ボーカルユニット“√5(ルートファイブ)”のメンバーとしても活動するkoma’n(こまん)さんが、自身のレーベル「Pastel Penguin」を設立。第1弾として、ソロミニアルバム「Pastel Penguin」をリリースした。アルバムについて、昨年末に旅したベネチアなどでの経験や妄想好きの話などを聞いた。
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−−自身のレーベルを設立したのは、どういう経緯ですか?
今までは、自分一人で制作したCDをコミックマーケットなどを中心に販売していたんですが、そこでやれることに限界を感じてしまって。メジャーなら他のアーティストと共演もできるし、自分の音楽の幅も広がると思ったんです。でも、そのメジャーのレーベルの色に染められてしまうのも違うと思って、100%自分色の音楽を作るためにレーベルを作りました。
−−「Pastel Penguin」というレーベル名が可愛くてkoma’nさんらしいですね。
パステルカラーが好きだし、僕自身のキャラクターも決してビビッドカラーではないと思うんです。それにペンギンは、コロッとしたフォルムが何ともいえず、赤ちゃんみたいで可愛くて大好きだし。それで「Pastel Penguin」と付けました。“パスペン”って略せるのも、語感的にいいなって思っています。
−−そのレーベルからのリリース第1弾となるミニアルバム「Pastel Penguin」は、どんなコンセプトで作ったのですか?
僕自身いろいろなジャンルの音楽が好きなんですが……最近の若いみなさんは、流行の音楽や好きな音楽しか聴かない方が多いと聞いたので、こういう音楽もあるんだよとか、音楽ってこんなに楽しいんだよと伝えられるものになったらいいなって思いました。リリースに先駆けて動画サイトなどで聴いてもらったときには、「こういう曲は初めて聴いたけど、すごく好きになった」など言ってもらえて、すごくうれしかったです。この作品をきっかけにして、もっともっといろいろな音楽に興味を持って聴いてくれるようになったらうれしいです。
−−全7曲中、ボカロ曲のカバーを除いて、6曲で作詞・作曲と編曲もやっていますね。
今回はベースやドラムなどの楽器演奏をプロの方にお願いしたので、指示を出す作業もあって大変といえば大変でしたけど。楽しくて、まったく苦とは感じませんでしたね。
−−楽曲制作のエピソードをいくつかうかがいたいのですが。
今回は7曲ということで“虹”にかけて、各曲ごとにイメージカラーがあって、歌詞にはその色が隠されています。たとえば「赤坂ミッドナイト物語’14」という曲は、イメージカラーはイエローで。もともと和メロのJ−POP歌謡で、バンドサウンドだったんです。それが、スタッフさんから「もっと昭和のトレンディードラマみたいな曲調に振り切ってもいいんじゃないか」ってアイデアをいただいて。当時のドラマを見まくって、研究して作りました。
「つきなみ行進曲」という曲はグリーン。吹奏楽の楽器を数多く使っていて、和音を考えたり、楽譜を書くのも全部一人でやりました。こういう曲は作ったことがなかったので大変でしたが、その分、すごく楽しかったです。両親がオーケストラ経験者だったので、アドバイスをもらうことができて、すごく助かりましたね。
−−ボカロ曲のカバー「からくりピエロ Jazz ver.」では、お父さんとデュエットしていますが、お父さんは歌がすごくお上手で驚きました。
父は昔、バンドでプロを目指したこともあったみたいです。そういう父の影響も今の僕には少なからずとあると思うし、レコーディング当日が父の誕生日だったので、日ごろの感謝も込めて参加してもらいました。アットホームで楽しい感じが伝わったらうれしいです。
−−歌詞は、どれも物語的で面白いですね。
誰が読んでも分かりやすいのが、いいなと思って。「らくがきチェリー」の主人公の女の子が、何年かたった姿を「Dareder!!」で描いていたりとか、曲と曲が時系列でつながっているものもありますね。「らくがきチェリー」の歌詞は、居酒屋で何かの打ち上げがあったとき、部屋のすみっこで一人で妄想して、ニヤニヤしながら書きました。恋愛の歌詞は、完全に妄想です。本当は実体験の方がいいんでしょうけど(笑い)。
−−koma’nさんは妄想がお好きですよね。
妄想もそうだし、寝ているときに見る夢も好きですよ。夢は自分の好きなことが自由にできるし、女の子ともいい感じになれたりするし。それに夢って、メンタルに左右されるんで、調子がよかった日は“よし夢見るぞ!”って感じで、ワクワクしながら寝るんですよ。夢で曲や歌詞が浮かぶときもあって、寝ながら夢で曲を作って、起きたらできていたなんてこともあります。僕の場合、夢の内容をちゃんと覚えているので、寝ている間のことも経験として数えるなら、人の倍くらい経験を積んでるともいえるんじゃないかと。そういう意味では、夢を見るのも悪くないなって思います(笑い)。
−−話は変わりますが、昨年末にイタリアのベネチアに行ったそうですが、いかがでしたか?
今回の制作に入る前にお休みを少しいただいて、ベネチア、フィレンツェ、ローマ、ピサに行きました。アルバム制作に向けて何かインスピレーションをもらえたらと思ったんです。見る風景すべてが芸術的といいますか……路上で、たくさんの人が絵を描いていたり、楽器を弾いていたりするのが日常で、身近に多くの芸術と触れ合ってすごく刺激をもらいました。1曲目の「Iridescence Party」という曲では、イントロでアコーディオンを使っています。それは、ベネチアの街中で楽器を弾いているおじいさんと会ったことで、ひらめいたんです。一人でポツンと弾いているだけなのに味があるというか、人生を感じさせるというか。そういう音楽って、すごいなって感銘を受けたんです。アコーディオンは触ったことがなかったけれど、なんだかすごく懐かしい気がして、不思議な魅力がありましたね。
−−最後に、koma’nさんの音楽に対する気持ちを教えてください。
僕は、本当にいろいろな音楽が好きで、もともとクラシックピアノを習っていたし、小学校では吹奏楽でトランペットをやっていて、中学・高校ではジャズをよく聴いていました。曲作りは、高校のころからガレージバンドというソフトで作るようになったんですけど、最初はインストの曲ばかりでしたね。ニコニコ動画に曲を投稿するようになったのも、投稿するのはタダだし、本当に興味本位でした。それが本気になっていったのは高校卒業間際で、自分のやりたいことは何かを考えたら、やっぱり音楽しかないと思ったんです。それで、どんどん投稿していくうちに、イベントなどにも呼んでもらえるようになって……。今あるのは、純粋に僕の音楽をたくさんの人に伝えたいという気持ちと、制作意欲だけです。そこは昔から、ほとんど変わっていません。デビューして、モテたいとかキャーキャー言われたいっていう気持ちは、不思議と今も昔もまったくないんですよ。っていうか、実際モテてないですしね(苦笑)。
<プロフィル>
1992年6月16日生まれ。2000年からニコニコ動画に投稿を始め、同サイトでは歌い手、ピアノ演奏、ボカロPと多岐にわたり活躍。動画総再生回数は900万回以上を記録する。11年に歌い手のユニット「√5」のメンバーとしてデビュー。ソロとしては、ピアノをメインにしたアルバム「Melodic」シリーズ、オルゴールアレンジアルバム「切ないオルゴール」などリリース。√5の作品や√5のメンバーの蛇足さんの作品に楽曲提供もしている。ファーストライブ「なないろ」を6日に新宿FACE(東京都新宿区)で開催。18日にはamHALL(大阪市北区)で開催する。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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