妻夫木聡:「バンクーバーの朝日」カナダ大使館で会見 「生きていてよかったと思うくらい感動」

カナダ大使館で映画「バンクーバーの朝日」の会見に出席した妻夫木聡さん(左)と石井裕也監督
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カナダ大使館で映画「バンクーバーの朝日」の会見に出席した妻夫木聡さん(左)と石井裕也監督

 俳優の妻夫木聡さんが17日、カナダ大使館(東京都港区)で行われた主演映画「バンクーバーの朝日」の会見に登場した。戦前カナダに実在した日系人野球チーム「バンクーバー朝日」を題材した今作で、主人公のレジー笠原を演じている妻夫木さんは、今作がバンクーバー国際映画祭で上映された際、「物語を描く上では差別や迫害という場面も出てきますが、カナダの方が見てどう思われるか不安だった」と複雑な心境だったことを明かし、「僕が初めてバントを成功するシーンで、笑ってくださる姿を見て涙が出るくらいうれしかった」と振り返った。そして、「映画が娯楽というものを超えて、国と国や言葉の次元も超えて、なにか結びつきのようなものが生まれる瞬間を感じ、本当に生きていてよかったと思うくらい感動がありました」と喜びを語った。

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 この日の会見は日本外国特派員協会が主催し、国内の記者のみならず海外メディアの記者も参加。映画「バンクーバーの朝日」は、1914~41年にカナダのバンクーバーで日系カナダ移民の2世を中心とした野球チームが、差別や貧困と戦いながら、日系移民に誇りと勇気を与えた活躍の様子を描いている。役作りについて聞かれた妻夫木さんは「頭で考えたり、芝居で表現することよりも、心自体をその時代の人に変え、僕自身が本当にはいつくばって生きることが大事だと思って演じた」と語った。「差別を受けたからといって苦しみだけではなく、自分の中でのみ込みながらも野球が生きる糧になっていたと思うし、ささやかな楽しみに喜びを感じていたのではという思いを大事にした」と主人公の心情を表現。「あまり差別ということを意識して演じてはいませんでした」と強調した。

 会見には今作のメガホンをとった石井裕也監督も出席。英語のせりふでの演出について石井監督は、「発音などよりも仕草がとても難しかった」と言い、「日本語と同じノリで英語を話すと情けなく見えてしまう」と笑いを誘いながら、「日系カナダ人の方が『英語をしゃべる時は、ある意味人格が変わる』とおっしゃっていたことを参考にして、日本人とカナダ人が対等に一つのフレームの中で共存できるように心がけた」と演出で気を付けたことを明かした。

 一方、妻夫木さんは映画では流暢(りゅうちょう)な英語のせりふを話しているため司会から英語での発言を促されるが、「無理です!」と苦笑い。さらにバンクーバー国際映画祭後の上映後、日本大使館での食事会で英語で話し掛けられたといい、「その時は笑ってごまかしてしまった」と自虐気味にエピソードを明かし、「僕は英語が話せません。すみません……」と頭を下げると会場から笑いが起こった。映画は20日から公開。(遠藤政樹/フリーライター)

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