名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
近い未来、アニメはインターネットを抜きにして成り立たない日が来るのではないか。そう予感させる勢いが「ネット発原作のアニメ」にはある。人気アニメ「ソードアート・オンライン」は、もともとは作者がアマチュア時代にウェブサイトに連載していた小説で、4月放送の「魔法科高校の劣等生」も同様に、元は小説投稿サイトに掲載されていた。同じく4月放送の「メカクシティアクターズ」もニコニコ動画で絶大な支持を集めた企画「カゲロウプロジェクト」や、それを基にしたライトノベル「カゲロウデイズ」が原作となる。なぜ、ネット発の作品が脚光を集めているのか、その理由を探った。
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ネット発の原作が存在感を発揮している理由は、「フリーミアム」と呼ばれるコンテンツ市場の動きがある。ビジネスモデルは基本的なサービスは無料で、追加の機能やオプションには課金する。スマートフォン用のゲームも、基本無料・アイテム課金の「F2P(Free to Play)」という形でシェアを伸ばしている。無料で読めるウェブ小説のヒット作は出版社から声がかかり、商業デビューを果たす流れが確立している。
有料の出版につきまとうのは「読まれなければ内容が分かってもらえない」ということ。電子書籍の中には一部の内容を公開する「立ち読み」を提供しているものもあるが、紙の本は新聞・ネットの書評や口コミの助けを待つしかなかった。作品にとって最大のハードルは「有名になること」だが、そこが先にクリアされるわけだ。商業出版される際は、加筆・修正やプロットの見直しなどが行われるため、読者も代金を支払う意味がある。さらに、「すでに売れているヒット作」は、紙媒体しかなじみのない「ネットの外にいる人達」にも訴求力が見込める。
そしてネットは書籍におけるアンケートや、“編集者”の立場も兼ねている。小説投稿サイトの人気ランキングや読者の反応は「どのような作品が望まれているか」という生の情報を作者に与える。もちろん弱点もあり、特定のジャンルに偏る傾向もあるが、厳しい競争原理がクオリティーを磨き上げる面もある。
作品の多くは、オンラインゲームや「経済学など現代の知識を活用した世界の変革」といった現代的な要素を含みつつも、基本的には中世的なファンタジー世界を舞台としており、従来のラノベと親和性が高い。その代わり、主な読者の年齢層もラノベと同様に20代後半~30代の男性という印象だ。
それを補完するかのように、10~20代前半や女子中高生の心をとらえているのが「ボカロ小説」だ。ボカロとは音声合成ソフト「ボーカロイド(ボカロ)」による「ボカロ曲」のイメージを小説にしたもの。その代表格が、冒頭であげた「メカクシティアクターズ」の関連作品「カゲロウデイズ」だろう。若い世代には絶大な支持があり、関連書籍で550万部という驚異的な数字をたたき出している。
ボカロ曲の作者自らが手がけるボカロ小説は、ネット上でのスピード感あるコラボによるところも大きい。まず、じん(自然の敵P)さんがボカロ曲「人造エネミー」を発表し、それにイラストレーターや動画制作者が参加……といったコラボを通じてイメージがふくらんだ末に、小説「カゲロウデイズ」や、それを含むマルチメディアプロジェクト「カゲロウプロジェクト」が存在している。ネットが発表の場のみならずコラボ、創作の場となっている。
テレビアニメ「メカクシティアクターズ」も、そういった「ネット発」の成果の上にある。原作者のじんさんがシナリオを手がけ、キャラクター原案もネットで熱狂を呼んだPVと同じだ。ネットで若い世代向けにブレークした同作が、テレビアニメで同様にブレークできるのか。今回のアニメ化は、テキストのみならず、ネット生まれのビジュアルや楽曲がアニメの将来を変える可能性を秘めている。(多根清史/アニメ評論家)
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2024年12月22日 19:00時点
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