1979年のサンリオの実写人形アニメーションを3D映画として蘇らせたファンタジー作「くるみ割り人形」(増田セバスチャン監督)が29日から公開される。声優と音楽を一新し、コンピューターグラフィクス(CG)やアニメーションパートも加えて新たなシーンを追加。人形の国がめくるめく明るさと驚きを持って迫ってくる。ハローキティ40周年記念作品。
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雪の降る夜、クララ(声:有村架純さん)はベッドの中でばあやに話を聞かせてもらっている。いとこのフリッツ(声:松坂桃李さん)が翌日に帰ってくると知り、興奮して眠れない。そこへ父の親友だったドロッセルマイヤーおじさん(声:市村正親さん)が未完成のくるみ割り人形を持ってやって来る。人形を気に入ったクララは、無理を言っておじさんからその人形をもらい受けた。真夜中、ネズミの大郡にさらわれかけた人形を間一髪で奪い返したクララの前に、気味の悪い二つの頭の白いネズミが現れる。翌朝目覚めてみると、人形はなくなっていた。ネズミが消えていった広間の大時計の中に入り込むと、そこは彼女がいつも遊んでいる人形芝居の舞台の“人形の国”だった……という展開。
オリジナルはなんと35年も前に作られた人形アニメだ。子ども向けの良質な文化がたくさん生み出されていた時代を懐かしく感じながら、手間ひまかけて作られたコマ撮りのアナログ映像と、最新技術でカラフルな夢の国を実現したデジタル映像の新旧融合に胸が躍る。チャイコフスキーの有名なバレエ曲が、歌声合成ソフトを使って大胆にアレンジされ、これもファンタジー表現に一役買っている。迷い込んだ時計の中などの暗闇もしっかりと表され、まばゆいキラキラした場面との色調対比が絶妙だ。呪いをかけられた人形の国で、戦争に巻き込まれたクララ。人形への愛を貫ぬけるのか。可愛いだけではない、深い愛のテーマも含まれている。ちなみにチャイコフスキーが「くるみ割り人形」を初演したのは1892年。原作はホフマンの童話「くるみ割り人形とネズミの王様」だ。エンディングではきゃりーぱみゅぱみゅさんの曲が流れ、夢から現実に引き戻される気分になる。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで29日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。子どものころは、ハローキティではなくマイメロディ派だった。あのころはサンリオで働きたいと思っていた……。
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