超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、中国のゲーム展示会「チャイナジョイ」と、中国のゲーム市場を振り返ります。
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中国最大級のテレビゲーム見本市チャイナジョイが上海で7月30日から8月2日まで開催された。日本や欧米と違い、中国市場はPCオンラインゲームが中心だが、今年はモバイルゲームの躍進や、家庭用ゲームの積極的な取り組みなど新しい動きがみられた。
チャイナジョイは中国政府の肝いりで2002年にスタートし、今年で13回目を迎える。一般ユーザー向けのB2Cエリア、商談中心のB2Bエリア、業界人向けの開発者会議がバランス良く開催され、2014年は4日間で25万人の集客を数えた。これは東京ゲームショウと同規模で、アジアの重要なイベントの一つに成長している。
今年、まず目に付いたのがモバイルゲームの成長だ。半数以上のブースでモバイルの出展があり、中でもMOVA(マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ)とよばれる、ネットでグループ対戦が楽しめるジャンルが人気を集めた。B2Bエリアでは開発中のゲームを出展し、販売会社を募るなども熱心に行われていた。逆に日本で人気の「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」のようなゲームはほとんど見られなかった。
関係者によると2005年には市場の90%をPCオンラインゲームが占めていたが、2014年は50%に減少し、モバイルゲームと、PCのブラウザーゲームが20%強ずつと急成長しているという。もっとも「今年に入って企画の質が問われるようになった。すでに淘汰(とうた)の時期に入ってきている」(上海の開発会社談)と指摘している通り、急速に市場が成熟しつつある。
家庭用ゲームの出展も注目ポイントだ。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)とマイクロソフトが昨年に続きプレイステーション4とXboxOneを出展。SCEはVR(仮想現実)のヘッドマウントディスプレー「プロジェクト・モーフィアス」を中国で初出展し、地元ニュースにも取り上げられるなど、注目を集めていた。
家庭用ゲームについては、直前に中国全土で製造・販売が許可された。しかしゲームの販売にはタイトルごとに政府の審査が必要で、市場拡大の阻害要因になっている。一方で両社とも中国のディベロッパー取り込みに熱心で、中国オリジナルの家庭用ゲームも多くみられた。クオリティー面でも日米欧に匹敵する勢いで、徐々に状況が変わりつつあるようだ。
中国ゲーム市場は成長を続けており、2015年には米国を抜いて世界最大規模に達するという見方もある。スクウェア・エニックスはPS4版「ファイナルファンタジー15 新生エオルゼア」の中国展開を盛大ネットワーク・SCEと3社で実施すると発表した。しかし中国は、政治・経済でリスクがあると見る人も多く、さまざまな業界で参入と撤退が繰り返されているのも事実だ。
会期中に中国talkwebとの資本提携を発表したGAEの大友貴司社長は「同床異夢になりがちな企業提携よりも、資本提携の方が中国展開には有利だと判断した。これまでも中国ビジネスに波はあったが、これだけ拡大した市場が一気にゼロになるとは考えにくい」と分析する。常に新鮮な体験を求め続ける13億人の市場に対し、おのおのの会社ごとに最適な戦略が求められそうだ。
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