ミッション:インポッシブル:最新作マッカリー監督に聞く アクションは「とにかく前作を超えるものを」

「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」を手がけたクリストファー・マッカリー監督
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「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」を手がけたクリストファー・マッカリー監督

 トム・クルーズさんが極秘諜報(ちょうほう)機関「IMF」の超A級エージェント、イーサン・ハントに扮(ふん)する人気スパイアクション作のシリーズ第5弾「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」が全国で公開中だ。メガホンをとったのは「ワルキューレ」(2008年)、「アウトロー」(12年)、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(14年)でクルーズさんとタッグを組んだクリストファー・マッカリー監督。脚本もマッカリー監督が手掛けている。このほど作品のPRのために来日したマッカリー監督に話を聞いた。

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 ◇トムの心配そっちのけ? 軍用機シーン

 映画は冒頭のクルーズさんが上空約1500メートル、時速400キロで飛行する軍用機に命懸けで張りつくシーンが話題になっているが、その場面は2日にわたって撮影された。レンズの交換はもとより機材のわずかな調整だけでもテストが必要で、「そのテストに時間がかかった」からだ。加えて、撮影場所の英国の冬は、「朝の10時から午後4時くらいまでしか光が射さない」。そのためマッカリー監督は「トムのことより、このシークエンスを果たして本当に撮影し終えられるのか、そこが心配だった。トムのことは考えられなかったよ(笑い)」と冗談めかしつつ当時の心境を打ち明ける。

 そう言いながらも、撮影監督のロバート・エルスウィットさんら10~15人のスタッフとともに乗り込んだ機内では、モニターを見ながら、「とにかくトムに鳥が当たったら大変だとそればかり考えていた」という。そして「彼は体をものすごく鍛えているし、食事についてもよく考えている。僕とは大違いさ(笑い)」と六つ年上のクルーズさんの身体能力を改めて賞賛した。

 ◇デ・パルマをまねしたわけじゃない

 今回の映画では、ブライアン・デ・パルマ監督によるシリーズ1作目「ミッション:インポッシブル」(1996年)のCIA本部への潜入シーン、ジョン・ウー監督による「M:I-2」(00年)のバイクチェイス、シリーズ4作目「ゴースト・プロトコル」(11年)のブルジュ・ハリファを登るシーンを連想させる場面がある。ファンにはニヤリとさせられる仕掛けだが、マッカリー監督自身は「シリーズに共通性を持たせるというより、あってもいい」くらいの思いだったようだ。

 ただ、アクションに関しては「とにかく前作を超えるものをといつも考えていた」といい、「今回も前作のブルジュ・ハリファより高いところを目指した」と語る。展開上、「どこかに侵入することも必要だった」ことから、ハントが水中にある施設に潜り込むという場面も作った。そのシークエンスでは、音楽はもとより音がない。それについて、「デ・パルマ監督のその(CIA潜入)シーンでも音楽は使っていなかった。だからといってまねをしたわけではなく、音楽があると水中にいる気がしない。音楽が入った瞬間、オーケストラと一緒になって水中の人を眺めている気分になってしまうからね」と説明した。

 ◇トムと一緒にゴーサイン

 クルーズさんとは、ノンクレジットながら脚本に関わった「ゴースト・プロトコル」を含め、今作で5度目のコラボレーションとなる。マッカリー監督いわく、クルーズさんとは「以心伝心」の間柄で、ストーリーテリングについて、「トムと僕の波長はぴったり合っている」のだという。それを端的に物語るエピソードがある。敵か味方か分からない謎の女性イルサ・ファウストがハントに向かって「私を捜せるわね」というせりふを2度目に言う場面の撮影でのことだ。イルサを演じるのは、スウェーデン出身の女優レベッカ・ファーガソンさんだ。

 「実はあの2度目のせりふは撮影の直前に思いついたもので、最初は使う予定はまったくなかったんだ」と話し始めたマッカリー監督。「あのせりふを言うとき、イルサはハントを見るべきか、もしくは見ないで言って、謎めいていたほうがいいのかとトムとは結構議論した」と振り返る。そして、「あそこは車で去る設定だが、いったん去ると、車が戻って来るのに10分間くらいかかる。だけど時間が本当になくなっていたから、レベッカが車の中で何通りもの言い方を試す間、トムと僕は目配せしながら、『今のでいいかな』とやり合って、2人とも『よし!』となったとき、彼女に車を出すようゴーサインを出したんだ。すごくロマンチックな、いい場面に見えるけど、現場はかなり焦っていたんだよ」と苦笑交じりに打ち明ける。

 ◇スコセッシ監督の影響も

 ところで、このインタビューの前日に開かれた記者会見で、クルーズさんが軍用機の場面でスーツ姿だったのはアルフレッド・ヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」(59年)へのオマージュだったと話していたが、ほかにも今作にはヒッチコック監督の作品を想起させる場面がある。例えばそれは、ウィーンでのオペラのシーンだ。ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」(56年)を思い起こさせるが…。その指摘に「『知りすぎていた男』は、実はあのシークエンスを撮ったあとに見た」と明かすマッカリー監督。実際にインスピレーションを受けたのは、(マーティン・)スコセッシ監督が撮った「The Key to Reserva」(07年)というシャンパンのCMだという。

 「それは10分間の短編で、ヒッチコックが一度も制作しなかった3ページの草案を、ヒッチコックだったらこう撮っただろうという想定で映画を撮るというコンセプトなんだ。オーケストラのコンサート会場が舞台で、そこから今回のオペラのシークエンスを思いついた。その短編をトムに見せて、こういうトーン、こういう構成でやりたいと説明した。短編は、ヒッチコックの『めまい』(58年)や『鳥』(63年)、『北北西に進路を取れ』、それこそ『知りすぎていた男』というものを題材にしていて、スコセッシがヒッチコックにオマージュをささげている形だから、今回のアイデアも、ある意味『知りすぎていた男』から影響を受けたといえるね」と笑顔で応じた。

 シリーズ第6弾が現在準備中で、来年夏には撮影が開始されるというニュースが流れたが、それにマッカリー監督が関わる可能性は「今のところ分からない」という。何より、「今は、明日以降のスケジュールさえ決まっていない。今後、どんな作品を作りたいかの構想もない」状態だそうで、とにかく今は大仕事をやり遂げ、世界34カ国で初登場1位という結果を残せたことに安堵(あんど)している様子だった。映画は7日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1968年、米ニュージャージー州生まれ。高校卒業後、各地を放浪。ロサンゼルスに移るまで探偵事務所などで働いた。高校の同級生のブライアン・シンガーさんから持ちかけられ、「パブリック・アクセス」(93年)の脚本を執筆。このシンガー監督の1作目の映画は、サンダンス映画祭で審査員大賞に輝いた。95年、シンガー監督と組んだ2作目「ユージュアル・サスペクツ」が米アカデミー賞の脚本賞を獲得。2000年、自身で脚本を書いた「誘拐犯」で監督デビュー。トム・クルーズさんとは、共同脚本と製作を担当した「ワルキューレ」(08年)、ノンクレジットながら脚本に携わった「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(11年)、監督第2作「アウトロー」(12年)、脚本を担当した「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(14年)に続いて今作が5度目の仕事となる。

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