要潤:俳優として「正しいことを伝えるのが大事」 ドラマ「今日からヒットマン」主演

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 むとうひろしさんの人気マンガを要潤さん主演でドラマ化した「今日からヒットマン」が、スマートフォン向け動画配信サービス「dビデオ powered by BeeTV(dビデオ)」で配信中だ。今作はdビデオが制作を手がけるオリジナルドラマで、市原隼人さん主演の「ハング」に続く、社会の闇と戦う男たちを描いたドラマの第2弾。原作は、2005年から「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載中のマンガで、闇組織の抗争に巻き込まれたことをきっかけに、伝説のヒットマンの名を継ぐことになった平凡なサラリーマンの活躍を描く。サラリーマン生活を送りながら“二丁”という伝説の凄腕ヒットマンの名を継ぎ、営業で培った機転と話術、即席で得た銃の知識だけでピンチに立ち向かう主人公・稲葉十吉を演じる要さんに、共演した菜々緒さんや山本美月さんの印象や役作り、今作の見どころなどについて聞いた。

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 ◇「タイムスクープハンター」似のサングラスを偶然にも選択

 平凡なサラリーマンがある日突然、殺し屋になってしまうという“トンデモ”設定の今作だが、要さんは「昼はサラリーマン、夜は殺し屋という両極端なすごく分かりやすいお話」と印象を語る。出演が決まった際は「原作をまず読んでから脚本を読んだ」といい、「すごくポップで分かりやすくて、今どきのヒーロー像に当てはまるような感じ」と評し、「役作りとしてもすんなり入れるかなと思った」と話す。

 要さん演じる十吉が二丁となる際にはサングラスをかけるのだが、その姿は9月まで放送されていた「タイムスクープハンター」(NHK総合)の沢嶋雄一を彷彿(ほうふつ)とさせる。サングラスは要さんが選んだそうで、「レイバンのティアドロップで本場な感じにしようかなと思ったのですが、どこか素人が殺し屋をやっているように見せたいなと」と考えた結果、「気付いたらこれになっていて、(「タイムスクープハンター」でかけているのと)なんか似てるなと」とほほ笑む。

 ちなみにプライベートでもサングラスはよく掛けているというが、「普段は全然違って、スポーツタイプみたいなのはあまりかけない」と要さん。今作に限っては、二丁の服装に合わせて熟考し、「何か、このバランス、革ジャンとこの形のものが合った」と語る。

 十吉を作り上げていく過程では、「普通の34歳のサラリーマンが殺し屋になってしまったという印象を与えるのが先と思った」と方向性を決め、「作り込むよりは割と等身大のままをキープすることにしようかなと」と構想したことを明かす。十吉はやむにやまれぬ状況で殺し屋となるが、要さん自身は究極に追い込まれた場面ではどうするかと聞くと、「うーん……。やるでしょうね」とうなずき、「やっぱり(この作品のように)家族のためなら考えます」と力を込めた。

 ◇役の好みは「昼は菜々緒、夜は山本美月」

 今作では十吉の妻・美沙子役を菜々緒さん、二丁の相棒・ちなつ役を山本さんが演じている。2人の印象を聞くと、ともに第一声は「すごくきれい」と要さん。続けて菜々緒さんについて、「すごく癒やし系で会話も弾んで、奥さんにしたらすごくいい人だろうなという印象でした」と役にぴったりだったと笑顔で語り、朝から豪勢な食事が並ぶ食卓シーンについて、「朝からあれだけあるのはきつい」と苦笑しつつも、「菜々緒さんが作ってくれたのなら食べるかもしれない」とちゃめっ気たっぷりに話す。

 一方の山本さんについて、「すごくスマートな部分もあるし、殺陣もちゃんとこなすし、頑張り屋さん」と絶賛。「性格は柔らかくてキュートという感じだから、すぐ溶け込めたし、一生懸命な姿がすごく印象的だった」という。役どころとしては正反対な2人のどちらが好みかと聞くと、「両極端ですからね」とかなり悩んだ末、「このドラマの通り、昼は菜々緒さん、夜は山本さんという感じじゃないかな(笑い)」とサービス精神たっぷりな回答が返ってきた。

 ◇アクションを熱演も実は苦手!?

