ダンダダン
第5話「タマはどこじゃんよ」
10月31日(木)放送分
7月にスタートした「夏アニメ」や、4月にスタートした一部の作品がほぼ最終回を迎えた。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんがこのほど終了した数々の夏アニメを振り返る。
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暑い夏をともに駆け抜けた今期のアニメを振り返ると、全作品を通して感じていたことがありました。
それは、ずばり「応援したい!」です。
どういうことかと言いますと、視聴しながら「頑張れー!!」と思わず声を出してしまいそうになる展開が特に多かったように感じたのです。夏アニメの展望原稿で「夏の甲子園」と例えたこともあり、さながら女子マネジャーにでもなった気持ちで胸の前で手を組みながら「神様……!」とキャラクターの行く末に祈りをささげてしまうなんてこともありました。
最後まで固唾(かたず)をのんで見守ってしまうというのは今期に限らずどのアニメでもいえることなのですが、みなさんも見た作品を思い出すと、頑張るキャラや熱い展開に思わずエールを送っていた瞬間があったのではないでしょうか。
そんなマネジャーの気持ちで私が見守ってきた応援チーム(作品)や選手(キャラ)がそれぞれの目標、戦い、信念の下で迎えた結末は果たしてどんなものだったのか。アニメとともに駆け抜けた夏を振り返りつつ、考察していきたいと思います。
可愛い女の子がいっぱい……なだけじゃなく! それぞれが悩みやコンプレックスを抱えながらそれを仲間達と乗り越えていこうとしたり、目標に向かって頑張る姿がとても輝いて見える。そんな頑張る女子の一生懸命が詰まった作品をまずは振り返っていきます。
タイトル通り、ごくごく普通の女子高生のなにゃこちゃんが、ご当地アイドルとして成長していく姿を縁(ゆかり)さんや沙織さんのごとく見守ってしまった「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」や、出自の秘密を知ったイリヤ、クロ、美遊がそれを受け入れた上で友達や家族になっていく姿に、ギャグパートとのギャップもあり思わず涙した「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!」などがありました。
そんな頑張る女の子たちの中でも特に、その姿を見て応援したくなってしまったのが「ハナヤマタ」に登場する由比浜学園生徒会長の真智ちゃんでした。
まじめで心優しいからこそ、サリー先生やよさこい部と対立してしまう不器用な姿に歯がゆくなりましたし、入部後の合宿で、自主練が旅館客を巻き込んだステージになっていくシーンでは、今までのわだかまりがほぐれたようなその笑顔に、こちらまで温かい気持ちになりました。
とにかくもどかしくて目が離せない関係や、約12話かけての発展と後退にハラハラドキドキとじらされつつも、2人の幸せを願って応援してしまう作品もありました。
「アオハライド」では、どう頑張っても全員が自分の思い人と結びつくのは難しいのに、みんながみんないい子過ぎて、彼ら全員の幸せを祈らずにはいられませんでしたし、一方で、もっと大きな障害があるにもかかわらず、お互いを思う純粋な気持ちで見事ハッピーエンドに終わった「LOVE STAGE!!」には、見ているこちらまで幸せな気分にひたらせてもらいました。
しかしそんな中でも特に、応援しつつこちらまでキュンとさせられてしまったのが「まじもじるるも」のるるもちゃんです。無表情で分かりづらいけど、他のどの女子よりもよっぽどけなげに耕太を思うるるもちゃん。思わず応援せずにはいられません。中でも、尾々神村で狼男になってしまった耕太を一人見抜いたシーンと、そこでのせりふは健気(けなげ)を通り越してもはや男前にさえ思えてしまいました。
それぞれの運命と境遇、そしてそれに立ち向かう話……というと、よくある王道パターンといわれてしまうかもしれません。しかし、だからといって決してありがちではなく、気づけば独特な世界観やキャラクターを夢中で見守っている……。そんな王道だからこその安定感を持ちつつ、魅力のある作品もたくさんありました。
同じESP能力を持ったもの同士が、人々にさげすまれ、時に感謝され、さまざまな立場や心情の上で戦いを繰り広げた「東京ESP」もそうですし、特に独創的だと感じたのが「幕末Rock」です。
話題を呼んだライブの演出やパロディーの大胆さに、最初は思わず大笑いしながら見ていたというのに、全力で熱い信条を貫く龍馬達の姿を見守るうちに、いつしか煌(ファン)の女の子同様、メンバーへ熱い鬼愛(ラブ)を送ってしまっている……。そんな不思議な引力がある作品でした。とは言いつつ、実は龍馬達を差し置いて一番応援してしまったのは、何を隠そう下積みの苦労や報われなさにも負けず健気に頑張った暗黒桜桃組(ダークチェリーズ)達だったりもするんですけどね。
「応援」。そして冒頭で述べた「女子マネ」といったら外せないのがスポーツ作品です。息をのんで見守り、勝利の瞬間は、見ているこちらまでガッツポーズをしてしまう……。熱いスポーツアニメは、それこそ好きなチーム、選手に感情移入すると、まるで一緒に大会へ挑んでいるかのような一体感を与えてくれます。
