マンガ質問状:「大奥」 “男女逆転大奥” 今秋発売の10巻には衝撃の展開が……

よしながふみさんのマンガ「大奥」(白泉社)
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よしながふみさんのマンガ「大奥」(白泉社)

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、よしながふみさんのマンガ「大奥」です。白泉社「メロディ」編集部の白岡真紀さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 若い男だけを襲う謎の疫病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」の蔓延(まんえん)で、男子の人口が激減した江戸時代。男は子種を持つ宝として大切に育てられ、女がすべての労働の担い手に。江戸城もしかり。三代将軍・徳川家光の死をへて、将軍は女、大奥に仕えるは美男3000人という「男女逆転大奥」が誕生した−−。

 男女逆転という大仕掛け。史実に忠実なのに、男女を逆転しただけで思わぬ救いや悲しみが生まれることにも驚かされます。皆「自由」には生きられない、究極に理不尽な世界。それでも一人一人が本気でその時を生きる、そのぎりぎりのドラマが毎回見どころです。実は正統派のラブロマンスであり、お仕事ものであり、親子ものであり、歴史ものであり……いろいろな角度からも、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。(個人的には、八代将軍・吉宗と御用取次・久通の、人生をかけたバディー関係にグッと来ます!)

 −−作品が生まれたきっかけは?

 作品の大まかな構想自体は、かなり前からあったそうです。前担当者が、よしなが先生から具体的な設定やあらすじをかなり細かくうかがったのが最初でした。まず、よしなが先生の頭に浮かんだのは、御鈴廊下に男の人がズラーッと並んでいる、大奥の華やかな風景。はじめは、「こんな話を他の方が描いてくださらないかな……」という話だったらしいのですが、「ぜひ自分で!」と決まったそうです。男女逆転の発想や、途中で医療ものになって、また恋愛ものになって……という展開なども、すでに決まっていて、その緻密さに感動したのを覚えてます。

 また、偶然ですが、当時、フジテレビで菅野美穂さん主演の大奥がヒットしていて年配の方だけでなく、若い方も見られていたので、皆さんが本家を分かっている今ならパロディーも行けるのでは、と思ったのも後押しとなりました。

 −−編集者として作品を担当して、うれしいことを教えてください。

 打ち合わせでは、よしなが先生の頭の中にあるストーリーを、お話ししながら具体的なエピソードにしていきます。元々のお話が面白いのはもちろんですが、口に出していくことで、少しずつ組みあがっていく過程が、たまらなく面白いです。「大奥」という閉ざされた空間の中だからこそ生まれる濃密なドラマも、描かれているのは今と地続きの人の感情だと、毎回思います。老いた五代将軍・綱吉に、大奥総取締・右衛門佐が思いのたけをぶつける回(コミックス6巻)の原稿をいただいた時は、思わず鳥肌が立ちました。一番初めに、この物語を読めるなんて、ぜいたく。編集者冥利に尽きました。読者さんからの反響も、非常に大きい回でした。

 −−今後の展開は?

 現在、隔月刊メロディの連載では、「赤面疱瘡」の根絶に向けて、田沼意次・平賀源内などの後押しのもと、大奥内のチーム男子がついに手がかりをつかみつつあります。それにつれて、彼ら一人一人の人生もドラマも、さらに大きく動いていきます。詳しくは言えませんが、今秋発売予定のコミックス10巻のラストでは、衝撃の展開が待ち受けています。ぜひ、読んでいただきたいです。

 −−読者へ一言お願いします。

 歴史ものだから難しそう……と思われる方もいるかもしれませんが、私自身歴史にはあまり詳しくありませんし、打ち合わせには山川出版社の歴史年表が必携です(笑い)。逆に、この物語に関わることで、歴史や人物にどんどん興味が出てきました。

 昨年まで、2回の実写映画化(10年、12年)、連続テレビドラマ化(12年)が実現しました。これも読者の皆さまの熱い思いのおかげです! 素晴らしい作品にしていただき心から感謝しています。

 マンガの方は、歴史に沿って徳川最後の将軍・慶喜の時代までが描かれます。まだまだ登場していない魅力的な人物たちが、どのように登場したり(しなかったり)するのか、「男女逆転大奥」がどうなるのか……ぜひご期待ください。これからもよろしくお願いします。

 白泉社 メロディ編集部 白岡真紀

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