2015年秋アニメ:バラエティー豊かな“乙女系”に注目

秋アニメについて語る小新井涼さん
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秋アニメについて語る小新井涼さん

 10月に入り、秋アニメがスタートした。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが、今回も“秋アニメ”の初回を全部見て、独自の視点で特徴を分析した。

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 「うたの☆プリンスさまっ♪」をはじめ、最近だと「少年ハリウッド」や「Bonjour♪恋味パティスリー」など、いわゆる“乙女系”作品のアニメ化はもはやお馴染みとなっています。

 同じ女性向けでも少女マンガ原作やボーイズラブなどとも少し違うこれらのジャンルは“ヒロインをイケメンキャラたちが取り巻く作品”、“女子が不在な中でイケメンたちがわいわいしている作品”といったイメージが強く、苦手な人や男性は見ないまま避けてしまうことも多いのではないでしょうか。

 しかしひとえに“乙女系”と言っても、その魅力はイケメンや甘いシチュエーションだけではありませんし、特に今期の秋アニメには“乙女系”の一言では語り尽くせないような特徴をもつ作品が多数そろっています。

 今回は普段よりかなり主観混じりのセレクトではありますが、そんな乙女系への先入観を覆すような個性的な作品たちを紹介させていただきます。

 “乙女系といえば甘い言葉やシチュエーション”というイメージをいい意味で裏切ってくれるのが「DIABOLIK LOVERS MORE,BLOOD」です。原作が乙女ゲームであるにも関わらず2期となる今回も甘さがほぼなく、ヒロインがイケメンたちにののしられ、おとしめられ、痛めつけられるという斬新な作品。甘さが苦手な人も楽しめるだけでなく、こんな形のときめきもあるのだという乙女系の奥深さも感じられます。

 “ミュージカルアニメ”という斬新さに一瞬乙女系作品であることを忘れてしまうのは「Dance with Devils」です。急にセリフを歌いだすというミュージカルのお約束とともにガラリと空気が変わる瞬間、舞台をみているのではないかという錯覚さえ起こしてしまいます。乙女系作品という先入観なしに“新しい形のアニメ”として新鮮な気持ちで鑑賞することができるのではないでしょうか。

 同じミュージカルをテーマにしながらも異なる魅力を持つのが「スタミュ-高校星歌劇-」です。クラシカルなミュージカルをほうふつとさせるダンデビと違い、キャラソンのようなポップな曲やダンスとともに繰り広げられるアンサンブルナンバーなどはどちらかというと“2.5次元ミュージカル”に近いように感じます。かといって完全に女性向けというわけではなく、問題児ばかり集まったチームが反発しあいながらも徐々にお互いを認め合いひとつの目標を目指す…というスポ根的な要素など、男女ともに十分楽しめる魅力も持つ作品です。

 イケメンたちと紅一点の主人公という一見王道の乙女系作品かと思いきや、ヒロインもイケメンたちも“小学生”というのが新鮮なのが「探偵チームKZ事件ノート」。乙女系を思わせるドキドキなシーンもありつつ、イケメンたちのあだ名が“数の上杉”や“シャリ(社理)の小塚”であるなど所々にみられる小学生らしさも微笑ましい作品です。原作は児童向けミステリー小説ということで、親子そろって楽しめるという点などは普段乙女系作品を見ない人だけでなく、乙女系作品が好きな人にも斬新に感じられるのではないでしょうか。

 こうしてみると、確かにイケメンがたくさん出てくるという大前提はあるものの、“乙女系”作品といってもその言葉から連想する以外の魅力もそれぞれにあるということがわかります。特に今期は上に挙げたような個性的な作品も多いということで、今まで苦手意識を持っていた人にとっては先入観を捨てて新しい作品を開拓するチャンスでもあるのかもしれません。試しに見てみたら意外とはまってしまう作品があるかもしれない……。そんなこの秋クールを乙女系というジャンルへの新しい魅力が潜む「ゴールドラッシュ」と勝手に称したいと思います。

 もちろんそれ以外にも魅力的な作品はたくさんありますが、最後に独断と偏見によるベスト3だけ紹介させてください。

1位「ワンパンマン」

 アニメであることを120%生かしたアクションシーンの迫力には思わず息をするのを忘れて見惚れてしまいます。サイタマの無気力な態度と敵やジェノスとの温度差もおかしく、そんなギャグシーンと本当にワンパンチで終わる戦闘との緩急もまた絶妙です。

2位「ルパン三世」

 お馴染みのキャラクターは変わらず懐かしいのに、今見ても全く古臭さを感じないモダンなビジュアルがたまらなく格好いい新シリーズ。アイキャッチとOPの演出は特に興奮します。

3位「ヤング ブラック・ジャック」

 正しさと信念の間で苦悩する間青年の姿にみているこちらまで憤りや葛藤を感じてしまうドラマチックな作品。手塚先生の世界観を現在風のタッチで描きながらも1968年という時代を感じられるアンビバレントな描写も魅力的です。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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