大会前に激励をくれた潔子さんにこちらまで明日を生きる活力をいただいた「ハイキュー!!」では、24話の試合後、無言でご飯をかき込みながら涙をボロボロ流す烏野メンバーをみて悔しさでもらい泣きしてしまいました。
そして、スポーツ作品の中でも、今期特に印象に残ったのは「ベイビーステップ」です。少年マンガ、特にスポーツものにしてはめずらしいタイプの主人公・栄ちゃんが、ある意味、スポ根キャラも顔負けの地道なトレーニングを黙々とこなす姿や、謙虚だからこそ、試合の中で常に自分のできることを考えてそれに挑戦していく姿には、応援を通り越して「他人事のように頑張れなんていってる場合じゃない!」と見ているこちらまで刺激をもらっていました。
さてさて、これまでのものとはちょっとテイストが違いますが、ギャグアニメ特有のとんでもない境遇に、思わず「が、頑張れ……!」と同情のエールを送ってしまうなんてことも……。
2期にして、作品一苦労人な恒を上回る不憫(ふびん)さをみせた菅野さんを思わず応援した「真 ストレンジ・プラス」もそうでしたし、特に今期一番の不運キャラではないかと思える「さばげぶっ!」の麻耶ちゃんには毎回心の中で涙しエールを送っておりました。一番常識がありそうな人だからこそ空気になってしまいがちで、しかも出てくるとろくな目に遭わないなんて、不遇すぎる立ち位置といわざるを得ません。
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応援をテーマに作品を振り返ってきましたがここで一回小休止としまして、今回も僭越(せんえつ)ながら個人的な独断と偏見による夏アニメベスト3を選ばせていただきます。
1位「月刊少女野崎くん」
野崎くんと千代ちゃんはじめ、瀬尾さんと若松くん、鹿島くんと堀先輩ら凸凹カップルの日常に毎回たくさん笑ってときめいて……。見終わった後の幸福感がハンパない作品でした! 演劇部に協力する棒読み野崎くんとおだてられたミコリンのエピソードには、思わず電車内で噴き出してしまい恥ずかしいことになった思い出も。
2位「少年ハリウッド」
視聴前の予想と違い、いい意味でアイドルの生々しいところにスポットを当てていた深い作品! 舞台回や歌番組回の演出も斬新でしたし、社長の過去を知ってからの夏合宿シーンは楽しそうなのにどこか切なくて、その直前の原宿ミュージカル回とのギャップもあってまたすてきでした。
3位「花物語」
安定の濃さと面白さに見終わった瞬間は長編映画を見た後のような満足感でした! 日傘自身、自分の境遇に向き合えず成仏できていないという切なさと、成長した阿良々木先輩と駿河の車でのやりとりの安心感、緩急のある緊張とギャグのバランスなどに、見ているこちらも心地よく振り回されました。
おまけ「フランチェスカ」
北海道産ご当地アニメということでどんなものかと見てみたらこれがクセになる面白さ! キャラや世界観のぶっとび具合に驚いたと思ったら、次のシーンでは北海道の景色や名産品に癒やされるというそのギャップがすてきです。敵なのに憎めない新撰組が活躍する回と、何度聞いても神すぎる主題歌は必見。
クールによる区切りができないので取り上げていなかった長寿番組ですが、この夏クールからの展開がかなり熱いものになっていたので今回は例外的に紹介させていただきます。
「HUNTER×HUNTER」では選挙編に入り、懐かしのキャラの登場や同時進行するゾルディック家周辺の攻防、新会長選挙で渦巻く思惑やゴンとジンの再会などなど、胸熱なシーンが目白押しで毎回30分があっという間でした。
「NARUTO」も、中忍試験以来の同期集結に、全火影集合からの最終バトルへの流れなど、鳥肌が止まらない展開が続く中、ギャグ全開のメカナルト回がはさまれたりといろんな意味で目が離せません。
長く放送している番組ですと、どうしても見ない期間が出てきてしまったりするのですが、この2作品は特に!今見逃している方々にもぜひ追いついてみてほしいような激動の展開となってました。
「応援したい」という気持ちが生まれるのは、そこに頑張ってる人がいるときです。そういった意味でも、今期はそれぞれの作品で登場人物が必死に成長していく姿や立ち向かう姿を見られるエピソードが多く、またそれが特に印象に残ったように思います。
そんなキャラクター達の頑張りや成長をクールを通して見守ることで、最終的には応援をしていたはずのこちらの方が元気をもらっていたようにも感じました。
そんな今期の夏アニメは、どんな結末を迎えたのであれ、キャラクターを応援し作品とともに過ごしてきた立派な夏の思い出だったといえるのではないでしょうか。
夏らしい思い出がない私にまで、まるで女子マネとして一夏を一緒に乗り越えてきたかのような気分を味わわせてくれた夏アニメよ、本当にありがとうございました!
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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