プレーンズ2:ガナウェイ監督&製作のバロンさんに聞く「命を懸けて戦うレスキュー隊にささげる」

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 2013年に公開されたディズニーの劇場版アニメーション「プレーンズ」の続編「プレーンズ2 ファイアー&レスキュー」が全国で公開中だ。前作で高所恐怖症を克服し、空の世界一周レースでチャンピオンになった農薬散布機のダスティ。ところが今作では、ギアボックスに致命的な損傷が見つかりレースに出られなくなってしまう。ショックを受けた彼が飛び込んだのは、消防レスキュー隊という新たな世界だった……。迫力満点のレースシーンが楽しめた前作から、救助活動にハラハラドキドキさせられるディザスター(災害)ムービーに様変わりした今作だが、その製作は、前作の製作開始直後から始まっていた。ボブス・ガナウェイ監督とプロデューサーのフェレル・バロンさんに話を聞いた。

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 「今回のストーリーの発端は、ダスティのモデルになっている農薬散布機が、実際に山火事の消火作業に使われていたという事実を知ったことなんだ。そこから、飛行機を見に行ったり、航空消防隊の基地を訪ねたりといったリサーチを重ね、そこで得た情報を基にストーリーを考えていった」と今作に約4年前から関わってきたガナウェイ監督は語る。

 入念なリサーチは、今作の製作総指揮を務めたジョン・ラセターさんが日ごろ唱えている「信ぴょう性のある世界」を作り出すことに不可欠であり、今作でも、そのとき仕入れた情報はストーリーに織り込まれた。たとえば、ダスティと消防レスキュー隊隊長のヘリコプターのブレードが、火で囲まれ逃げ道を失い坑道に逃げ込む場面。このときブレードは身をていしてダスティを火から守るのだが、それは米国の消防士たちの間でも伝説的逸話になっている1910年に起こった同様の出来事がヒントになっている。

 また、ダスティが訓練を受けるためにレスキュー隊基地に初めてやって来たときの様子も、リサーチでレスキュー隊基地を訪れたとき、バロンさんが目にしたことだという。当時のことを、バロンさんは「火災が起きていないときの彼らは、外でバーベキューをしたり、日光浴をしたり、大画面テレビで映画を見ていたりしていた。家庭菜園で野菜を育てている隊員もいた。実にのんびりと過ごしているんだ。でも、ひとたびサイレンが鳴り響くと、数分でパラシュートなどの複雑な装備をつけて出動していく。その切り替えの速さには、実に驚かされたよ」と振り返る。

 前作のレース中心のストーリーからディザスタームービーにジャンルを変えたことで、シリーズ作品が陥りがちな“マンネリ”の危険性は回避された。「それ相応のシチュエーションやキャラクターが必要になり、作品に新鮮味が加わるからね」とガナウェイ監督は語る。その一方で、「前作を見ていなくても、独立した作品として十分楽しめる」とバロンさんは補足する。

 今回、ダスティの新たな仲間として登場するのは、隊を率いるタフで厳しいベテランヘリコプターのブレードに始まり、アラスカ出身で水陸両用飛行艇のディッパー、先住民の知恵で自然と対話ができる重量貨物ヘリコプターのウィンドリフター、さらに、元軍用輸送機のキャビーや、そこから飛び出すパラシュート隊など、ユニークな顔ぶれだ。また今作では“火”がもう一つの重要なアイテムになっており、風速や風向き、温度、煙にいたるまでさまざまな研究と、視覚効果の新たな技術を3年の歳月をかけて開発した。結果、本物と見まがうばかりの迫力の火災のシーンを作り出すことに成功している。

 今作は、ガナウェイ監督いわく、「毎日命を懸けて戦うレスキュー隊にささげた作品」だ。「普段あまりスポットライトの当たらない、真のヒーローといえる彼ら、見ず知らずの人たちのために自らの命の危険を顧みず、毎日懸命に働いている彼らの仕事ぶりを知ってもらい、尊敬の念を感じてもらえたらうれしい」とガナウェイ監督は考えている。かたやバロンさんは「この映画は、セカンドチャンス、再出発の映画でもある」と話す。「人生には思い通りにいかないこともある。そんなときに方向転換をすることで、新たな自分の人生の目的ややりがいを見つけて前に進んでいく。その勇気を見いだしていくという大事な教訓が、ここには込められている。それは、大人ならずとも子供も共感できるメッセージだと思う。それを感じ取ってもらえたら」と期待を込める。

 ところで、消防飛行機として“フロート”を取り付けられたダスティ。次回作以降、レーサーとして再び飛ぶことはできるのか? 「いろんな可能性を秘めたエンディングになっているからね。もしかしたら、レーサーに戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。それを選択するのはダスティ自身だ。今回の彼は、レスキュー隊の世界に飛び込み、仲間と一緒に火と戦い、それによって、大きな挫折を味わいながら新たな人生の目的を見つけて成長していく。その彼が次にどんな道を選ぶのか。それもまた、ファンが楽しみなところだと思うよ」とガナウェイ監督は力強く語った。映画は19日から全国で公開中。

 <ボブス・ガナウェイ監督プロフィル>

 1965年生まれ、米オクラホマ州出身。これまで手掛けたアニメーション作品は、アニー賞監督賞にノミネートされたテレビシリーズ「ライオン・キングのティモンとプンバァ」(95~96年)はじめ、オリジナルビデオ作品「スティッチ! ザ・ムービー」(2003年)、テレビ映画「リロイ&スティッチ」(06年)など多数。「キャッツ・ドント・ダンス」(1996年)やオリジナルビデオ「ティンカー・ベルと輝く羽の秘密」(2012年)の脚本も担当した。

 <フェレル・バロンさんのプロフィル>

 1970年生まれ、米テキサス州出身。ウォルト・ディズニー・テレビジョン・アニメ「ティガー・ムービー/プーさんの贈り物」(2000年)のプロダクション・スーパーバイザーとしてディズニーに加わり、その後、ディズニー・トゥーン・スタジオに移り、「くまのプーさん/完全保存版2 ピグレット・ムービー」(03年)、ビデオ作品「きつねと猟犬2/トッドとコッパーの大冒険」(06年)の製作に関わった。

 (インタビュー・文・撮影:りんたいこ)

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