イルミネーションがきらめくクリスマスシーズンの東京駅周辺を背景に、10人の男女が織りなす六つの物語からなる「すべては君に逢えたから」が11月22日から全国で公開中だ。その中のパート「二分の一成人式」に出演した時任三郎さん。不治の病のため新幹線の運転士をやめ、残された時間を家族と過ごす一家の父親を熱演している。時任さんに話を聞いた。(上村恭子/毎日新聞デジタル)
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−−時任さんが演じた正行は余命いくばくもないという父親という役。演じる上で難しかったところは? どんなところに気を使って演じましたか?
自分の中で病気のイメージを作っていくことは、作り過ぎてしまうと精神的にかなりきついと思いました。役の正行はつらい気持ちを隠して人を思いやるところまで到達している精神力の強い人なので、人間的な温かさも表現しなくてはならず、難しい役でした。
−−医師から余命を告げられるシーンや病院に行くシーンなどはないのですが、どう役作りをしていったのでしょうか。
シーンがない分、イマジネーションが必要でした。演じる側としては、根底には余命いくばくもないというヘビーな部分を作っていかなくてはなりません。でもつらいシーンが具体的に設定されていたら、演じていてそっちに引っ張られてしまったと思います。僕のパートは映画の中の1パート。映画全体としては思いやりと温かさがメインの作品なので、病院でのシーンがなかったのは、脚本・演出上、正解だと思いました。
−−体形を変えたり、メークなどの工夫もしましたか?
病気っぽいメークをしてしまうと、そこが強調されてしまうのでメークで病を表現するのは難しい。今回はノーメークで臨みました。ちょうどやせていた時期だったので、あえて体重を落としたりという役作りをする必要はなかったです。
−−10歳の息子に自分が不治の病であることを告げるシーンがありましたが、正行の選択をどう思いましたか?
10歳の息子に告げるのはつらいと思いました。でも、もし自分の身に起こったとしても告げたいと思いますね。告げた上で何ができるのかは、そのときになってみないと分からないですが、今の自分としては告げたいという願望がある。残された時間をどう過ごすのか、家族と一緒に考えたいという正行の気持ちはよく分かりますから。
−−食卓を囲むシーンなど一家の温かい雰囲気が見どころです。妻役の大塚寧々さん、息子役の山崎竜太郎君ととても息が合っていました。現場の雰囲気はいかがでしたか? 山崎君とはどんなふうにやりとりをしましたか?
本木(克英)監督の現場はすごくスムーズで、役者側の意見もよく聞いてくれました。家族の温かい雰囲気をかもし出すようにと、現場も和やかで温かかったです。
息子役の竜太郎君は素直ないい子で、撮影の合間もよく2人で話して盛り上がりました。たとえばハエが飛んできたとき、ハエの気持ちを僕が表現しただけで、すごくウケてくれて(笑い)。2人で作り上げていった空気感が、父と息子として映像に出せたと思っています。
−−新幹線でのシーンの感想は? また、東京駅やクリスマスにまつわる思い出はありますか?
新幹線の運転席に座ったのは初めての経験でした。左右の視界は広いのに、上下(天地)は意外とせまいと感じました。実際に運転士の方に所作を教えてもらって演じました。東京駅にまつわる思い出は思いあたりませんが、クリスマスケーキの思い出はあります。うちはそんなに裕福ではなかったので、子どものころクリスマスケーキ……イチゴの乗ったやつですね、それを買ってもらったこと自体がうれしかったです。
−−そのほかのパートも含めて、いろんな愛が出てくるロマンチックな映画ですね。時任さんが思う今作の魅力をお聞かせください。
僕も観客として見たい映画であることは確かです。不必要なシーンがなく、最小限のシーンがからみ合って最後まで飽きずに見ることができる作品ではないでしょうか。どんな世代の方にも人生の中でたどってきた途上に「恋愛」の思い出はあるかと思います。この映画のテーマは「相手を気遣うこと」や「思いやりの大切さ」だと僕は思います。現在進行形の恋愛、過去の恋愛、さまざまな恋愛模様が出てきます。相手を思いやる温かさを僕のパートからも感じてもらえると思っています。
<プロフィル>
1958年生まれ。80年、ロックミュージカル「HAIR」で俳優デビューし、翌81年の「虹色の森」でドラマデビュー。83年、「俺っちのウェディング」で映画デビューを果たした。99年から4年間、子育てのためにニュージーランドに移住。2003年に帰国し、活動を再開。帰国後はドラマ「Dr.コトー診療所」シリーズ、映画とドラマ「海猿」シリーズ、連続ドラマ「救命病棟24時」、映画「劇場版タイムスクープハンター 安土城最後の1日」などに出演。
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