潘ちゃん×潘さん交換日記:「はじまり」と「はじめて」 潘めぐみ

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 「HUNTER×HUNTER」のゴン役などで人気上昇中の声優・潘めぐみさんと、「機動戦士ガンダム」のララァ役などの声優としても知られる母親の潘恵子さんが、さまざまな思いや出来事を交換日記形式でつづります。第1回は、“潘ちゃん”ことめぐみさんが、声優になったきっかけなど「はじまり」と「はじめて」について語ってくれました。

ウナギノボリ

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 みなさん、おはようございます! こんにちは、こんばんは、はじめまして! 潘めぐみです!

 さあ、はじまりました、このコラム。実は、コラムを書くということが初めての経験なので、肝心な書き出しが飛び出すビックリ箱状態です。とても緊張しております。

 そして、今回は、親子の交換日記というコンセプトのもと、母であり役者の先輩でもある潘恵子さんと共にコラムを書かせていただくことになりました。

 これもまた初めての機会です。なんだか照れくさいです。お母さんの名前に「さん」をつけることに、不思議な感覚を覚えつつも、役者としても人生で考えても先輩であるし、「お母さん」という言葉にも「さん」がついているように、敬意を込めて“潘さん”と呼ばせていただきます。

 さて記念すべき今回は、このコラムの始まりであり、私にとって初めてのコラムでもあるので、「はじまり」と「はじめて」をテーマに書かせていただこうかと思います。

 私が生まれて物心ついたときに、一番最初に認識した職業。それが「声優」でした。

 今から約20年前、私が3歳のころ、「美少女戦士セーラームーン」を見ていた時。テレビから聞きなじみのある母の声が聞こえてきたのです。

 「お母さん、しゃべる黒猫さんなの?」。そう思うかたわらで母は台所でネギを切っているのです。「めぐさん、ご飯もうすぐだからね!」って。

 「声優」という職業は、老若男女、あるいは人間以外の生き物、モンスター、さまざまなものになることができる、夢のような職業だと思います。

 自由に空を飛ぶこともできれば、ロボットにも乗れる。可愛くも、かっこよくもなれる。背だって高くなれる。作品を、キャラクターを通して、変幻自在。そうして幼いころに魅了されてからというもの、「声優」という職業に憧れを抱いていました。

 しかし、「母が『声優』だから自分も」というのは、子供ながらに許せなかったのです。

 友達との会話や文集などで記した将来の夢は「マンガ家」「ケーキ屋さん」「イルカの調教師」……。表立って話していた夢は、いろいろとあったけれど、そのかたわらで、ずっとあきらめきれなかったのは、「声優」という職業で。

 そんなある日。小学校3年生のころ。学校帰りに、友達の家に遊びに行った時のことでした。友達のお姉ちゃんの部屋に積まれた大量の「週刊少年ジャンプ」を見つけたのです。そこで偶然にも手に取った号が、当時の14号。「HUNTER×HUNTER」の連載が始まった号でした。今でも鮮明に覚えている、そのジャンプの表紙。元気いっぱいに両手をグーにして、今にも飛び出してきそうな、ゴンの姿。

 その日は、なにもかもが衝撃的で、日が暮れるまで、過去のジャンプを読みふけり、友達と友達のお姉ちゃん、友達のお姉ちゃんの友達も交えて、「HUNTER×HUNTER」のストーリーやキャラクターの魅力について語り合ったのです。

 この日を境に、私はお使いに行った時のおつりを貯めて、自分のお小遣いで初めて「HUNTER×HUNTER」のコミックスを買いました。これが私と「HUNTER×HUNTER」の出会いです。

 ジャンプを手にしたのも、「HUNTER×HUNTER」に出会ったのも、そのときが初めて。今の話に出てきた友達も、友達のお姉ちゃんも、友達のお姉ちゃんの友達も、もちろん私も女の子でしたが、当時私の周りでは、“少年誌”を読んでいた女の子が多かったんです。

 「HUNTER×HUNTER」を通じて、その友達との仲はより深まりました。彼女は、アニメやラジオ、ミュージカル、当時の「HUNTER×HUNTER」を共に歩んできた親友。私の夢のきっかけをくれた大切な存在です。

 その親友とは、小学校の時、一緒にスキューバーダイビングのライセンスを取りに行ったのですが、彼女は今、そのことをきっかけに、海の生き物たちに関わる仕事をしているんだそうです。互いが互いに夢のきっかけになれたことは、私の誇りです!

 そうして、「HUNTER×HUNTER」の世界に憧れて、“トモダチ”に背中を押され、自分の目標を見つけて、私は今、ここにいます。

 これが、私の「はじめて」と「はじまり」です。

 当時の私には想像し得なかった今。どこで、何がきっかけとなって、今後どう影響を及ぼすのかは、きっと誰にも分かりません。しかし「HUNTER×HUNTER」は、私の人生を変えてくれた作品であることに違いはないのです。

 日々、作品にたずさわらせていただくことによって、事務所にお便りをいただいたり、ツイッターで交流をさせていただく中で、

 「この作品に元気をもらっています!」

 「その作品を通じて友達と仲良くなりました!」

 「あの作品をきっかけに声優を目指しはじめました!」

という声が多く、自分がそうだったように、今度は私が、皆さんのきっかけに、少しでもなれていたなら幸いです。

 こうした経験から、作品にたずさわらせていただくことは、誰かの人生に関わらせていただくことなのだなと思うようになりました。

 それと同時に、すべての人への感謝を忘れずに。

 は!

 ということは、このコラムを書くことで、読んでくださる方の時間をいただくということになるわけです。みなさん、今後とも温かい眼差しで見守っていただければと思います。どうぞよろしくお願い致します。

 あ! そうだ!

 このコラムのコンセプトは、親子の交換日記なのでした。最後は、母であるに“潘さん”に言葉を投げかけて、締めくくろうと思います。

 親子で交換日記するのは小学校ぶりになるのでしょうか。交換日記を連絡帳がわりに使っていた記憶があります。日々思っていることを、こうして母に見てもらう機会も、なかなかないことだと思いながら、コラムの反省は、ここではなく家でお願いできるとうれしいです。

 なんちゃって。

 ◇プロフィル

 潘めぐみ(はん・めぐみ)=1989年、東京都生まれ。2008年に映画「櫻の園」の一般公募オーディションに合格し女優デビュー。ドラマ「オトメン−乙男−」のほか舞台などにも出演。11年に、100人を超えるオーディションをへて、アニメ「HUNTER×HUNTER」の主人公・ゴン役に抜てきされた。アニメ「ジュエルペット ハッピネス」の月影ちあり役、ゲーム「The Last of Us」のエリー役などを好演し注目を集めている。

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