注目映画紹介:「同窓生」 BIGBANGのT.O.P単独初主演作 暗殺者になった少年の苦悩

「同窓生」の一場面 (C)2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX INC.AND THE LAMP CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.
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「同窓生」の一場面 (C)2013 SHOWBOX/MEDIAPLEX INC.AND THE LAMP CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.

 韓国の人気グループ「BIGBANG」のT.O.Pさんの単独初主演作「同窓生」が公開中だ。T.O.Pさんにとって「戦火の中へ」(2010年)以来、3年ぶりの映画出演となった。たった一人の家族である妹を助けるために北朝鮮の工作員として暗殺者になった少年の苦悩を、アクションも含めて華々しく演じている。「あぶない奴ら ~TWO GUYS~」(2004年)のパク・ホンス監督が手掛けた。

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 ミョンフン(T.O.Pさん)と妹ヘイン(キム・ユジョンさん)は、北朝鮮の工作員だった父親が殺害されたことから、収容所に監禁されていた。「妹を助けたければ工作員になれ」と将校に命令され、必ず迎えに行くと約束しながらミョンフンは韓国に入る。養父母に引き取られて高校生として潜伏。同じクラスで、妹と同じ名のイ・ヘイン(ハン・イェリさん)と出会ったミョンフン。イジメられているへインを放っておけず、仲よくなるうちに、10代らしい明るさを取り戻す。しかし、そのころ、工作員同士でもめごとが発生。さらに危険な暗殺指令が下される……というストーリー。

 主人公は、スパイにならざるを得なかった過酷な運命の19歳。彼が妹を思う気持ちが全編を貫かれ、冷徹な暗殺シーンがヒリヒリとした痛みに変わる。迫力あるアクションも多く、爆発も派手で映画的に楽しめる。時代背景、物語の骨格がしっかりと作られており、中でも悪者を含めて登場人物が魅力的だ。食堂のワケありのおばあさん、ミョンフンを追う刑事は人情味あふれるキャラクターとして描かれる。一方で容赦なく人を使い捨てる工作員の世界があり、「情」と「非情」を交互に見せられる。追い込まれたミョンフンの感情があらわになっていくさまに、心をかきむしられるほど。「戦火の中へ」で、学徒兵を熱演したT.O.Pさんは、今回も命がけの役柄で、言葉少なに内面の葛藤を表現している。子犬のような純粋な目つきから鋭い目つきへの変化に注目を。妹への愛と、自分と同じように孤独を抱える同窓生への友情。彼を支えていたものが交錯するシーンは、悲しくも温かく美しい。25日からTOHOシネマズ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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