ロックバンド「氣志團」が、ニューシングル「幸せにしかしねーから」を2月25日にリリースした。ボーカルの綾小路翔さんが作詞を手がけた楽曲で、タイトル通りの直球のラブソングに仕上がっている。氣志團のプロデューサー的な立場でもある綾小路さんに、新曲の話や、自身のバンドを含むプロデュースの極意などについて聞いた。
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−−新曲「幸せにしかしねーから」の歌詞はどんなきっかけから生まれたんですか?
氣志團の前、高校の頃にやっていたバンドのメンバーが結婚することになって、地元の同級生たちから「サプライズで来てくれよ」って言われたんで、(地元の)千葉に帰って(結婚式に)参加したんです。それで、その翌日にまた別の友達の結婚式が岡山であって、それにも出席して……。2日間連続で結婚式に参加した時に、急に歌詞が降ってきて、帰りの新幹線で書いたのがこの歌詞だったんです。人生で1回くらい、思い切って、どストレートを投げてみるのはどうだろうっていう自分の気持ちもあるんですけど、親友たちが家庭を作るというシーンに立ち会って生まれた楽曲だと思います。
10年以上、毎回、全然雰囲気の違う楽曲にトライしてきて、その中でポピュラーになった自分たちの楽曲って「One Night Carnival」や「結婚闘魂行進曲『マブダチ』」、そして前作の「喧嘩上等」……。世間の皆さんが求める我々の楽曲って、宴会ソング的な部分なんだなと思っていて、それを意識して今回も曲を集めていたんですけど、この楽曲はホントにストレートで、別にそんなハデな楽曲でもないなあって。でも、この歌詞を乗せてグッと一気にハマッたなっていう感じがしたんです。果たして氣志團がこういうことをやるのを世の中の人は求めてるかどうか分からないんですけど、自分たちがやってこなかった場所(楽曲)なので、結成18年、デビュー14年目でやっと一つトンネルを抜けたんじゃないかなっていう自負みたいなものが生まれましたね。
−−なるほど。カップリング曲「ジゴロ13」の歌詞については?
楽曲としてはスパイものというか、ハードボイルドみたいなものがハマるんじゃないかなと思っていた中で、「ジゴロ13」という言葉につながっていったんですけど、「幸せにしかしねーから」と同じラブソングで、ワールドとしては一応つながっているんです。ジゴロが、最終的にジゴロを卒業するところまでが歌われているわけですけど、(歌詞で)「他の女も見ねー」という「幸せにしかしねーから」につながっていくという。表現方法は真逆なんだけど、シリーズもののラブソングになったら面白いねっていう感じです。
−−それでは、氣志團のプロデューサー&プランナーとしてのお話をお聞きしたいのですが、そもそも氣志團が結成した時のコンセプトは?
まさに世紀末の1997年に結成して、“リーゼント”“学ラン”“昭和の心意気”、この三つだけは21世紀に持っていこう、というのが氣志團のコンセプトでした。当時はリーゼントヘアってもう古くさくて、ギャグやコントみたいなところにあったし、学ランにしても、普通の学生服のほとんどがブレザーに移行してる時代で。でも僕らにはファッション的にすごく衝撃的で、いまだに心の底から本気でカッコいいものだと思ってるんです。ただ、今どきはやるわけないんですよね。髪の毛のセットに1時間かけるとか。だいたい時代がシンメトリー(左右対称)を求めてないですからね。髪の毛はみんなアシンメトリー(左右非対称)ですし。でも僕はあのシンメトリー感が好きなんですよね。
−−そんなバンドの根本にあるものは?
こうやって光の当たる場所でやること自体が不自然なバンドだなあと思っていて、基本的には、なんでもない人間たちのロックンロールというか。ホントは夢のファンタジーの世界だから、本来は選ばれた人しかステージに上がっちゃいけないと思ってるタイプで、でも自分たちも音楽が好きでやってきたからには、そこを全うしなきゃいけない。そのために必要だったのが、僕らも何者かにならなきゃいけないっていう中で、僕たちの体の中にあるものって何だろうと思ったら、もともと好きでやっていたリーゼントや学ランだったと。
−−プロデュースといえば、テレビ朝日系音楽バラエティー番組「musicるTV」の「もしもプロデュース」では「w−inds.」に女装、20歳になった家入レオさんには先輩アーティストとの飲み会など、興味深い“妄想プロデュース”をゲストに提案していますね。
僕はアンダーグラウンドでやるようなことをオーバーグラウンドでやるっていうことに楽しみを覚えるタイプなので、絶対やってくれないよねっていう逆転の発想で考えていったりするんです。若い人には、(周りのスタッフに)言われたことだけが世界のすべてというのも分かるけど、「踊らされんなよ」っていうメッセージを底辺に敷いて作ってるというのが本音ですね。目の前のことを一生懸命やるのも大事だけど、視野を広げて、「これはないです」っていう発想を持たずに生きていく人が、世の中をサバイブしていく人なんじゃないかなって。
−−先輩アーティストの中で“妄想プロデュース”したい方はいますか?
おこがましいですけど、例えばアッコ(和田アキ子)さんとか、吉川(晃司)さん、(藤井)フミヤさんとか。皆さん、プロデューサーでもあるので必要ないんですけど、そういう自己プロデュースが完璧な方にやってみたいっていうのはありますね。
<氣志團のプロフィル>
1997年に結成。現メンバーは、綾小路翔さん(ボーカル)、早乙女光さん(ダンス)、西園寺瞳さん(ギター)、星グランマニエさん(ギター)、白鳥松竹梅さん(ベース)、白鳥雪之丞さん(ドラム)。01年にビデオ「氣志團現象(1)~さよならの果実たち~」でメジャーデビュー。翌年にメジャー第1弾シングル「One Night Carnival」をリリース。綾小路さんが初めてハマッたポップカルチャーは、小学6年生の頃に読んでいたという雑誌「宝島」(宝島社)。「サブカルチャーというか、音楽もファッションもアンダーグラウンドなものが載っていて、そこに載ってるアーティストを片っぱしから聴いたり、そこに広告を載せている通信販売を利用したり、本も映画も、そこに載ってるものがすべてで、東京のすべてがここにあると地方出身者としては思ってました。それが少年時代の目覚めであり、トラウマであり、今もまだ引っぱり続けてるところですね」と話した。
(インタビュー・文:水白京)
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