岩明均さんの名作SFマンガを実写化した2部作の後編「寄生獣 完結編」(山崎貴監督)が25日に公開される。「寄生獣」は謎の寄生生物・パラサイトが右手に寄生した高校生・泉新一と、他のパラサイトとの戦いを描いており、2014年11月に公開された前作の映画では新一が母に寄生したパラサイトを倒すところまでが描かれた。後編で完結編となる今作では、組織化したパラサイト達と人間との市役所での攻防や人間の子を産んだパラサイト・田宮良子の行く末、最強のパラサイト・後藤と新一の壮絶な戦いなど原作のエッセンスを盛り込み見どころ満載だ。そんな激しいアクションの一方で、新一と里美の高校生同士の恋愛にも重点が置かれ、ラブストーリーとしても楽しめる。
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前作と同じく主人公・新一役を染谷将太さん、新一の同級生でヒロインの村野里美役を橋本愛さんが演じ、新一の右手に寄生したパラサイト「ミギー」の声を俳優の阿部サダヲさんが担当している。メガホンをとったのは「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)や「永遠の0」(13年)、「STAND BY MEドラえもん」(14年)を手がけたVFXの名手、山崎監督だ。
右手に寄生生物ミギーを宿す高校生・泉新一は、要注意人物として人間からもパラサイトからもマークされていた。新一の住む東福山市は、広川市長(北村一輝さん)を中心に組織化されたパラサイト達が、一大ネットワークを構築し、一方、人間側も、寄生生物殲滅(せんめつ)を目的とした対パラサイト特殊部隊を結成。アジトと化した東福山市庁舎で人間側が奇襲を仕掛け、激しい攻防が繰り広げられる。一方、人間の子を産み、人間との共存を模索するパラサイト田宮良子(深津絵里さん)は、新一とミギーの存在に可能性を見いだすが、新一は母親を殺された事件をきっかけにパラサイトへの憎悪を募らせる。そんな新一の前に、最強パラサイト・後藤(浅野忠信さん)が現れ、後藤と新一の最後の戦いが始まる……というストーリー。
「寄生獣」は岩明さんが1990~95年に「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載した人気マンガで、コミックス10巻分の原作を今回は2部作で実写映画化。実写化に際しては、名作といわれる原作をどうアレンジするかに注目が集まっていた。“愛”の側面で見ると前作では母子の愛に昇華し、完結編では「人間愛」という大きな愛を描きつつ、最後に一組の男女の愛に集約させている。恋愛面のカギを握る里美を演じる橋本さんは、最大の見どころとなるラブシーンでは、リアルな演技で“女優魂”を見せている。また、もう一方の見せ場である最後の戦いの場は、原作のゴミが不法投棄された場所から放射性廃棄物処理場の炎が燃えさかる焼却炉に変更されている。放射能が一つのキーワードになっているところが今日的であり、燃えさかる炎は山崎監督いわく、「キリスト教の煉獄(れんごく・罪の償いが終っていない死者の霊魂が清めをする期間)」を表現し、新一が守らなくてはならない一つの愛に目覚める瞬間を表現した。
ともあれ得意の最新VFXを駆使した映像で驚かせながらも、そこのみに傾注することなく、きっちりと愛の物語を描いた山崎監督に拍手を送りたい。主題歌はロックバンド「BUMP OF CHICKEN」の「コロニー」。「寄生獣 完結編」は25日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(細田尚子/毎日新聞デジタル)
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