ニード・フォー・スピード:スコット・ワウ監督に聞く「運転席に乗って体感できる楽しみを与えたい」

(C)2014 Dream Works ll.Distribution Co.All Rights Reserved.
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 スポーツカーが公道でレースを繰り広げる人気レースゲームを映画化した「ニード・フォー・スピード」が公開中だ。すご腕のメカニックで天才的なドライビングテクニックも併せ持つトビー(アーロン・ポールさん)は、親友を死に追いやった上に無実の罪で自分を陥れたディーノ(ドミニク・クーパーさん)に復しゅうするため、公道でチューンアップしたスーパーカーを操り、速さを競うストリートレースに出場する。勝つためには手段を選ばないライバルたちやトビー逮捕に執念を燃やす警察に追われながら、トビーはゴールを目指す……という展開。スタントマン出身で、今作で斬新な映像を切り取ったスコット・ワウ監督に話を聞いた。

ウナギノボリ

 −−ヘリコプターを道路すれすれに飛ばすシーンの撮影のため、監督ご自身が実際にヘリに乗って撮影したと聞いて驚がくしました。やはりスタントマンである経験は、監督になった際も生きていますか?

 スタントマンの時代、ヘリコプターにつるされるなんてのは日常茶飯事だったので(笑い)、自分にとってはむしろ一番簡単だったといえるくらいで全然大したことない話だったんです。とにかく基本的には、自分の狙ったショットをカメラで、生のスタントで収めるためならどんなことでもする人間なので。だから自分がやった方が簡単だし、早いっていう部分があったんですね。やはりそうしたスタントマンとしての経験があるからこそ、撮れるショットや考えられるアングルがあるっていうのはやはり自分にとってのアドバンテージなんじゃないかなと思います。

 次に、普通の監督が体験したことのない状態とか出来事を私は経験しているので、特にアクションシーンを撮るときに、他の監督には思いつかないシーンというのが、自分のスタントマンとしての経験から実現できると思うのです。私はどちらかというとインタラクティブ(双方向)な映画というのを目指していて、観客が後部座席に乗ってゆっくりくつろいで見るのではなくて、自分自身が運転席に乗って、実際にスクリーンで車を飛ばしているような、体感という楽しみを観客に与えるためのアングルなどを追求したかったんです。

 −−今回味わった監督業の醍醐味(だいごみ)を教えてください。

 自分はなんといっても最高のストーリーテラーになりたいというのが一番の目標で、どんなストーリーを伝えるにしても、今まで誰も見たことがないような斬新で独特のやり方でストーリーを伝えるということをやりたい。

 最高に自分がクリエーティブになれる、クリエーティブさを試せるという意味では、やはりそれが監督としての一番の醍醐味なのではないかなと感じます。

 −−リアルなカーアクション映像を撮るにあたって、最も工夫したところはどのシーンでしょうか。撮影時のエピソードも教えてください。

 やはりなんといっても、崖から落ちる車をヘリコプターでつるして救出するシーンが自分でも最高にお気に入りのシーンで、誇らしく思っています。あのカメラワークで、あのアングルで、あんなシーンを撮った映画というのは今作以外ないと私は確信しています。そういった意味でも自慢のシーンです。もちろんコンピューターグラフィックス(CG)を一切使わずに全部リアルにやりました。製作側は当初、こんな危ないことは絶対にダメだと完全にNGということで、最初からビビッていて(笑い)……。「絶対にやりたい!」ということでかなり(製作側と)戦ってなんとか実現させました。

 −−今作を、「ワイルド・スピード」シリーズと比較する人も少なからずいるかと思います。そのことについてはどう思われますか? 「ワイルド・スピード」シリーズと今作の違い、今作ならではの魅力はどういったところでしょうか。

 まず、やっぱり決定的に違うのは、今作はビデオゲーム (はっきりいって史上最高のレーシングゲームだと思うのですが)をベースにしている点だと思います。そのスリルをそのまま映画化し、その上で1960~70年代の往年のカーアクションの名作「フレンチ・コネクション」「トランザム7000」にしろ「バニシング・ポイント」にしろ「ブリット」にしろ……そういう映画へのオマージュというか、そういった作品に回帰して、昔ながらの雰囲気を大切にした上でビデオゲームを映画化したというのが一番の魅力だし、「ワイルド・スピード」シリーズとは違うところだと思います。

 −−監督から見ると、「ワイルド・スピード」シリーズはそこまで過去のカーアクション映画へのオマージュ的な要素はないと感じるのでしょうか。

 もちろん、決して悪い映画ではないと思いますよ!  ただ「ワイルド・スピード」は単に痛快で楽しいだけで、言ってしまえば、実際あんまり中身がない。この映画はあくまでストーリーとキャラクター自体、そしてもちろん車自体が主人公ということで、その点が魅力だと思いますし、“リアルさ”というのが決定的に違うと思います。

 −−今後もスタントを続けていくのでしょうか、それとも監督業に専念してやっていくのでしょうか。

 私は2005年にスタントマン業は引退しているので、戻るつもりはありません。今後は監督一筋ということで考えています。スタントマンとしてはかなり長いキャリアを経験したので、もう十分かな。

 −−来日の経験は? あるなしにかかわらず、日本の印象と日本に向けてメッセージをお願いいたします。

 私は、行ったことがない国が一握りしかないのですが、残念ながら日本はそのうちの一つです。9.11のときに日本に行く予定で全部手配をしていたのですが、その週に9.11で国外に出られなくなってしまって。以来、結局行けていないんです。すごく行きたい国なのですが……。実は父親のフレッド・ウォーが朝鮮戦争のときに3年間沖縄の米軍基地に駐在していたんです。彼はスタントマンであると同時に曲芸師でもあり、エンターテインメントとしてサーカスをやった話など、日本の話は父からいろいろと聞いていたので、子供のころからすごく興味ありました。みんなすごく優しくて親切だし、ぜひ今度こそは行きたいと思っています。

 −−日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

 最高にスリリングな疾走感と、手に汗握る興奮を味わいたいのならば、この映画をお勧めします。ぜひ今作を劇場で体感してください!

 <プロフィル>

 1970年8月22日生まれ、ロサンゼルス出身。オリジナルのスパイダーマンを演じたフレッド・ワウさんの息子で、幼いころから製作現場に出入りするなど、映画が身近な存在だった。82年にスタントマンとなり、2005年に引退するまで150本以上の映画やテレビ番組に関わる。その間、マイケル・マン監督、スティーブン・スピルバーグ監督、オリバー・ストーン監督らの撮影現場で幅広い知識を身に着ける。製作者として「ステップ・イントゥ・リキッド」(03年)や「ダスト・トゥ・グローリー」(05年)などを手がけた。「ネイビーシールズ」(12年)で監督デビュー。今作では製作総指揮と監督、編集を兼ねている。

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