注目映画紹介:「アニメミライ2014」 若手アニメーター育成を目的に作られた珠玉の短編4作

「黒の栖 クロノス」 (C)恩田尚之/Beyond C./文化庁 アニメミライ2014
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「黒の栖 クロノス」 (C)恩田尚之/Beyond C./文化庁 アニメミライ2014

 今回で4回目を迎える、文化庁の若手アニメーター育成事業の参加作品を上映する「アニメミライ2014」が公開中だ。「アニメミライ」は、文化庁が2010年から実施している事業で、アニメの振興と若手アニメーターの育成を目的としたプロジェクト。毎年四つのスタジオの作品が選ばれ、今年度は「ドラえもん」などで知られるシンエイ動画の「パロルのみらい島」(今井一暁監督)、「ソードアート・オンライン」などで知られるA−1 Picturesによる「大きい1年生と小さな2年生」(渡辺歩監督)、「ベルセルク 黄金時代篇」3部作などで知られるSTUDIO4℃の「黒の栖−クロノス−」(恩田尚之監督)、「キルラキル」などで知られるウルトラスーパーピクチャーズによる「アルモニ」(吉浦康裕監督)が公開された。

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 「パロルのみらい島」は、人間に知られていない不思議な動物たちが暮らす島の子どもたちが、おきてを破り人間の世界に行き、思わぬ事態に直面する……という物語。「大きい1年生と小さな2年生」は、体は大きいが泣き虫な1年生のまさやは、背は小さいがしっかり者の2年生あきよのようになりたいと思う。泣いているあきよを元気づけるため、花を探しに1人で遠出するまさやだったが……という展開。「黒の栖−クロノス−」は、魂を連れ去る「黒い存在」が見える不思議な力を持った高校生の物語。「アルモニ」は気の合う友人と居心地のいい場所にとどまっていた2年1組の本城彰男は、遠くから眺めているだけの存在だった真境名樹里の世界に触れることになり……という4本立て。

 アニメ業界の若手を育成するという目的の事業への参加作品だけあり、4作品ともいずれ劣らぬ秀作ぞろいだ。世界観や作画などが緻密に作り上げられており、一度見るだけではもの足りず何度でも見たくなる。出演している声優陣も豪華な顔ぶれで、レベルの高い演技で各作品の世界を十分に楽しませてくれる。個人的には「鉄コン筋クリート」をはじめ独特の作画や演出などで異彩を放つSTUDIO4℃制作で、「機動戦士Zガンダム」などにも参加し、今作が初監督作となる恩田監督「黒の栖−クロノス−」が設定・物語ともに好みだった。恩田監督がキャラクター原案を担当しながらも珍しくシンプルな画風で描かれたオカルトものは、生死について謎をちりばめつつ、見終わった後にどこか希望を感じさせる作品だ。4作品はバラバラに制作されテーマやストーリーも異なるが、どこか似たような雰囲気を漂わせているところに現在のアニメのトレンドが見え隠れして面白い。TOHO シネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国13館で14日まで公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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