巨匠アンジェイ・ワイダ監督の最新作「ワレサ 連帯の男」が公開中だ。東欧の民主化から25年。グダニスク・レーニン造船所における労働者をテーマに描いた「大理石の男」(1977年)、「鉄の男」(81年)につながる作品となった。独立自主管理労組「連帯」の初代委員長でノーベル平和賞受賞者、元ポーランド大統領のレフ・ワレサの闘いと家族の日々を、実際の映像を盛り込みながら生き生きと映し出している。
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80年代初頭。レーニン造船所で電気工として働くワレサ(ロベルト・ビェンツキェビチさん)の家に、イタリアから著名な女性ジャーナリスト(マリア・ロザリア・オマジオさん)がインタビューにやって来た。これまでたどった道のりを語り出すワレサ。ワレサは妻のダヌタ(アグニェシュカ・グロホフスカさん)、子どもたちとともに、グダニスクのアパートに暮らしていた。70年代、物価高騰に抗議する労働者を政府が武力鎮圧した食糧暴動をきっかけに、普通の労働者だったワレサは労働闘争にかかわっていく。リーダーとしての使命を感じたワレサ。家族との生活は一変。やがて、レーニン造船所のストライキ指導部のトップに立ち、「連帯」委員長として反体制の象徴となる。しかし、81年の戒厳令布告直後、ワレサは軟禁されてしまう……という展開。
映画は臨場感あふれる映像と80年代ロックミュージックに彩られ、ワイダ監督がもうすぐ90歳だということを忘れるほど、エネルギッシュだ。語られるのは現存する歴史的人物の英雄的な姿というよりも、一人の人間像。歴史のうねりの中にいるワレサの運動を軸に、ポーランド民主化への民衆の闘いを見せていく。アーカイブ映像がうまく混ざり合い、群衆の盛り上がりが肌で感じられる。労働者と政府との橋渡し役として、自分の役割をこなしていくワレサ。妻ダヌタらワレサの家庭での表情も丁寧に描かれている。子育てや家事に従事し、夫に不満をぶつける姿もあって、ワレサがちょっとタジタジになっているのも面白い。遠い東欧の話が身近に感じられ、しっかりと夫を支える勇敢なダヌタに共感を覚える。電気工だった夫が世界から注目される人物になっていくさまを、どんな思いで見つめていたのだろう。ダヌタは出国を許されないワレサの代わりにノーベル平和賞授賞式に出席した。ちなみに彼女の自伝は本国でベストセラーとなっているという。5日から岩波ホール(東京都千代田区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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