ジャック・ブラック:「バーニー/みんなが愛した殺人者」主演 「今回ほどダークな役はなかった」

(C)2011 Bernie Film,LLC and Wind Dancer Bernie,LLC.All Rights Reserved.
1 / 12
(C)2011 Bernie Film,LLC and Wind Dancer Bernie,LLC.All Rights Reserved.

 米人気俳優ジャック・ブラックさん主演の映画「バーニー/みんなが愛した殺人者」が13日に公開された。同作は、1996年に米テキサス州の田舎町で実際に起きた殺人事件を描いており、ブラックさんは、事件の加害者、つまり“殺人者”のバーニー・ティーディを演じた。葬儀社で働き、町のみんなから愛されていた彼が、なぜ、シャーリー・マクレーンさんふんする町中の嫌われ者マージョリー・ニュージェントを殺してしまったのか。その顛末(てんまつ)を、映画では実際の2人を知る住民たちのインタビューを交えて再現していく。メガホンをとったのは、リチャード・リンクレイター監督。ブラックさんとは、「スクール・オブ・ロック」以来8年ぶりのタッグとなる。今作について、ブラックさんが電話インタビューに応じた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 −−実在の事件であり、しかもバーニーさん本人は刑務所で存命中。出演には覚悟がいったと思いますが、オファーを受けたのは、やはり信頼するリンクレイター監督の作品だからでしょうか。 

 そうだね、リンクレイター監督の作品だからというのが大きいね。彼が作るものだったらなんでも参加したいと思う。それほど僕にとって「スクール・オブ・ロック」の経験は最高だった。それに僕はこれまで、今回の役ほどダークなものはやったことがなかった。今までとは違う役だからこそ面白いと思ったし、これまで、いい意味で“バカげたコメディー”にたくさん出演してきたけれど、このあたりで、もう少しシリアスだったりリアルな役をやって、ギアチェンジしてみてもいいかなと思ったんだ。だからこの話が来たときは、迷うことなく飛びついたよ。

 −−深刻な顔をしたり、笑顔を見せたり、号泣したり。ここまで感情の起伏と表情の変化が激しいあなたを見たのは初めての気がします。あなた自身、今回のバーニー役は挑戦でしたか?

 そうなんだ。特に泣くのは大変だったよ。役者にとって泣くという演技は、それをする日はカレンダーに「今日、泣く」と印をつけるぐらい大変なことなんだ。怒ったり、笑ったり、怖がったりするのは簡単だけど、ものすごい苦痛や苦悩に見舞われて泣くのは、肉体的にすごく難しいことなんだ。僕はもともと涙もろい人間で、映画を見ても泣くし、夢の中であっても、悲しいことがあると泣いてしまう。だけどカメラの前で、「はい、泣いてください」と言われても、なかなか泣けないものだよ。だから、泣く必要がある場面では、リラックスして、普段の自分が泣くような状況をイメージし、その感情を呼び起こすというやり方をしていくんだ。

 −−映画だからこそバーニーを、観客がもっと共感できる人間、あるいはもっと悪人に見せるなど、極端なキャラクターにすることができたと思うのですが、あなたはそのへんをあいまいに演じていると感じました。

 まさにその通りで、意図的に曖昧に演じたんだ。というのも、それがこのストーリーには必要だと感じたからだ。バーニーは、本当に優しくて内気な人間で、自制心を失って突発的に犯行に及んでしまったんだと思う。計画した上での殺人ではないし、死体をどうやってかたづけようとか、そんなことを考えたわけでもない。その部分が、まさにこの映画の“肝”なんだ。だから、そういうふうに曖昧に表現することにしたんだ。

 −−映画には、実際のバーニーやマージョリーを知る人々も出てきます。演技経験のない方たちだと思いますが、妙にカメラ慣れしていました。しかも、かなり辛らつなコメントを言っています。あれは台本が用意されていたのでしょうか。

 ドキュメンタリースタイルの部分は、リンクレイター監督が、彼らにまず取材をしてコメントを集め、そこから台本を作り、せりふとしてそれを改めてカメラの前で読んでもらうという手法をとった。だから、完全なドキュメンタリーではないけれど、そのスタイルをとっていると考えてもらえばいいかな。町の人は、バーニーのことをとてもよく知っていたし、撮影中も、彼らがバーニーのことをどう思っていたのかを知ることができたのは、僕自身、演じる上ですごく有益だったよ。

 −−エンドロールに、バーニーさんご本人とお話ししているあなたが映ります。どのようなことを話したのでしょう。

 彼とは撮影前に1度だけ会った。彼に会うことで、彼がどんな人間で、どんな振る舞いや話し方をするのか、そのヒントが得られるのではないかと思ったんだ。会ってみて、本当に衝撃的だったけれど、半面、役作りに大いに役立った。彼は刑務所でも人気者なんだ。周囲が彼のことを殺人者と分かっていてもね。小声で話すし、とてもシャイだけれど、人を引きつけてやまないものを持っている。親切で温かくて、そうだなあ、まるで「チョコレートのような人」とでも言おうか……。一緒に過ごしたのは2時間くらいだったけれど、事件について、マージョリーについて、彼の人生について、そして、彼がどんな人間なのかを知ることができたよ。

 −−演じ終えて、あなたはバーニーさんご本人をどうとらえていますか。

 バーニーは殺人を犯したのだから、もちろん罰せられなければならないとは思う。だけど、計画的な犯行ではなかったし、殺そうという意図もなかったと思う。僕も含めて周囲の人も終身刑は重過ぎる、服役してかれこれ10年にもなるから、もう十分なのではと思っているんだ。

 映画は13日よりヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。

 <プロフィル>

 1969年生まれ。米カリフォルニア州サンタモニカ出身。92年、ティム・ロビンス監督作「ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄」で映画デビュー。94年には、カイル・ガスさんとロック・フォークコメディーユニット「テネイシャスD」を結成、リードボーカルを務める。2000年「ハイ・フィデリティ」での中古レコード店の店員役で注目され、01年には「愛しのローズマリー」で初主演。03年、「スクール・オブ・ロック」の大ヒットによって、名実共にハリウッドのトップスターに。ほかの作品に「キング・コング」(05年)、「ホリデイ」(06年)、「カンフー・パンダ1、2」(07、11年/声の出演)、「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(08年)、「ガリバー旅行記」(10年)などがある。今作は11年に製作された。

写真を見る全 12 枚

映画 最新記事