東日本大震災:マンガで“支援”続く 売り上げ寄付の作品も

事故後の福島第1原発で作業員として働いた経験をつづった竜田一人さんのマンガ「いちえふ 福島第一原子力発電所案内記」
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事故後の福島第1原発で作業員として働いた経験をつづった竜田一人さんのマンガ「いちえふ 福島第一原子力発電所案内記」

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から3年。マンガ界でも震災をテーマにした作品が定期的に発表されている。震災から1年目は人の絆を重視した作品が目に付いたが、昨年は福島原発の内情に切り込んだルポマンガも登場した。震災直後は被災地への応援メッセージをホームページに掲載して、“心の支援”をしたマンガ家たちだが、その取り組みは今も続いている。

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 ◇福島の現実に切り込む

 2013年10月から講談社の週刊マンガ誌「モーニング」と電子書籍アプリ「Dモーニング」で、事故後の福島第1原発で作業員として働いた経験をつづったルポマンガ「いちえふ 福島第一原子力発電所案内記」の連載がスタートした。作者の竜田一人(たつた・かずと)さんは、大震災の後“1F(いちえふ)”と呼ばれる福島第1原発で作業員として働いた経緯を生かして執筆しており、大手メディアにもない現場の空気感を描いたことが話題となり、多くのメディアに取り上げられている。

 雁屋哲さん原作、花咲アキラさん作画の人気マンガ「美味しんぼ」も2013年1月から、小学館の週刊マンガ誌「ビッグコミックスピリッツ」で、新シリーズ「福島の真実」編と題して、福島の地を取り上げている。新シリーズでは、原発事故が発生した福島の“真実”を確かめるため、ライバルの帝都新聞と共同で取材に当たる……という内容だ。

 ◇人々の絆を大切に

 震災からまだ日の浅い時期には被災者に寄り添うマンガが目立った。岩手県の三陸鉄道(さんてつ)を舞台に、傷ついた人々が復興に向け奮闘する姿を描いた吉本浩二さんのドキュメンタリーマンガ「さんてつ 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録」(新潮社)は11年10月から12年2月まで連載された。関係者を中心に現地取材を行い、地震発生時の混乱や津波で建物や船などが流される様子、その後の町の風景、立ち向かう人々の姿を描いている。

 東北出身のマンガ家が描いた作品もある。福島第1原子力発電所の事故後、福島県出身のさまざまな家族を取材した井上きみどりさんのマンガ「ふくしまノート」(竹書房)だ。仙台市に住む井上さんが、隣の県に住む住人として、福島の人々と子供たちの「今」を伝えたい……という気持ちで福島県内の家族を取材してマンガにした。震災後の「福島のいま」をありのまま伝え、作者の主観はいっさい入れない……というスタンスで描かれた。

 ◇売り上げは義援金に

 人気マンガ「はじめの一歩」で知られる森川ジョージさんが描いた、23年ぶりの新連載「会いにいくよ」も話題になった。絵本作家の「のぶみ」さんが、震災直後の11年3月末に宮城県石巻市にボランティアに行った体験をつづったエッセーマンガ「上を向いて歩こう!」が原作で、週刊連載を持つ森川さんが多忙な合間を縫って執筆。森川さんは、今月7日に発売されたコミックスの初版の売り上げを被災地への義援金に充てる意思を示している。

 マンガの支援企画もある。小学館が発行するマンガ誌「スピリッツ」「サンデー」「ゲッサン」の3誌で、東日本大震災の復興支援プロジェクト「ヒーローズ・カムバック」を展開。「機動警察パトレイバー」などで知られるゆうきまさみさんの「究極超人あ~る」や、「うる星やつら」「めぞん一刻」の高橋留美子さんの代表作の一つ「犬夜叉」などの読み切りを掲載。コミックス化の際に必要経費を除くすべての収益を被災地に寄付するプロジェクトで、単行本は11万部が発行され、寄付金は4000万円に達した。

 集英社と小学館は、ホームページのトップで今も被災者の支援募金を受け付けている。マンガの被災地支援は今後も続きそうだ。

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