小野憲史のゲーム時評:アジアで活況のインディーズゲーム

「キル・ザ・プランバー」のゲーム画面
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「キル・ザ・プランバー」のゲーム画面

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、アジアで興隆するインディーズゲームの最前線について語ります。

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 シンガポールで5月19日~21日にゲーム展示会「カジュアルコネクトアジア」(主催:カジュアルゲーム協会)が開催された。PCのブラウザーゲームやモバイルゲームを対象に2006年からスタートした商談イベントで、私も2年前にも参加したが、今年はスマホをメインに活躍するインディーズ(独立系)ゲームの勢力躍進が目についた。

 イベントは業界関係者による国際会議と、地元のインディーズゲーム開発者やツール&ミドルウェアベンダーがブースを構えるエキスポゾーンに分かれていた。2年前の国際会議では英国のブラウザーゲーム大手「プレイフィッシュ」が事実上の基調講演をつとめたが、今年はオーストラリアのクリエーターが開発したスマホゲーム「クロッシーロード」の共同開発者であるマット・ホールさんが講演し、新旧交代を印象づけた。

 エキスポゾーンでもアジアのインディーズゲームが元気だった。出展社はシンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、台湾、インド、オーストラリアなど多岐にわたり、中にはポーランドからの出展も見られた。ゲームもクオリティーの高さは当然として、開発規模が日本と比べて圧倒的に小さく、当初から海外展開を意識して開発されているなどの違いが感じられた。

 中でも個人的に引きつけられたのが、フィリピンのバリ・シルベストルさんが制作したアクションゲーム「キル・ザ・プランバー(=配管工を倒せ)」だ。「スーパーマリオブラザーズ」風の画面だが、プレーヤーが操作するのは敵キャラクターの方で、ステージ構成と相手の動きを読んで、配管工に体当たりするのが目的。逆転の発想もさることながら、ゲームの完成度が高く、バリエーションも豊富で、思わず熱中してしまった。

 シルベストルさんは子どものころからのゲーム好きで、特にマリオシリーズの大ファンだという。本作の開発にも、こうした先人たちに敬意を捧げるつもりで取り組んだ。アメリカ在住のロシア人アーティストとインターネットで連絡を取りながら、2人で制作中だ。現在は最終テスト段階で、7月にアイフォーンとアンドロイド向けにリリースが予定されている。

 日本のゲーム会社も現在アジア展開を強めているが、スピード感や思い切った展開という点で、地元のインディーズに後塵(こうじん)を拝している点は否めない。一方でユーザーからすれば、ゲームがおもしろければ出自は関係なく、スマホ一台で世界中のゲームが楽しめる。日本企業も新興国のインディーズに「世代交代」とされないように、さらなる努力が求められそうだ。

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