インターステラー:ジェシカ・チャステインさんに聞く「この映画は感じるために作られている」

最新出演作「インターステラー」について語ったジェシカ・チャスティンさん(C)Kaori Suzuki
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最新出演作「インターステラー」について語ったジェシカ・チャスティンさん(C)Kaori Suzuki

 クリストファー・ノーラン監督の最新作「インターステラー」が22日から全国で公開された。今作は、地球滅亡のカウントダウンが迫る中、人類の存亡を懸け、そして愛する家族の未来を守るため、マシュー・マコノヒーさん演じる宇宙飛行士が居住可能な新たな惑星を探すために前人未到の地へ旅立つというSFストーリーだ。今作において、宇宙物理学者を演じているのが、「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」(2011年)や「ゼロ・ダーク・サーティ」(12年)などの作品で知られるジェシカ・チャステインさんだ。「この映画は、理解されるために作られているわけじゃない。感じてもらうために作られている」と話すチャステインさんが、今作の魅力や撮影の裏話を語った。

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 ◇エキサイティングな経験

 「これは、とても壮大な宇宙映画よ。見ていて息ができなくなる部分があったわ。そして、実際息をするのを忘れてしまったわ。私は映画を見ながら泣いていたの。マシュー(・マコノヒーさん)の演技は素晴らしかった。本当に感動したわ」と、映画を見た感想を語るチャステインさん。なかでも驚いたのはエンディングだという。「あの最後のシーンでのマシューとあのビジュアルは本当にすごいわ。詳しいことは話せないけれど、とにかく圧倒されたわ」と興奮気味に語る。

 チャステインさんが演じた宇宙物理学者は、チャステインさんの言葉を借りるなら、「主役ではないし、画面に登場する時間はそれほど多くはない」。しかし、「彼女は重要なことをやってのけるの。彼女はこの物語の中で、しっかりと足跡を残している」と語る。その役を演じられたことがチャステインさんには「とてもエキサイティングなこと」だったという。

 ◇理解できるからこそ難しかった

 チャステインさんが演じたキャラクターは、幼い頃、最愛の父親に置き去りにされた過去を持つ。そのため彼女の心の中には、父に対する愛と憎しみが共存している。しかしチャステインさんは、その感情に矛盾はないと話す。「なぜなら、奇妙に聞こえるかもしれないけれど、憎悪と愛というのは同じことだと思うからよ。もし誰かを憎んでいたら、そこには情熱があるということ。憎しみというのは拒絶された愛なの。つまり愛と憎しみは、コインの表と裏のような関係なのよ」。それが、チャステインさんのとらえ方だ。

 とはいえ今回の役は「これまでとは勝手が違った」と感じている。「私は生来とても引っ込み思案で、取材の人たちと話すときも、映画のこと以外は話さないの。私の家族や自分のパーソナルライフを守りたいから。でも、今回の脚本を初めて読んだとき、私は、“彼女”が折り合いをつけようとしている心の傷や、彼女自身についての疑問が理解できた。それは、私個人の経験のせいだわ。だから今回ばかりは演技をしながら、私自身が持つものを彼女と分かちあったり、自分をさらけ出したりしないといけないと思った」という。そういう経験が初めてだっただけに「だからこそ演じるのは難しかった」と打ち明ける。

 ◇砂塵を投げつけられながらの演技

 チャステインさんによると、今回、ノーラン監督は「全部現実的なセット」で撮影し、「宇宙船のシーンでも、グリーンスクリーンを使わなかった」。俳優たちからリアルな演技を引き出すためだ。だから、チャステインさんが車で通り過ぎる500エーカー(約200ヘクタール)のとうもろこし畑も、カナダのアルバータ州にあるオコトクスという町で、実際にとうもろこしを栽培したという。そこは映画の設定上、環境破壊によって草原が砂漠と化し土ぼこりが舞っている土地だ。チャステインさんは、スタッフが「顔を目がけて投げつける」ボール紙で作られた砂塵を、バケツ何杯分も浴びながら演じたという。しかし、「その方がよかった」とチャステインさんは振り返る。というのもチャステインさんは、「何かに反応して演技をする役者」だからだ。

 ◇分析や定義づけは必要ない

 壮大な物語が展開する今作だが、チャステインさんは、そこで目にすることを、「起きる可能性があると信じている」と肯定的だ。「すべて本物の科学、本物の物理学に基づいていること。私が黒板に書いた方程式も、(理論物理学者で今作のエグゼクティブプロデューサーの)キップ・ソーンが私にくれた本物の方程式なの」と、ノーラン監督と彼の弟ジョナサン・ノーランさんが書き上げたストーリーが、決して「現実からかけ離れたものではない」と力説する。

 その一方で、ピカソの絵を引き合いに出し、「この映画は、あらゆる素晴らしい芸術作品同様、理解されるために作られているわけじゃない。感じてもらうために作られている。この映画には科学が出てくるけれど、そのすべてを理解しようと分析したり、定義づけしたりする必要はない。それにただ浸かればいいのよ」と、今作にふさわしい鑑賞方法を勧める。そして、「この映画の核は“愛”。愛は定義できないし、理解できるものでもない。愛は、ただ感じるもの」と今作に込められたメッセージを表現し、その上で「もし、この映画に出てくる重力やブラックホールについて理解できなくても、自分を開放すれば、映画館でエモーショナルな体験ができるはず。科学をもっと探求したければ、ちょうど公開に合わせてキップが科学の本を出版するから、それを読めばいいと思う。でも私は、エモーショナルなレベルで、この作品から影響を受けてもらいたいんです」とアピールする。

 ◇火星には行きたくない

 現実にも火星移住計画は進んでいるが、今作で“宇宙”というものに触れたチャステインさんは、「私が火星に移住したいかですって? 答えはノーよ」と笑う。「私は北カリフォルニアの出身で、海が大好きだし、レッドウッド(世界遺産に登録されている国立州立公園)の森が大好きなの。地球はとても美しいと思う。だからここにいたいのよ」と、あくまでも地球圏外に出る気はない様子。半面、「だけど、宇宙という巨大なスケールの中では、私たちはほんの小さな点に過ぎない。宇宙に私たちがまだ知りえないほかのどんなものがあるのかと想像してみて……。そういう未知のものを見たり、学んだりすることにはすごく興味がある」と好奇心をのぞかせる。

 これまでは「科学」よりも「化学」のほうに興味があったというチャステインさん。「演じることの素晴らしいところは、それまで未知だったことに触れられること」と指摘しつつ、今作の出演によって、「クリストファー・ノーランが、私が物理学を学んだり、世界的な理論物理学者のキップ・ソーンと話すよう奮い立たせてくれた」ことを、「なんてクールなことかしら!」と喜んでいた。映画は22日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 1977年、米カリフォルニア州出身。ニューヨークのジュリアード学院で学ぶ。「ER緊急救命室」や「ヴェロニカ・マーズ」といったテレビシリーズにゲスト出演し、「Jolene」(日本未公開、2008年)でスクリーンデビュー。「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」(11年)の演技で注目され米アカデミー賞助演女優賞に、12年の「ゼロ・ダーク・サーティ」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。他の出演作に「ツリー・オブ・ライフ」「テイク・シェルター」「キリング・フィールズ 失踪地帯」(いずれも11年)などがある。2部構成の「ラブストーリーズ」(13年・「コナーの涙」「エリナーの愛情」)が来年2月に日本公開予定。

 (構成・文/りんたいこ)

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