超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、WiiUの不振やニンテンドー3DSの好調ぶりに加え、広がるゲーム市場の実態について語ります。
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2013年の国内家庭用ゲーム市場は、前年と比べて9.0%減の4089億円だった(数字はファミ通調べ)。内訳はハードが前年比12.7%減の1553億円、ソフトが同6.5%減の2536億円。海外で11月に発売された新型ゲーム機のプレイステーション(PS)4とXbox ONEの国内発売が14年に延期されたことと、WiiUの不振が響いたようにみえるが、話はそう単純ではない。
WiiUは12年12月に発売後の56週間で累計約152万台を販売したが、前世代機のWiiは同じ56週間で約446万台を販売しており、約3分の1にとどまった。ソフトでも、13年10月に発売された「Wii Party U」(任天堂)が51万本で、ローンチ(WiiU発売と同時)タイトルの「New スーパーマリオブラザーズ U」の年間58万本(任天堂、累計96万本)を超えられなかった。
一方で携帯ゲーム機ではニンテンドー3DSの年間販売数は約439万台と快調で、ライバル機「PSVita」の約119万台の4倍ほどとなった。ソフトランキングでも1位の「ポケットモンスター X・Y」(ポケモン、397万本)が400万本に迫り、2位の「モンスターハンター4」(カプコン、329万本)も300万本超えとなり、ソフトの上位7位までを3DS用ソフトが独占した。
つまり、「日本の市場は携帯ゲーム機に偏っており、据え置き型ゲーム機離れが進む」という結果が明確で、「ニンテンドー3DS頼みで、WiiUが失速する任天堂」「シリーズ化と二極化が進み、オリジナルのヒットを生み出せないソフト業界」となるわけだ。そこは間違っていないが、もう少し視野を広げて見る必要がある。
もともとハード市場はゲーム機のライフサイクルに左右され、これまでも年によって増減がみられた。より注目すべきはソフト市場なのだが、この数字にはダウンロード配信ソフトや、追加アイテム販売などの、デジタル流通分が含まれていない。少ない額ともされるが、無視できない数値が出ている報告もある中で、実態が分かりにくい。今後は新たな集計の仕組みが必要となる。
またソーシャルゲームと家庭用ゲームの境界も薄まりつつある。スマホやタブレットが普及し、モバイル端末の性能向上で、家庭用ゲーム並みのリッチな映像のソーシャルゲームが登場しており、今後はソーシャルゲームの要素を持つ家庭用ゲームの増加も見込まれる。ゲームエイジ総研によると、12年のソーシャルゲーム市場は約4351億円で、家庭用ゲームソフト市場を上回っているが、両者でゲームを供給する企業も少なくない。開発現場では一足先に融合が進んでいる。
日本は家庭用ゲーム、(モバイル)ソーシャルゲーム、PCオンラインゲーム、アーケードゲームでそれぞれ市場があり、新作ゲームが定期的にリリースされている世界的にもめずらしい市場だ。しかし、市場全体を示す統計データがない。こうした中で、対前年比9.0%減という数字が独り歩きするのは、あまり好ましくない。いうなればゲーム業界の急速な変化に、物さしが合わなくなっているのだ。どのように指標化できるか、知恵の出しどころだろう。
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