実際にあった若者による有名人宅の窃盗事件を元に描いた映画「ブリングリング」が公開中だ。窃盗団の1人に「ハリー・ポッター」シリーズで知られるエマ・ワトソンさんがふんし、実際に被害に遭ったパリス・ヒルトンさんも“ゲスト出演”している。メガホンをとったのは、前作「SOMEWHERE」(2010年)がベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞に輝いたソフィア・コッポラ監督。ストーリーや映像はもとより音楽にもこだわりをみせるコッポラ監督らしく、今作もシャープで、ときにポップな映像使いと、若者の心象風景(問題児たちの美しくもなんともないものではあるが)にマッチした音楽を選び、軽快に描いていく。
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米ロサンゼルスの高級住宅地に建つセレブ宅に若者5人が侵入。洋服などのブランド品や現金などを盗み出し、総額300万ドル(約3億960万円)相当の被害を出した。「ブリング・リング事件」と呼ばれたその事件が、どのような経緯で起き、またその後、犯人たちがどうなったのかを映画は描いていく。
「ブリング・リング」とは、「きらきらしたやつら」の意味だという。08年から09年にかけて実際にあった事件を題材にしているとはいえ、実際にこんなことがあったとは驚きだ。犯人たち(実際は6人だが映画では5人にしぼられている)には罪を犯しているという自覚がまるでなく、彼らにとって侵入と窃盗は単なる遊び、あるいはゲームのような感覚でしかない。その姿は、日本でも最近問題になった、飲食店のアルバイト店員によるツイッターでの画像投稿などの不適切な行為と通じるものがある。その一方で、侵入されるセレブ宅の無防備さにも驚く。彼らの住まいは、おそらくゲートによって人の出入りが制限され、警備員が常駐しているとはいえ、その無用心さは庶民には考え難いレベルのものだ。
犯人たちの行為はとがめられて当然だが、しかしそうさせる素地を作ったゴシップ雑誌やリアリティー番組といったメディアや周囲の大人のあり方にも問題があるのではと考えられる。その点で今作は、愚かな若者の犯罪記録ではあるが、それを生んだ社会に反省を促す作品ともいえそうだ。14日から渋谷シネクイント(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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