注目映画紹介:「奇跡のひと  マリーとマルグリット」高次の人間の魂が受け継がれていく姿に感涙

映画「奇跡のひと マリーとマルグリット」のワンシーン (C)2014-Escazal Films/France 3 Cinema-Rhone-Alpes Cinema
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映画「奇跡のひと マリーとマルグリット」のワンシーン (C)2014-Escazal Films/France 3 Cinema-Rhone-Alpes Cinema

 生まれつき視聴覚障害を持つ少女と教育したシスターの実話を基にした「奇跡のひと マリーとマルグリット」(ジャン・ピエール・アメリス監督)が、6日から公開される。魂が激しくぶつかり合い、響き合う教育の姿を描いたヒューマン作だ。アメリス監督に見いだされ、自身も聴覚に障害を持つアリアーナ・リボアールさんがマリーを熱演している。

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 19世紀末のフランス西部。聴覚障害の少女たちの学校を併設する修道院。ある日、生まれつき目も耳も不自由な少女マリー(リボアールさん)がやって来る。園庭を逃げ回った末、木によじ登ったマリーを、学院長は「手に負えない」とするが、マリーから魂の強さを感じたシスターのマルグリット(イザベル・カレさん)は、教育係を申し出る。野生児マリーに振り回され、同僚にも冷たい目を向けられるマルグリットだったが、マリーが持参したナイフを手掛かりに必死に言葉を覚えさせようとする。次第に深い絆で結ばれていく2人。しかし、別れのときが迫っていた……という展開。

 外界と接したことがなかった少女の、命の強さだけが激しく発散される冒頭に引きつけられる。題材からしてヘレン・ケラーとサリバン先生を彷彿(ほうふつ)とさせるが、今作のマリーとマルグリットは相互に頼り合い、教え合っている点が異なる。シスターのマルグリットは命を削りながら教育にあたるのだが、それは半分、自分のためでもある。マルグリットにとってマリーは自分が生かされる理由なのだ。一方、自分の思いを乱反射させる表現手段しか持たなかったマリーは、マルグリットによって言葉を教えられ、人間らしく生きる喜びを与えられる。2人が激しくぶつかり合う前半の力強い芝居。そして、絆が深くなった後の後半への展開が素晴らしい。四季の移り変わりも美しく、マルグリットとマリーの限りある時間をじっくりと描き込む。そこには、言葉を覚える以上にもっと大切な、高次の人間の魂が受け継がれていく姿があり、強く心が揺さぶられる。教育に携わる仕事の方々に鑑賞を強くお勧めしたい。マルグリットを「ムースの隠遁」(2009年)などのフランスのベテラン女優、カレさんが演じている。シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで6日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今年はもう暑いので、ヒーヒー言っています。

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