりになりながらやっていたよ」と、当時の様子を身ぶり手ぶりを交えて熱く説明するバトラーさん。
「エンド・オブ・ホワイトハウス」は、ホワイトハウスを占拠したテロリストに、たった一人で立ち向かう元シークレットサービスのマイク・バニングの活躍を描く。バトラーさんはそのバニングを演じ、プロデューサーも兼務した。プロデューサーとしては、「信ぴょう性があって、観客がその場にいるような体験ができること」を心掛けた。そのため製作スタッフは、ホワイトハウスそのものの描き方や、映画ではテロリストがホワイトハウスをわずか13分で陥落させるが、その時間に真実味があることを、綿密なリサーチと元シークレットサービスやFBI、CIAといった当局者たちへの取材で固めていった。
映画では、ホワイトハウスの屋上に備え付けられた迎撃ミサイルや、壁の間の隠し通路など、「へえ~」と驚くホワイトハウスの“トリビア”も披露される。バトラーさんも、「屋根に迎撃ミサイルが仕込んであるのには驚いた」そうで、かなりの数の軍人がホワイトハウスに詰めていることにも好奇心をかきたてられたようだ。
「トレーニングデイ」(01年)などで知られるフークア監督が手掛けた。今回、フークア監督にアプローチしたのはバトラーさんの方からだったそうだが、それ以前に3本ほど一緒に企画をあたためていたという。2人の関係は、バトラーさんがフークア監督の2004年の監督作「キング・アーサー」のオーディションで、「英国から遠路はるばる出かけていったのに、役をもらえず大嫌いになった」ことに始まる。その後、何かの折に再会したとき、バトラーさんがフークア監督に不満を言ったところ、フークア監督は「そんなこと全然知らなかった」と謝罪、以来「大親友になった」のだそうだ。
「アントワンは、映画作りの天才だよ。僕はタフなヒーローを演じているけど、彼はそれ以上にタフ。同時に謙虚で、とても思いやりがある。それに僕と考え方が似ていて、僕が出したアイデアに別のアイデアを出してきて、それによってストーリーをどんどんふくらませていけるんだ」と、過去の私怨はどこへやら。今ではすっかりフークア監督の才能と人柄に信頼を寄せる。
インタビュー中は、自分のコメントが長くなりがちなのを気にして、通訳さんが日本語に訳している間に「じゃあ、僕はジムに行って、ひと汗かいてくるよ」なんてジョークを飛ばしてみせたり、飲料水を取りに席を立ち、戻ってきたときには、筆者の分も持ってきてくれたり。そんな気配りが利き、愛嬌(あいきょう)たっぷりのバトラーさんだから、出演作が続くのは当然。実際、今後も今作のほかに「スマイル、アゲイン」や「マーヴェリックス 波に魅せられた男たち」「ムービー43」が公開待機中だ。
そんなバトラーさんが、1997年のデビュー作「Queen Victoria 至上の恋」以来40本を超える作品に出演し、その中には「本当にすべてがうまくいったと思う作品がときどきある」といい、この「エンド・オブ・ホワイトハウス」が、「まさにそれだと実感している」と力を込める。「この作品を観客と一緒に見ていると、恐怖や緊迫感、ユーモアや興奮、そういうものを味わってくれているのが分かるんだ。その点でもこれは、本当にやりがいがある作品だったんだ」と満面の笑みでアピールした。映画は8日から全国で公開中。
<プロフィル>
1969年、英スコットランド生まれ。1997年「Queen Victoria 至上の恋」で映画デビュー。2003年の「トゥームレイダー2」で存在感をアピールし、04年の「オペラ座の怪人」でブレーク。その後は、07年、「300<スリーハンドレッド>」「P.S.アイラヴユー」、08年、「幸せの1ページ」「ロックンローラ」、09年、「男と女の不都合な真実」、10年、「ヒックとドラゴン」、11年、「英雄の証明」などに出演。09年の「完全なる報復」でプロデュース業にも進出した。今後、「マーヴェリックス 波に魅せられた男たち」(12年)、「スマイル、アゲイン」「ムービー43」(13年)の公開を控えている。
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