注目映画紹介:「唐山大地震」中国河北省の大地震 被災後32年間の叙事詩 親の愛に涙と共感

「唐山大地震」のワンシーン (C)松竹
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「唐山大地震」のワンシーン (C)松竹

 1976年に中国河北省で死者24万人を出した大地震を背景に、別れ別れになった家族の32年間を見つめた「唐山大地震」(フォン・シャオガン監督)が14日から公開される。被災後を生き抜く人の日々に迫った作品だ。2011年に日本で公開予定だったが、東日本大震災の影響を受けて4年も延期されていた。なお、実際の唐山大地震の被災者や遺族がエキストラとして多数参加しているという。

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 1976年7月28日の夜。唐山市をマグニチュード7.8の地震が襲った。仲良しの双子の姉ドン(チャン・ツィフォンさん)と弟ダー(チャン・ジアージュンさん)は、住宅の中に取り残された。父ファン・ダーチアン(チャン・グォチアンさん)と母リー・ユェンニー(シュイ・ファンさん)が駆けつけたときには住宅は倒壊し、助けに戻った父親は命を失う。翌朝、子どもたちが瓦礫(がれき)の下から見つかった。が、同時に2人は助けられないと告げられたユェンニー。泣き崩れながら息子のダーを選んだ。数年後、亡くなった夫と娘のことを思い続けながら、ユェンニーはダーとともに唐山市にとどまって暮らしていた。一方、奇跡的に救助された娘は、軍人夫婦に引きとられて、愛情を注がれながら成長していた……という展開。

 一つの家族の震災後の人生の話だ。しかも32年という長きにわたる一大叙事詩である。時代の移り変わりを背景に、母と弟、そして離れて暮らす姉の人生がつづられていく。母親は見捨てた娘に対しての罪悪感が消えない。娘は震災の10年後も母に見捨てられた悪夢にうなされている。一瞬のうちに判断を迫られる過酷な選択と一瞬で奪われる人生を体験した人間の傷は深く、容易には癒やされない。そのリアルをしっかりと描き込みながらも、映画のトーンは暗過ぎることはない。得意の裁縫で細々と身を立てるまでになる母親や、自分の道を見つけて進んでいく娘の姿があり、人が少しずつ前進する力を感じて、見る方が励まされる。また、母親ユェンニーに限らず、実子ではない娘を育てた養父母の“親の愛”が涙と共感を呼ぶ。正直、地震のシーンを見るのは、CGと分かっていてもつらい。しかし、日本で起きた大震災も、その記憶が薄れていくことはもっとつらいことだ。被災者のその後は何年も何年も続いていくことを忘れてはならない。廃虚をさまよう母の心が解ける瞬間に、苦しみの末の希望がともっている。東劇(東京都中央区)ほかで14日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。先日、さかりのついた猫の鳴き声で早朝に目覚め、春を感じました。

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