金城宗幸さん作、藤村緋二さん画の人気マンガを原作に、三池崇史監督がメガホンをとり映画化した「神さまの言うとおり」が話題だ。退屈な日常にうんざりしている高校生・高畑瞬が、ある日、突然学校に現れた「ダルマ」の宣言で始まる命懸けの理不尽なサバイバルゲームに巻き込まれていく恐怖や不条理を描く。俳優の福士蒼汰さんが主人公の瞬を、女優の山崎紘菜さんが瞬の幼なじみの秋元いちかを演じ、鬼気迫る演技で最新VFXを駆使した迫力と緊張感に満ちた映像を盛り上げている。福士さんと山崎さんに、撮影現場でのエピソードや撮影現場での三池監督とのやりとりなどについて聞いた。
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理不尽な世界観で構築された今作に出演し、福士さんは「やってみると結構あせりました」と振り返る。特に山崎努さんが声を担当する「シロクマ」が登場するうそつきを探すゲームでは「『時間があと○分』と言っている中で、誰がうそをついている人かを決めなきゃいけないというのが結構きつかったです」と打ち明ける。一方、山崎さんは「どこか他人事だったんだなというのはすごく感じた」と台本や原作を読んだ時の印象を語り、「人が死体になっているのを見たり、現実に人が死ぬことは一人だって大変なのに、そういうの(死体)が転がっているというのは、すごく残酷な映像だったなと思います」と驚いたという。「原作を読んだ時は理解しているつもりだったけど、現場に入ってやってみると自分の想像力が足りなかった」ことを痛感した。
山崎さんが「残酷な映像」という描写について、物語の起点となる「ダルマさんが転んだ」では流血をビー玉で表現。想像力をかき立て、恐怖心をあおる三池監督の発想に「衝撃的でした」と話す福士さん。ビー玉が飛び交う撮影現場を「ビー玉を床一面に敷き詰めて隙間がないようにして、とにかく量に驚きました」と明かし、「バケツでバシャーと(床に)敷き詰めていくから音も迫力がありました」と視覚と聴覚の双方での効果に驚いたという。
一面に敷かれたビー玉が転がる中での演技について、山崎さんは「歩けないし大変でした」と苦笑する。そして「(ビー玉が、破裂した)顔から出てくるのは怖いですけど、現場では顔から出てるわけではないから怖くはないです」とちゃめっ気たっぷりに笑い、「予告編を見ると、やっぱりすごいな、と」と完成した映像での怖さをしみじみとかみしめる。ダルマの撮影は最終日のみの参加となった山崎さんは「最終日に死体の山だけを見るというのは相当なインパクト」と振り返り、「ダルマが一番悲惨だったかなと思います」と怖さに太鼓判を押した。
福士さん演じる瞬と、山崎さん演じるいちかは幼なじみという設定だったことから、「あまり距離があるのも……と思ったので、クランクインしてからすぐ打ち解けられるように、気を使う部分を崩そうと思って(山崎さんに)話しかけました」と福士さん。積極的にコミュニケーションを試みてきた福士さんに対し、山崎さんは「どういう方なのかなと最初は緊張していたので、福士さんから話しかけていただき、たくさん話すことができました」と感謝する。
出演者はほかに天谷武(あまや・たける)役の神木隆之介さん、高瀬翔子役の優希美青さんら若手俳優が顔をそろえた。「現場はすごく明るい雰囲気でした」と切り出した福士さんは、「マンガやゲームの話をしたり、同世代だったのでそういう話題が多くて和気あいあいとしていました」と話す。盛り上がったということで、2人に初めてはまったポップカルチャーを聞くと、福士さんはゲームの「ポケットモンスター」、山崎さんはマンガ誌「ちゃお」を挙げた。「小さい頃からやっていて、『ポケモン』にはまりました。あとは『遊戯王』も」と語り、山崎さんは「小学校の頃、『ちゃお』を買って、プレゼントに応募してというのを毎月毎月やっていて、それがすごく楽しみでした。今もすごく好きだけどマンガにはまっていました」と笑顔を見せる。
雰囲気のいい中で進んだ現場を統括していたのは鬼才・三池監督だ。福士さんは「演出や演出方法などのアイデアが面白いなと思いました」と監督の印象を語り、「まねき猫の動き方はマンガだとあり得るけど実写だとあり得ない動きだから、そこをどうクリアにしていくかということなど、衣装合わせの時に説明してくださったのを聞いて、『この方についていけば面白い作品になる!』と確信できました」と強調する。
一方、「悪の教典」で三池監督の現場を経験していた山崎さんだが、「『悪の教典』では、直接お話ししたことは実はあまりなくて、生徒役全員に演技指導という形でしか接点がなかった」という。ある意味、三池組“初体験”となった今作では、「1対1でたくさん演技指導してもらって、すごく指示が的確で、私に対して何をどう言えば伝わるのか分かった上でビシッと言ってくださるので、すごく理解しやすかった」といい、「すごく丁寧に説明してくださるので本当に助けてもらいました」と三池監督の言葉が演技する上で励みになったと振り返る。
今作にはまねき猫、コケシ、シロクマ、マトリョーシカといった不気味ながらもどこか愛らしいキャラクターが多数登場する。それらすべてがCG処理されるため、現場では「ガイド」と呼ばれるダミーのものを使って撮影が行われたという。「全部大変でしたけど、シロクマがかなり大きいので、見上げることがまず大変でした(笑い)」と福士さんは笑い、山崎さんは「シロクマは意外に心理戦だったので、ほかのステージに比べて動きは少なかったと思う。その中で感情の揺れなどを表情や少ない動きの中で表現するというのが、すごく難しかったと思います」と明かす。