 主人公は殺し屋だけあってアクションシーンも多いが、ガンアクションでは「火薬の数も多くて、ちょっと熱かったり、少しけがしたりとかもした」と明かし、「僕自身、撃つ方よりも撃たれる方が多かったので、リアクションの仕方にはこだわった」という。「あまりカッコよくなってもダメだし、あくまでサラリーマンの“素人感”が出るところというか、営業トークでねじ伏せるところはカッコいいけれど、それ以外はもう全然ダメという描写にしたかった」と意識したポイントを説明。これまでも数々のアクションをこなしてきたが、「これまでやってきた役がアクションが多かったというだけで、そんなにアクションにこだわりはない」と意外な発言も飛び出した。

 理由を聞くと、「JAC(ジャパンアクションクラブ)にいたとかはないですしね(笑い)」とジョークを口にし、「キャラクターを重視し、カッコよくやるキャラクターはカッコよくやるし、悪いやつは悪くやるしという使い分けがあるだけ」という。続けて、「意外に鈍くて、(仮面)ライダー(アギト)の時はひたすら練習はした」とアクションが得意そうなイメージを覆す答えが返ってきた。

 アクションの中には、パンツの中に隠した銃を撃つという衝撃のシーンも存在。「原作にもある描写なので非常にこだわった」と力を入れたシーンの一つだといい、「『今日からヒットマン』といえばあのシーンがあるというぐらい重要だと思っていた」とのこと。撮影には「うそ(フィクション)なんだけどリアル感を持ってやった」と臨み、実際にパンツの中に銃を入れていたそうだが、恥ずかしさや抵抗などは「全然ない」というほど、そのシーンでは役者魂を見せている。

 ◇2枚目も3枚目も真摯に演じる姿

 十吉のように、要さんはカッコいいのにコミカルという役を演じることが多い印象だが、「そういうふうに見られているのはすごいうれしい」と喜ぶ。「2枚目はやりづらかったというか、自分の中であんまりしっくりこなかった」といい、「普通に芝居すれば2枚目に見てくれるので、クリエーティブかというとあまりそうではなかった」と振り返り、「3(枚目)に近いほうが考える幅が広がるというか、やっていて面白い」と語る。

 2枚目も3枚目も見事に演じ分ける要さんだが、俳優になろうと思ったのは高校生で進路を決めた頃だといい、「俳優になりたいという具体性はなかったけれど、テレビに関わる仕事ができたらいいなと」と考えていたという。「その時は芸人だろうが俳優だろうが別に垣根はないと思っていたし、俳優というよりも『出たい』とか、裏方でもいいから『作りたい』というぐらい漠然としていた」と当時の心境を振り返る。俳優として活躍する今は、「正しいことを伝える」のが大事だと訴え、「人殺しや泥棒はダメだとか、正義は勝つとか人助けはしなければいけないとか、それを絶対的に見失っちゃいけないなと思っています」と強い信念を明かす。

 ◇メッセージ性が強くないことが魅力

 今作の注目すべき点に「ガンアクション」を挙げ、「ガンアクションは、ハラハラドキドキして、血の描写とかもすごくリアルだし、一番時間とお金をかけているシーンなので、そのへんは注目してもらいたい」と力を込める。さらに「個人的には十吉のシーンが『今日からヒットマン』を物語っているような気がする」と分析し、「弱い方が好きなのかもしれない」と人間くさい十吉の生きざまも魅力だと力を込める。

 そして、今作について「すごくメッセージ性が強い作品ではないというのが面白いところ」といい、「dビデオでご覧になる方がほとんどでしょうから、通勤や通学の途中などに軽い気持ちで見られると思うし、途中で見られなくなっても続きからすんなり入っていける」と楽しみ方を丁寧に説明し、「誰とでも一緒に見られる作品だと思う」とアピールする。今回は単行本の1巻分をドラマ化しているが、続編について「原作ファンの人たちも楽しみにしていると思うし、ここをドラマ化してほしいというところもあると思うので、ぜひやりたい」と前向きに語り、「見ている人がいないと(続編は)できないので、たくさんの人に見てほしい」と熱くメッセージを送った。ドラマはdビデオで配信中で、ドコモ以外のユーザーも視聴可能。全4話。

 <プロフィル>

 かなめ・じゅん 1981年2月21日生まれ、香川県出身。 2001年、特撮ドラマ「仮面ライダーアギト」でデビューし注目を集める。以降、映画、テレビ、舞台などで活躍。 09年に放送が始まり、昨年には劇場版が公開された「タイムスクープハンター」(NHK総合)や、昨年放送された「東京トイボックス」(テレビ東京系)で12年ぶりにヒーロースーツ姿を披露するなど、話題作に出演。10月からはテレビ朝日系で放送されるドラマ「黒服物語」に出演する。

(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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