中島愛:尾崎亜美が作詞・作曲「たまゆら」のED曲「楓ちゃんの気持ちで歌いました」

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 「マクロスF」のランカ・リー役などの声優として知られ、歌手としても活動している中島愛さんが、9枚目のシングル「ありがとう」を7日にリリースした。テレビアニメ「たまゆら~もあぐれっしぶ~」のエンディングテーマになっているこの曲は、シンガー・ソングライターの尾崎亜美さんが楽曲を提供している。少しレトロなムードの同曲について、話を聞いた。(榑林史章/毎日新聞デジタル)

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 −−新曲「ありがとう」は、尾崎亜美さんの作詞・作曲ですね。

 個人的に尾崎さんのファンで、いつかお仕事をご一緒できる日が来たらいいなと、数年前から話をしていて、今回ご縁があり夢が一つかないました。私が最初に尾崎さんの歌に触れたのは「オリビアを聴きながら」で、それは子どものころに、初めてピアノで弾けるようになった曲でもありました。それをきっかけに、尾崎さんが松田聖子さんに提供した「天使のウィンク」や観月ありささんの「伝説の少女」など、いろいろ聴くようになって。それらの曲を編曲していた佐藤準さんが、今回「ありがとう」も編曲してくださいました。

 −−尾崎さんの曲のどういうところがお好きなのですか?

 私は尾崎さんの1976年リリースのデビュー曲「瞑想」が、すごく好きで。お話をするようなというか、メロディーが口からこぼれ落ちるような歌い方が好きなんです。それは、自分が目標としている歌い方でもあります。

 −−「ありがとう」は、語りかけるような歌声だなと思いました。

 歌詞には、「たまゆら」の主人公である楓ちゃんの亡くなったお父さんが、空から楓ちゃんの成長を見守っているというストーリーが軸にあって、仮タイトルはまさに「ファーザー」でした。曲の最後には、楓ちゃんが、そんなお父さんの存在に気付いて「ありがとう」と言葉を返すところがあって、それで「ありがとう」というタイトルになりました。「たまゆら」の父と娘の関係だけでなく、友だち同士だとか、離れている大事な相手を思う曲としても、楽しんでいただけると思います。

 −−初めて曲を聴いたときは、どんな感想を持ちましたか?

 尾崎さんご自身がデモテープに歌を吹き込んでくださっていて、それだけでも感動だったのですが……。私の両親もきっとこんなふうに思ってくれているのかな?とか、感動と同時に驚きと喜びの入り交じったような気持ちでしたね。ただこれはプレッシャーというわけではありませんが、その分どういう視点で歌えばいいのか分からなくて。大人の方にも聴いていただきたいと思ったので、人生の先輩方に納得してもらうには、どのアプローチが正しいのか?と……。

 −−どうやって正解を導き出したのですか?

 幸いなことに、歌入れの直前に、ミュージシャンの方々のオケ録りに参加させていただいたんです。「せーの」でバンドに合わせて仮り歌をとらせていただいたのですが、ドラムは林立夫さん、ベースは小原礼さん、ギターは佐橋佳幸さん、そして尾崎さんと、そうそうたるメンバーでした。そこで分かったのは、大大大ベテランの皆さんの出す音が、まるで両親のように温かくて、この先輩方の胸に飛び込めばいいんだということ。私はみなさんを信頼して、その中で自由に歌えばいいんだということでした。皆さんが音で語りかけてくださって、それに私は気持ちで返すという、まさに主人公の楓ちゃんと同じ気持ちでした。

 −−それだけの大御所ミュージシャンに囲まれて歌うのは、さすがに緊張したのでは?

 今までのお仕事の中で、一番と言っていいほど緊張しました。でもそれは、スタジオに行くまでのことです。スタジオはすごくアットホームな雰囲気で、そこかしこで「久しぶり」「同窓会みたいだね」とか、そんな会話がされていたのですが、その輪の中に優しく迎え入れていただきました。まるで、スタジオにお父さん、お母さんがたくさんいるような感じでしたね。

 −−中島さんはデビュー5周年ということで、「ありがとう」という言葉はファンのみなさんに向けての気持ちも重ねているように思いますが。

 そうですね。この約1年間は、5周年イヤーということで活動していて、イベントやCDリリースなどをさせていただく中で、応援してくださる方がこんなにもたくさんそばにいてくださったんだと改めて実感することができました。アニメ「たまゆら」のタイアップ曲ではありますが、この曲を通して、ファンの方やスタッフの方へ、心の底から「ありがとう」の気持ちを伝えられたらと思って歌いました。

 −−中島さんは、デビュー当時から70、80年代の歌謡曲がお好きと公言されていますが、どういうところに魅力を感じていますか?

 私は子供のころから携帯電話やインターネットなどがあって、それが当たり前だと思って生活していますが……。80年代まではそういうものがなく、当時の歌の歌詞によく、待ち合わせに来なくて電話しようと思ったらテレホンカードがなくてとか出てきて……。

 −−駅の伝言板にメッセージを書いたりとか。

 そうそう! でも、それらは私にはまったく想像のつかない世界で、まるで未来を見ているような気持ちなんです。そういう未知の世界に対する憧れが、探求心につながっています。歌詞だけでなく、たとえばシンセサイザーの音にしても、その時代ごとの最先端が使われていて、そういうものを追っていくと、なんとなくその時代を生きていた人たちの雰囲気とか、どんなものが好きで、何に熱狂していたかが伝わってきます。インターネットがない時代に、本や経験で得た知識で作られた先輩たちの功績というか……。今回の「ありがとう」は、そういう時代の息吹きが感じられる1枚になりました。CDだけどLPレコードのような雰囲気を感じていただけると思います。大人のリスナーの方だけではなく、アニメ「たまゆら」ファンの若い方たちにも、ぜひこの音をお届けしたいです。

 <プロフィル>

 1989年6月5日生まれ、茨城県出身。2007年、アニメ「マクロスF(フロンティア)」の歌姫を決定するオーディションで、ヒロインのランカ・リー役を射止め、08年にランカ・リー=中島愛としてリリースしたデビューシングル「星間飛行」が、オリコン週間ランキングで初登場5位を獲得。好きなアーティストの一人に小泉今日子さんを挙げており、「多彩な面を持ちながら、一貫して“中島愛”というものを持っているアーティストになりたい」と話した。

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