まねき猫が登場するゲームでは福士さんがネズミの着ぐるみを着用という衝撃のシーンもある。「結構面白かったです」と大笑いしながら語る福士さんは、「撮影した映像を現場で見ても、神木君と対峙(たいじ)しているシーンで真剣な顔をしているのにネズミ(の着ぐるみ)をかぶっていて、ウケを狙いにきているのかこいつは?と思われるぐらい間抜けだけど、真剣に芝居をしている感じがなんともいえなかったです(笑い)」と再び笑う。そんな福士さんの姿を現場で見た山崎さんは「(外見は)ネズミだったけれど、私にとってはすごいヒーローに見えて、カッコいいと思いました」とほほえむ。
冒頭からラストまでミステリアスで意味深なストーリーが展開していくが、「ダルマやコケシとかキャラクターが面白いなと思いました」と福士さん。「ダルマも目をギョロギョロさせて動いた人を発見したり、コケシも人間同様にだまされたり、ルールをちゃんと守ったりと、すごく人間的」と分析する。「人間たちの追い詰められていくところで、むき出しになっていく本能や人間関係が崩れていったりするところ」に魅力を感じたと話す山崎さんは、「先輩・後輩は多少あると思うけど、高校生はそんなに立場は変わらないはずなのに、ゲームが始まると、上から目線でいろいろ言ってくる人だったり、怖くなって逆らえない人が出てきたり、そういう本能がむき出しになった人間たちというのもものすごく面白い」と理由を説明する。
そんな2人に今作のように極限状況に追い込まれたらと聞いた。福士さんは「みんながあせればあせるほど自分が冷静になって、どんどん客観的に見ていくタイプだと思います」と答え、「だから瞬は(自分と)近い部分はありました」と評する。山崎さんは「私は頭が真っ白になるタイプかな(笑い)」といい、「どうしようとすら考えられないぐらいぼう然としちゃうタイプ」と自己分析。そして、「信頼している人をとことん信頼するというのは結構自分と似ていると思う」といちかとの共通点を語り、「でも、いちかちゃんみたいに誰かに意見したり、天谷みたいなちょっと怖い人に立ち向かったり……という勇気はないかも」と語った。
今作を一言で紹介するとという質問を2人に投げかけると、福士さんは「人形と戦う映画」と表現。その独特な言い回しの意味は、「戦いという表現だとアクション映画のような感覚で見に行きやすいんじゃないかなと(笑い)。人形と戦うって気になりますよね」とユニークな発想で映画への興味を引かせる。そして、今作出演を通じて、「当たり前の日常というものが、いかに大切な時間かということ、その時間をどう有効的に使ってやりたいことをやるかという大切さを感じました」と話す福士さんは、「この映画は人形と戦う映画でもあり(笑い)、コメディーチックな映画でもあり、恋愛映画でもあり、感動する映画でもあるので、単純なデスゲームとして見るのではなく、いろんな要素が詰まっているということを理解した上で見ていただくと、より楽しめるんじゃないかな」とメッセージを送った。
一方、山崎さんは「紹介というか、『とりあえず見てください!』と(お客さんを映画館に)強引に連れ込む(笑い)」と冗談交じりながらも完成度に自信を見せた。また、今作からは「命を大切に」ということを切実に感じたという。「マンガを読んでいても人がたくさん死んだりするのは物語として面白がって見ちゃう部分や、不幸なニュースを聞いてもどこか他人事のように感じてしまう部分もある」と切り出し、「やっぱり人が一人いなくなるというのはとても大変なことだし、生きていることに感謝というのも大事なのかなと思いました」と心情を告白。そして、「原作を読まれている方もそうでない方も絶対に楽しめると思うし、たくさんの人の予想を上回るものができていると思うので、『いいから見てください!』という感じです(笑い)」と力を込めた。映画はTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開中。
<福士蒼汰さんのプロフィル>
ふくし・そうた 1993年5月30日生まれ、東京都出身。2011年、ドラマ「美咲ナンバーワン!!」で俳優デビュー。同年、「仮面ライダーフォーゼ」で初主演し、13年にはNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し注目を集める。現在、日本テレビ系ドラマ「きょうは会社休みます。」に出演中。映画主演作に「ぼくが処刑される未来」「江ノ島プリズム」などがあり、最近の出演作に「好きっていいなよ」「イン・ザ・ヒーロー」などがある。15年には「ストロボ・エッジ」などが公開を控えている。
<山崎紘菜さんのプロフィル>
やまざき・ひろな 1994年4月25日生まれ、千葉県出身。2011年に第7回東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞し、デビュー。主な出演作は「今日、恋をはじめます」「この空の花」「悪の教典」などがある。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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