ソーシャルゲーム:増えるアニメ化 台頭の理由は?

アニメ「艦隊これくしょん−艦これ−」のビジュアル(C)2014 「艦これ」連合艦隊司令部
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アニメ「艦隊これくしょん−艦これ−」のビジュアル(C)2014 「艦これ」連合艦隊司令部

 ソーシャルゲーム原作のアニメ化が増えつつある。2012年の「戦国コレクション」をきっかけに、「探検ドリランド」や「絶対防衛レヴィアタン」、昨年末の「神撃のバハムート」と「ガールフレンド(仮)」が続き、今年に入って「艦隊これくしょん」が登場した。なぜソーシャルゲーム原作のアニメが台頭したのか。背景について探った。

ウナギノボリ

 ◇歓迎される「自由度の高さ」

 ソーシャルゲームの定義は、あいまいな点もあるが、PCのブラウザーやスマートフォン上で遊ばれ、オンライン上でのサーバーを介した「人とのつながり(ソーシャル性)」を要素とし、基本利用料が無料で広いユーザーに遊ばせ、特定ユーザーへのアイテム課金によりビジネスが成立するゲームを指す。そのため、アプリをダウンロードした携帯端末内で基本的に処理が完結するネイティブアプリと区別する考えもあるが、多くの人々は両者をまとめて「ソーシャルゲーム」とすることが多い。今回もそれに倣って話を進めたい。

 ソーシャルゲームの特徴は、原則として決まったストーリーがないことだ。「より強いキャラクター(カード)を入手していく」という課金と強く結びついたビジネスの性質上、“主人公”は不在となるためだ。つまり、アニメのシナリオは「おまかせ」になるのだが、この「自由度の高さ」はアニメの制作側からすると歓迎すべき点で、アニメのスタッフのやる気も高くなる利点がある。

 ◇リッチ化がアニメ後押し

 ともあれ、ソーシャルゲームのアニメ化はここ2~3年で急に盛んとなった。ソーシャルゲームの初期においては、大ヒット作の中でもわずかに「怪盗ロワイヤル」が2011年にテレビドラマ化されたぐらいだった。なぜ広告よりも割高な「テレビ」のコンテンツ枠の活用が活発になったのだろうか。

 その背景には、ソーシャルゲームが転換期を迎え、リッチ化、長寿化した事情がある。まずソーシャルゲームの開発費は、初期とは比べ物にならないほど跳ね上がった。2000年代後半には、ソーシャルゲームは1本あたり1000万円が相場とされた。基本のゲーム部分は数日で完成し、サービスを開始したら、運用しながらバージョンアップを繰り返しコンテンツを強化する。利用者の反応が思わしくなければ、次の新作を投入する……という形で、多くの冒険作を出せる強みがあった。これは、億単位、1年以上の開発期間が必要とされるため一発必中が要求された据え置き型ゲーム専用機のビジネスモデルと比べて、極めて安価で、コストパフォーマンス的な利点があった。

 ◇テレビアニメとの相性良好

 だが2015年の現在、ソーシャルゲームは1本あたり1億円を超えるものも珍しくなくなり、大手のゲームであれば5億円に達するものもあるという。端末も液晶の小さなガラケーから大画面のスマートフォンに移行した。表現力の豊かなスマートフォンのゲームでは、より豪華なCGや音楽に力を注ぐなど「リッチ化」が競われる。さらに従来のテレビゲームのように「作れば終わり」ではなく、定期的なイベントや新要素の追加といったランニングコストものしかかる。より多くのユーザーに気軽に遊ばせて、その中にいる一部のヘビーユーザーをなるべく課金に誘う必要があるわけだ。

 そのソーシャルゲームのビジネスモデルに、極めて合致していたのが、テレビアニメだった。元々、テレビアニメは無料で視聴させて知名度を高め、人気になるとファンがブルーレイ・ディスクを購入する……というビジネスモデル。ソーシャルゲームと似ている点も多い。そうした中で、ソーシャルゲームのテレビアニメ化は相性が良く、相対的に“安上がり”となったのだ。

 またリッチ化したソーシャルゲームのサービスは、コストを回収する時間もかかるから、サービスの長寿化は必須となる。アニメ制作は、企画や設定、絵コンテなどのプリプロダクション(準備作業)だけで半年以上かかるのも少なくなく、立ち上げから放映されるまでに1~2年は見込まれる。その期間の長さと、ソーシャルゲームの時間感覚がかみ合ってきた。「神撃のバハムート」もアニメが放映された昨年の10月時点で、原作ゲームの開始から約3年。「アプリのリリースがスタート」のソーシャルは、基本的に「ソフトの発売時がゴール」の家庭用ゲームよりも寿命が長くなりやすく、それがさらにアニメ化を後押ししているといえそうだ。

 ◇世界展開も視野に

 「アニメ化」の意味は一つではなく、ソーシャルゲームとアニメ化の関わりもさまざまだ。「戦国コレクション」や「ガールフレンド(仮)」は、美少女カードゲームの原作と、深夜の男性向け美少女アニメ枠では、客層が合致している。逆に「探検ドリランド」は課金を前提とした高年齢向け原作から、小学校低学年の子供へとすそ野を広げる作りにしていた。

 現在、ソーシャルゲーム原作アニメの注目作は「神撃のバハムート」と「艦隊これくしょん」の二つだろう。前者は劇場アニメの作画クオリティーを追究、潤沢な予算を投入して業界関係者を驚かせたが、これは原作ゲームが海外でも好調なことも織り込んでいるのだろう。ゲームとアニメ、どちらも「世界的コンテンツ」に育てる意図がうかがえる。

 「艦隊これくしょん」は、「ストライクウィッチーズ」や「ガールズ&パンツァー」などの兵器×美少女アニメの文脈に位置付けられる。実在の軍艦を擬人化した艦娘たちの活躍を描くというややデリケートなテーマを扱っているが、アニメ化はゲームユーザー以外の注目も集め、それを受けて原作のブラウザーゲームも人気に拍車がかかっている。本作の“舵取り”は、ソーシャルゲームとアニメの幸せな今後を占う“羅針盤”となるのかもしれない。(多根清史/アニメ批評家)

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