1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督による「ジュラシック・パーク」。その後日談となる「ジュラシック・ワールド」(コリン・トレボロウ監督)が、5日に公開された。遺伝子操作によって誕生した新種の大型恐竜インドミナス・レックスがテーマパーク内の隔離施設から逃亡、パーク内の人々を恐怖に陥れるパニック映画だ。今作のヒロインで、パークの運営責任者クレアを演じたブライス・ダラス・ハワードさんに、先月来日した際に話を聞いた。
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ハワードさんが演じるクレアは、出世に燃える野心家として描かれている。パークを訪れた2人のおいたち(ニック・ロビンソンさん、タイ・シンプキンスさん)の相手をする時間すら惜しい彼女は、2人の面倒をアシスタントに任せてしまう。ところが、インドミナス・レックスが逃亡したことで、パーク内のどこかにいるおいたちを探して、タイトスカートとハイヒールで駆け回ることになる。
最初は「ハイヒールを脱いで裸足になっちゃう」ことも考えたというハワードさん。しかしクレアはキャリアウーマン。いつもきちんとした服装でやってきた。「だったら、マラソンだってハイヒールで走りかねない」と思い直し、スタッフの中にいた総合格闘技の元チャンピオンに足首を痛めないエクササイズを教えてもらい、ハイヒールで押し通すことにしたという。
クレアと行動を共にするのが、クリス・プラットさん演じる恐竜行動学の専門家オーウェンだ。オーウェンは元軍人だけあって勇敢で頼りになる。演じるプラットさんにも重なる部分はあったようで、ハワードさんはプラットさんを「勇敢だし、心が温かいし知恵もある。素晴らしい人」と絶賛。「もし地球が滅亡しちゃいそうになったら、クリスの家に行けば絶対なんとかしてくれそう」というほどの信頼を寄せる。
信頼を寄せたのは、トレボロウ監督に対しても同じで「監督としてものすごく信頼していたから、(演出面などの)ズレはまったくなかった」と振り返る。ハワードさん自身、これまで何本かの短編を監督しているが、今回の演出に関してトレボロウ監督に提案したことはなかったという。そこには多分に自身の生い立ちが影響している。ハワードさんの父が、「アポロ13」(1995年)や「ビューティフル・マインド」(01年)などの監督で知られるロン・ハワードさんであることは周知の事実だ。ハワードさんは幼い頃から父についてよく撮影現場を訪れていたという。
「父のそばにずっといたことがあったので、監督の仕事の手順がどういうもので、どういう考え方をするかを常に私は学んでいたの」。そのため「普通の俳優は内側から外に、つまり、どういうふうに感じるかから始まってそれを表現していくものだけど、私の場合は外側から内側に、つまり、監督が何を考えてやろうとしているのか、監督からどのような演技を期待されているのかをまず頭で考えて理解し、その上でそれを表現しようとする」。だから「自分が出ているシーンですらも、あたかも第三者が見ているように見ている」し、撮影現場でも「監督が何を求めているかが分かりやすい」ことから、モニターも好んで見るという。もっとも、そういった方法が俳優として典型的なやり方でないことは、夫で俳優のセス・ガベルさんに指摘されて知ったという。
今作について、製作総指揮を務めたスピルバーグさんからの感想は聞いていないそうだが、「彼(スピルバーグ)は本当にコリン(トレボロウ監督)を信頼していて、あの信頼は、はたから見ていても本当に美しいと感じるぐらい。素晴らしい師匠よ」とスピルバーグさんをたたえる。スピルバーグさんはハワードさんいわく、「もし自分がセットに現れたら、絶対、全員が自分の存在を気にすることが分かっている」から、撮影中セットを訪れることは一度もなかったという。そういった配慮にも「とても頭のいい方。そして非常に謙虚な方」と言葉を重ねた。
ハワードさんは「ヴィレッジ」(04年)で本格的に映画デビューしてから、「マンダレイ」(05年)、「ヘルプ~心がつなぐストーリー」(11年)と出演作を重ねるたびに存在感を強めてきた。その一方で、幼い頃、端役で出演した以外、父の監督作からは距離をとってきた。そのため自ら道を切り開いてきたというイメージがある。今作で演じたクレアも、自分の力で今の地位まで上ってきた。
そこで、道を切り開こうと模索する女性たちへの助言を求めると、大役を任せられたとでも言いたげに「ふうー」と大きく息を吐き、一呼吸おいてから、著名なデザイナー、ダイアン・フォン・ファステンバーグさんの言葉を思い出しながら、「私がしばしば考え、助けられるのは、すべてのものは手に入るかもしれないけれど、それらが一緒に来ることはないということ。すべてを自分のものにしようとするのではなく、毎日の生活の中で、自分がその日にできることを追求していくことが大事だと思う」と答えた。
ただ、そのためには女性の場合、「多大な集中力を求められる」こと、「忍耐強くなければできない」こと、また、「女性が文化的な自由を手に入れ、自分たちが欲しいと願っているものを探求できるようになったのは最近のこと」と指摘し、その上で「一つ言えることがあるとしたら、私たちは自分に厳し過ぎる。非常に高い望みを掲げ過ぎて、それらをすべて完璧にやり遂げなければいけないという枷(かせ)を自分に課してしまっていることがあると思う。でも、そういうやり方にはやっぱり無理があると思う」と言い切る。
そして、「私の息子は、たとえ失敗してもまったく気にしない。うまくいかないことだってあるさと受け入れる。自分に厳しくない分、自信を持つことができる。対して娘は、自分にとても厳しい。完璧にできなくていいのよといつも言ってあげないとダメになっちゃう」と8歳の息子と3歳の娘の2児の母の顔を見せながら、「だから私たちもそうやって(失敗を受け入れながら)前に向かって進まなきゃいけないと思う」とアドバイスした。
このハワードさんの考えにのっとれば、今作の前半のクレアはよい手本とは言い難いが、ハワードさんは「自分では認めたくないけれど(笑い)、似ているところの方が多いと思う。クレアは計画性があってきちんとした人よね。そこは私と似ているかな」と共通点を挙げ、その上で「でも、映画の終盤の方のクレアと似ていることを願っているわ。最終的に彼女は、失いかけていた人間性を取り戻して、もうちょっと温かい心になっていくから……」と笑顔を見せた。映画は5日から全国で公開中。
<プロフィル>
1981年生まれ、米ロサンゼルス出身。ニューヨーク大学芸術学部卒業後、舞台女優として活躍。2004年、「ヴィレッジ」で映画デビュー。その後、「マンダレイ」(05年)、「ターミネーター4」(09年)、「エクリプス/トワイライト・サーガ」「ヒア アフター」(ともに10年)などに出演。12年に2人目の子を出産し、映画出演は「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」(11年)以来となる。また監督としても活躍しており、これまで数本の短編作品を製作している。
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